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世界が注目!メルセデス・ベンツ日本のプロモーション戦略

世界が注目!メルセデス・ベンツ日本のプロモーション戦略

独・ダイムラー社の世界的な自動車ブランド「メルセデス・ベンツ」。ブランドを代表する大型高級セダンは、その品質と安全性から、世界のエグゼクティブ層が信頼を置く一台だ。このメルセデス・ベンツが小型車市場開拓に向けて放った、日本国内向けプロモーションが世界から注目されている。日本のトップアニメーターが手がけたアニメーションや、人気ゲームソフトのキャラクターとのコラボレーションがそれだ。このプロモーション戦略についてメルセデス・ベンツ日本のマーケティング担当者に話を聞いた。

小型車市場に向けブランドを開く

 メルセデス・ベンツ(※以後メルセデス)は、大型セダンを配する高級車ブランドとして、世界的に知られる存在だ。特に日本市場では、医師や弁護士、経営者などを中心に支持されている。しかし、CO2排出規制や低燃費エンジン指向など、世界的な潮流は小型車へシフトしてきている。メルセデスとしても、従来からの限られた層だけではなく、コンパクトカーの拡充により、幅広い層へ向けた販売促進にブランドをあげて取り組んでいる。
 その小型車市場に向け、メルセデスが投入した代表的なモデルが「Aクラス」と「GLAクラス」だ。性能やデザイン、安全性や快適性など、話題に事欠かないこの2台だが、そのユニークなプロモーション手法にも注目が集まっている。日本市場を担当する「メルセデス・ベンツ日本」で、マーケティングや広告を担当する禰宜田氏によれば、コンパクトカーの販促戦略やメルセデスのブランド戦略の一環として、これまでにない斬新なプロモーションが実現したという。
「日本国内でメルセデスといえば、高価で手が届きにくい『成功した人のクルマ』といったイメージが根付いています。そんな日本市場に新型『Aクラス』をはじめとした新世代のコンパクトカーを投入するにあたり、若い人を含めた新しい購入層の開拓を目指しました。これをメルセデスでは『ブランドのオープン化』と呼んでいます。いわゆるブランドを新しい層に向け開いていくという意味です。その一環で、メルセデスを身近な存在として受け止めてもらうための施策として、アニメーションや人気ゲームソフトとのコラボレーションが実現しました」
 この「ブランドのオープン化」が日本で目に見える形でスタートしたのは、2011年7月に東京・六本木にオープンした「メルセデス・ベンツ コネクション」※から。そのコンセプトについて禰宜田氏は次のように振り返った。
「このメルセデス・ベンツ コネクションは、従来からの購入層はもちろん、メルセデスを購入していない層や、クルマへの関心が低い人に、施設内のカフェやレストランの利用を機に、メルセデスに触れてもらうことを目的としたブランド発信拠点です。この『身近な存在として感じてもらう』とうコンセプトが、コンパクトカーのプロモーションにも活かされています」

ブランド初のチャレンジ
「Aクラス×アニメ」

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「このメルセデス・ベンツ コネクションでの経験から、そもそもクルマに関心のない人にメルセデスに気付いてもらうためには、インパクトがある広告表現が必要だと感じました。ちょうどその頃、第3世代にあたる新型『Aクラス』の発売が決定。スタイリッシュで走りを意識したこのクルマに相応しい、ダイナミックなデザインやアクティブな走りのイメージを表現する、クリエイティブコンテンツが欲しいと考えました。折しも独本社では、この『Aクラス』のリリースにあたり、各国からその国の特色を活かしたプロモーションアイデアを募っており、日本が世界に誇るコンテンツとしてアニメーション案を提案。独本社からも『面白い!』と承認を受けることができました」
 アニメーションといっても、単に30秒のアニメCMを作るのではなく、クルマのクオリティやストーリーにも細心の注意を払い、「Aクラス」が持つスタイリッシュでアクティブな走りを表現する“完璧さ”を目指したという。結果、日本屈指のトップアニメーターたちが力を注ぎ、6分間にも及ぶアニメーションムービーを完成させた。それが、メルセデスブランドとして世界初の試みとなったオリジナルアニメーション『NEXT A-Class』※だ。
「このアニメーションムービーを軸にした『NEXTA-Class』キャンペーンでは、新車発表前のプレローンチ※から発売日にかけ、十分な話題作りを目指し、時間軸に沿って周到に準備をしました」
 この説明の通り、「Aクラス」日本発売(2013年1月17日)に先立つこと2カ月前、2012年11月17日に公開された『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q 』の上映前のシネアドで、この『NEXTA-Class』が初披露された。また、秋葉原や渋谷で号外を撒くなど、アニメユーザーに刺さる凝ったプロモーションを展開。テレビCMも直接的なクルマの訴求ではなく、アニメーションムービーの告知を中心に特設サイトへ誘引するものだった。
「果たしてこの手法でターゲットの心を捉えることができるのか――。といった私たちの心配をよそに、狙い通りにアニメユーザーから、SNSなどで一般へと話題が広がり、動画サイトで270万回も再生されるなど、予想をはるかに上回る反響を獲得することができました」

