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新たな侘びの形を創り、一世を風靡した「織部」

戦国の時代を生きた大名茶人

茶人として有名な「古田織部」。千利休の高弟子の中でも随一とされる人物は、動乱の激しかった戦国時代を生きた武将であった。織田信長に仕え、信長の没後は豊臣秀吉に、そして徳川家康に仕えた。織部は武人と茶人を使い分けながら人生を送った。
織部の父は茶道の名人。その息子である織部が茶の湯に親しむようになったのは不思議ではない。そして千利休との出会い。利休の茶会に出向くほど奥深い侘び茶の世界に魅了されていったのである。師弟の絆を深めていく利休と織部。利休が秀吉の怒りに触れ、追放令を受けて京都を出る時、親しかった大名の多くが恐れる中、その船出を見送ったことは有名な話である。利休の没後、織部は茶道を受け継ぎ、やがて秀吉の茶頭となり、天下一の宗匠と称された。

茶室「織部庵」の新しい侘び

織部の出身地である美濃(岐阜県)に織部好みで誂えた茶室(可児市・花フェスタ記念公園)がある。茶室は数寄屋 建築設計の第一人者である中村昌生氏が設計を施し、茶室建築の一流職人を京都から呼び寄せて建てられた。そのレベルの高い仕事に地元の職人達が無償でも関 わりたいと申し出たという。建築面積は124坪。小間、広間、立礼席からなり、山を背に、人里離れた自然に溶け込むように佇んでいる。
織部好みを最も多く写しているのは小間「織部庵」。天井の突上(つきあげ)窓、床の花明(はなあかり)窓と、多窓で採光し、明るいことが大きな特徴だ。他にも床框(とこかまち)に塗りを程し、床柱になぐり目という模様のような加工、相手柱は皮つき、茶道口には竹を使うなど、織部の美が随所に見られる。利休の教えを軸に自らの色を入れて生み出した新しい形、織部好みは侘びの中にも華やかで自由な独創性があるように思う。

「花フェスタ記念公園・茶室」

住所: 岐阜県可児市瀬田1584-1
TEL:  0574-63-7373
営業時間: 9:00~17:00(入場は16:30まで)
火曜定休(休日の場合はその翌平日)
入園料: 大人800円 高校生500円 小・中学生300円
※茶室利用方法、使用料金については要問い合わせ
URL: www.hanafes.jp/hanafes/

自由・奔放・独創的な織部焼

天下一の宗匠を引き継いだ古田織部は作陶にも力を注いだ。「織部十作」と呼ばれる組織を設け、美濃各地から腕利きの陶工を選び、茶器に限らず焼きもの全般を自由奔放な発想で創らせた。形や描かれる模様に斬新な意匠を特徴とする織部焼の誕生である。さらに織部は、九州の唐津焼の窯を研究し、美濃で初めて現在の元屋敷窯跡(土岐市・織部の里)にみられる連房式登り窯を導入する。これにより、大量生産が可能となり美濃は陶器の生産地として発展していく。
利休とは違った切り口で茶道を行った織部を利休の弟子の中では異端者とする書物もある。しかし、人真似を嫌い、「新鮮であればこそ魅力的な茶事となり、客を喜ばせるもてなしができる」。それが茶人の心構えであるというのが利休の教え。織部こそ、利休の道を正しく伝えたのではないだろうか。
岐阜県はそんな織部の精神を生かした街づくりを進めている。焼きもの文化を伝える「本町オリベストリート」(多治見市)もその一つ。昔の商家が多く残り、それらを生かした陶磁器店やギャラリーが織部焼を始めとする美濃焼を楽しませてくれる。

「うつわ邸」

住所: 岐阜県多治見市小路町3-2
TEL: 0572-25-3583
営業時間: 10:00~17:30
URL: www.oribe-minoyaki.com


撮影:間宮 博(ピー・アンド・ピー)
文:竹井雅美(編集部)

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