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【ボルドーシャトー紀行】シャトー・ランシュ・バージュ

【ボルドーシャトー紀行】シャトー・ランシュ・バージュ

 メドック地方ポイヤックに広がるブドウ畑の中に「LYNCH-BAGES」と書かれた小さな可愛らしい建物がある。この建物を過ぎると、シャトー・ランシュ・バージュを中心としたバージュ・ビレッジはすぐそこだ。
 畑の土壌は主にガロンヌ川に浸食されたピレネー山脈からん砂利で構成されており、粘土質が少ないことから、日中に吸収した熱を夜間に発散できる。これはブドウの成長を緩やかにし、果実に繊細さを与えるのだという。ムートン・ロスシルドやピション・ラランドといったメドックを代表する格付け1級・2級のシャトーに場所が近く、ファーストワインのシャトー・ランシュ・バージュはメドック格付け5級ながら、1級・2級に劣らない品質で人気がある。
 現オーナーのカーズ・ファミリーは1939年にシャトーの経営を全オーナーから引き継いだ。シャトー周辺にレストランやギフトショップ、子どもたちの遊び場などを整備したり、地元の肉屋、ベーカリー、デリショップを改装したり、シャトー見学に訪れた観光客が、より楽しめるエリアをつくり上げた。「良いワインはその土地からの恵み。シャトーだけが潤っても、土地の恵みに感謝していることにならない」との考えからだ。
 シャトー見学ツアーは毎日行われており試飲もできる。シャトーのスタッフがガイドとして隅々まで案内してくれ、歴史からオリジナルの製法まで事細かな説明が受けられるため、世界中からワイン好きが集まりいつも予約でいっぱいだ。

シャトー見学の最後はテイスティングルームへ。ファーストワインとEcho de Lynch-Bages、Ormes De Pezを試すことができる

 現在シャトーの中に立ち並ぶ発酵用ステンレス製のタンクは、2013年中に古い製法に使用されていた木製のタンクに置き換えられるという。「今は1日に3度ほど、ポンプでくみ上げて液を循環させ皮などを濾過させる方式を採っていますが、自然な発酵をさせる方式に戻します。28℃に保ち、15日間ワインには触れません。発酵後、皮や種を取り除くために圧搾したワインを通常は元のタンクに戻し後(二次)発酵させます。しかし我々は圧搾したワインを別の樽で後発酵をさせ、発酵後に10%のみ元のタンクで後発酵を終えたワインに戻します。」近代的な製法や一般的な製法が必ずしも正解ではない。ワインの品質維持および向上に何が必要かを考え、時代や常識に逆行する勇気をオーナーは持っている。「もちろん、テクノロジーを活かせる部分は活かしていきます。顧客が求める『変わらない味』を提供し続けるには、最新技術が必要な場合もありますから」
 恵まれた土壌では現在、樹齢30年~60年以上のカベルネ・ソーヴィニョン、メルロー、カベルネ・フラン、プチ・ベルドーが育てられている。「通常のワイン造りではカベルネはカベルネ、メルローはメルローで樽熟成させてから混合します。ランシュ・バージュのオリジナル製法では、後発酵を終えたあとそれぞれの味を確かめ、ブレンドをしてから樽に詰め熟成させます。品種の違うワインが一緒に熟成されることによって、オリジナリティある味になるのです」
 シャトー・ランシュ・バージュのワインが格付け1級・2級と比べて遜色がないといわれるのは、土地が近く土壌が似通っているからだけではない。常に“ランシュ・バージュの味”を追求しているからなのだ。カーズ・ファミリーは他に2つのシャトーを運営しており、そちらのワインも試飲できる。異なる土壌から造られたワインを飲み比べれば、造り手の思いが味に与える影響を実感することができるだろう。

ステンレス製のタンクは取り壊され、木製タンクに

ステンレス製のタンクは取り壊され、木製タンクに

ビレッジにある加工肉などを売る店。地元の人も利用する

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ビレッジの町並みはシャトーの建物と統一感を持たせてある

ビレッジの町並みはシャトーの建物と統一感を持たせてある

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文:川口奈津子(編集部)

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