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茶道に心奪われし者

茶人 ランディー・チャネル 宗榮

茶道に心奪われし者

茶道家、ランディー・チャネル 宗榮氏は日本に移り住み30年が経ち、その大半を茶道に捧げている。来日の目的は違うものであった彼が、異国の文化である茶の心を伝え続けているのはなぜだろう。

格闘家として来日

ランディー・チャネル 宗榮

経験を積んだランディー氏のお点前は、流れるように美しい。らん布袋の2階には椅子に座って行う点前、立礼式(りゅうれいしき)が用意されている。立礼式は外国人客用に考え出されたといわれている

 着慣れた和服姿。その凛とした立ち居振る舞いは、一朝一夕にできるものではない。
 カナダ人のランディー氏が、裏千家学園茶道専門学校に通うために京都に移ったのは22年前のこと。外国人研修コースで3年間学び、卒業後も修道を重ね、家元から「宗榮」という茶名(利休居士以来、歴代家元の名にある「宗」の一字をつけた名。茶道をかなり深めた証といえるもの)を授かり、専任講師、助教授を経て教授の資格を取っている。
「茶道と出合い、こうして日本にいるのは、すべてが偶然といいますか、運命のつながりを感じています」
 元々の来日目的は武道を身につけるためだったと言う。
 幼い頃から格闘技に親しんできたランディー氏は格闘家を目指していた。ボクシング、レスリング、カンフーなどを習得していく中で、礼儀作法を身につけ、精神面を磨く武道への関心が高まり、武道の本場で本格的に学びたいと思ったことから日本に移り住んだ。
 最初の住まいは、カナダのように自然の多い長野県松本市。そこで剣道と居合道から始め、薙刀、二刀流、弓道など身につけ、高段者となり成果を挙げていく。それがなぜ、茶道を志すことになったのだろうか――。
「文武両道。この言葉を知った時、私が武を究めるには、文によって培われる精神が必要だと感じたのです。まずは、武道の先生方が書道や琴をされていたこともあり、その両方を習い始めましたが才能はゼロ。次に経験したのが茶道です」
 たまたま自宅の隣家が裏千家の茶道教室だったので、一度体験することになった。
「まさかその日が、その後の人生を大きく変える運命の日になろうとは思いもしませんでした。お茶を点てる時の姿勢や所作に、武道と似た要素があると感じ、強く感銘を受けたことを今でもはっきりと覚えています」

茶道指導者として歩む

ランディー・チャネル 宗榮

紫の釉に四季の花で彩られた交趾焼(こうちやき)の皆具。お茶を点てる時に使う基本的な茶道具を同じ作りのもので揃えたものを皆具という

 茶道に強く興味を掻き立てられ習い始めたものの、ひと月に数回の稽古では武道との差は開くばかり。文武両道を究めるためには、趣味の域を超えなければならない。その思いから、茶道を本格的に習得しようと茶道専門学校の入学を決めた。
 特殊な異文化を学ぶ日々。在学中に辛いと思ったことはないだろうか。ランディー氏は首を横に振る。
「まったくありません。精神・心得に加え、美術工芸、茶花、書道、茶会に出る懐石や和菓子といった食など、幅広い分野が合わさった総合芸術といわれる茶道の知識を、充実した学びの中で深められ、大変有意義な時間を過ごしました。それに、同期生の多くは、茶道界独特のしきたりや上下関係に苦しんでいたようですが、私は気になりませんでした。武道を通じて精神面が鍛えられていたからかもしれませんね。卒業後は、格闘界に戻るつもりでしたが、茶道への思いが、時間が経つにつれ強いものとなり、恩師たちへの恩返しの思いで茶道の先生になることを選びました」


ランディー・チャネル 宗榮らん布袋

京都府京都市中京区上瓦町64
京都三条会商店街内
☎075-801-0790
www.ranhotei.com

 

1階は、抹茶と和菓子のセットの他、抹茶のラテやカプチーノ、スイーツなどを楽しめるカフェとして営業している。中庭を眺めながらゆったり寛げる空間が広がる。茶道体験は随時受け付けているので、気軽に問い合わせてみるといい

文|竹井雅美(編集部) 撮影|バンリ

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