世界的な反響を獲得
「GLAクラス×マリオ」

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 この『NEXT A-Class』キャンペーンの成功とともに、新型「Aクラス」は好調な売れ行きを見せ、当初の目的であった、メルセデスに関心のない世代からの購入を獲得。それまでの努力が実を結ぶ結果となった。次に手がけたのは、新カテゴリーのコンパクトSUV「GLAクラス」のプロモーションだ。
「私たちはこの『GLAクラス』で、30~40代のアクティブなカップルや夫婦にリーチしたいと考えました。その層に有効なクリエイティブを検討していた際、パートナーである広告会社から、任天堂スーパーマリオブラザーズとのコラボレーションを提案されました。それも初期の8ビットのスーパーマリオブラザーズです。まさにターゲットが子供時代に夢中になったゲームソフト。世代を超え、国境を越えた世界的なキャラクター『マリオ』は、私たちがリーチしたいターゲットにピタリとはまると感じました」
 この「メルセデス・ベンツ日本×任天堂」という夢のコラボレーションは、SUVならではのアグレッシブな走りを、マリオの楽しく、躍動感あるキャラクターで表現した「GO! GLA」※として世に送り出すこととなる。
 そのテレビCMでは、「スーパーマリオブラザーズ」のゲーム画面を忠実に再現。マリオが「GLAクラス」に乗り込み、ブロックを崩したりジャンプでゴールポールをクリアして駆け抜け、最後は実車の「GLAクラス」からリアルなマリオが降りて現れるといった衝撃的な内容。
「どんな場所でも軽快に走り、老若男女問わず幅広い人に愛されるキャラクターが『GLAクラス』を表現する上でピッタリでした。任天堂の担当者にもクルマ好きが多く、今回のコラボレーションでは、お互いに盛り上がり『Win-Win』の企業コラボレーションが実現できたと実感しています」
 2014年5月29日にメルセデス・ベンツ コネクションで行われた「GLAクラス」の記者発表会は、スーパーマリオブラザーズの世界観の中で表現された。さらに、同日発売の「マリオカート8」では、8月より無料ダウンロードコンテンツとして「GLAクラス」「300 SL ロードスター」「W25 シルバーアロー」の3台のメルセデスカートが登場した。
 このCMのYouTubeにおける視聴回数が、公開から4カ月を待たずに約450万回に到達。220を超える国と地域からサイト閲覧があった。独本社の広告チームも発表後の反響の高さに驚き、メルセデス・ベンツ日本の広報チームと共同で、リリースやSNSを活用した情報を発信するなど、全世界的な広がりを見せた。
「予想以上の海外からの反響に驚かされました。メルセデス・ベンツブランドの場合、独本社が制作したマテリアルを全世界共通で使用するのが基本条件です。オリジナルコンテンツを使い、ローンチキャンペーンまで展開できるのは、日本の他には米国と中国くらい。特にこのカテゴリーは、メルセデスにとって唯一カバーできていなかったセグメント。『GLAクラス』の登場で、他社のコンパクトSUVに興味を持っていた人を含め、あらゆる層からの注目を集めることができました。今秋リーズナブルな『GLA 180』の配車が始まることで、購入層の裾野が広がることに期待しています」
 この2車種によって、小型車市場で狙い通りの結果が得られたという禰宜田氏だが、今後のプロモーション展開については、マーケットや販売状況、新車種導入の際の背景などにもよるので、今回のようなプロモーション展開が実現するかは分からないとした。しかし、「11月上旬より放映を開始した『GO! GLA』の第2弾CMのように、今後も質の高いクリエイティブを目指していきたい」とも答えてくれた。メルセデスの次なる一手が益々楽しみだ。


mario_mb_writer禰宜田 謙一(ねぎた けんいち)
メルセデス・ベンツ日本
マーケティング・コミュニケーション部
統括マネージャー

※メルセデス・ベンツ コネクション:東京・六本木と大阪・梅田で展開するメルセデス・ベンツおよびスマートの情報発信拠点。店内にはカフェやレストラン(東京)、車両展示スペースが設置される。
※ローンチ:新しい商品やサービスを世に送り出すこと。新商品や新サービスの公開という意味で一般的に用いられる。
※NEXT A-Class:新型「Aクラス」キャンペーンの一環として制作されたメルセデスブランド初のオリジナルアニメーション。2012年11月から予告編のテレビCM放映および特設サイト上でアニメコンテンツが公開された。
※GO! GLA:「GLAクラス」の発表時に日本限定で任天堂のゲームソフト「スーパーマリオブラザーズ」のマリオを採用したテレビCMと特設サイトが制作された。8ビットの世界でGLAクラスに乗ったマリオが活躍する。

文|江崎充哉(編集部)

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