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「バレエが恋した男」 熊川哲也

『ラ・バヤデール-美しき舞姫と戦士の恋物語-』

「バレエが恋した男」 熊川哲也

宙から降り注ぐ艶光、それを受け彩度を増す真紅の客席、そして限りない静寂……上演なき日のステージでさえ、彼の姿に焦がれている。そうした気配のなか、どこからか響き始めた優美なるメロディ・ライン(A・ヴィヴァルディの『四季-春-』だろうか)。その音色の送り主を察し、場内の空気が歓喜の熱を高めれば、口笛を奏でながら彼は颯爽と現れた。それはまるで、貴公子のように。
世界を魅了するバレエ・ダンサー 熊川哲也。これまでに成し得た数々の偉業はバレエ界の華伝と呼ぶにふさわしい。そんな彼のサクセス・ストーリーの原点にある作品『ラ・バヤデール』がこの春、甦る。ダンサー、芸術監督など、さまざまな角度から一芸術文化を牽引する彼は今、親愛なるバレエをどのような眼で捉えているのだろう。

時代は舞う、美しきを

 時は「第42回 ローザンヌ国際バレエコンクール(以下、ローザンヌ)」最終審査発表から2日後。心なしか晴れやかな表情に見える彼は、同大会で優勝を果たした若き日本人青年の姿に、25年前の自らを重ねていたのだろうか――。
「アジア人の肉体に備わる力強くもしなやかな筋力を活かした表現力と、日本人の勤勉性が成果へと繋がったのではないでしょうか」
 世界で活躍する若者の姿に「日本人のポテンシャルを感じた」と、今大会を振り返る熊川自身も、15歳で海を渡り、89年のローザンヌ優勝をはじめ、若くして世界の舞台に名功を刻んできた。そんな当時を振り返り、彼は現代の若きダンサーに、あるイマドキ感を見出す。
「僕の若い時代には“10回連続ターン”といった派手なパフォーマンスが重視されるような傾向がありましたが、今の若いダンサーたちはそれよりも“たとえ3回のターンでも、より優雅に”というスタンス。彼らは、バレエの美しさを追求しています」
 それには社会の変化も大きく影響していると続ける。
「現代では、世界中にあるバレエ映像をDVDやYouTubeなどを通して手軽に見ることができるようになりました。そうした情報が豊かな環境下に生まれ、さまざまなバレエ・シーンを目にしながら育ってきた今の若いダンサーたちは、バレエの美しさに対する感度が高いと思います。情報収集にかなり苦労した僕らの世代にとっては羨ましい限りです」

ダンサーの宿命

 一昨年のローザンヌでは審査員を務め、また自身が主宰する「K バレエスクール」では後進の育成に励む熊川が、次世代を担う若きダンサーに求めるものとは。
「当然ながら将来性もありますが、ローザンヌの参加資格年齢(15~18歳)であれば、ある程度、目に見える形での完成された表現力が必要だと思います。なぜなら、アスリートと同様に肉体を酷使するダンサーの人生は短きもの。若く、体がベストの状態で動くときにはすでに成熟した表現力を持ち合わせていなければ、至高のパフォーマンスが望める時期は過ぎてしまいます。若さの、より早い段階で完成度の高い表現力が求められるという意味では、他のどの業界よりも早く成熟しなければならないシビアな世界と言えるでしょう」

潤い生活のテーゼ

 優雅に泳ぐ白鳥も水面下では激しく脚を動かし続けている、そんな姿を彷彿とさせる美しくもタフなバレエ界において、42歳の今なおダンサーとして活躍し続けることができる秘訣とは。その威風堂々たる風貌から見受けるに、やはり強い精神力だろうか。
「僕はメンタルが強そうだと、人からはよく言われますが……その通り(笑)。ちなみにこれは生まれもった気質です。けれどそんな僕でさえ、強さを見失いがちになるときはある。だから日々、『やればできるだろ?だったらやれよ』と自分を奮い立たせることが必要なんです。そうやって常に高みを目指し、自分の限界に挑んだ者にしか味わい知れない最高の景色を見続けていたいですから。見たくないですか?だったらやれよ、とまさにこれです!」
 そんな“強”祖(きょうそ)からBUAISO読者のビジネスパーソンへエールを。
「日々の仕事の中でも、手を抜いてしまいそうになることは誰にだってあるはずですが、どんなに忙しくても、疲れていようとも、それを乗り越えると何より自分が爽快な気分でいられることでしょう。外の天気は気持ちよく、ビールも数倍美味しく感じられるはずです。そうやって日々の生活に潤いを与えるためにも、“Full out(全力)”で生きろ! と、他人に言っているふりをして実は自分に言い聞かせている言葉でもあったりします(笑)」


熊川哲也 Kバレエ カンパニー15周年記念公演/Bunkamura25周年記念

『ラ・バヤデール-美しき舞姫と戦士の恋物語-』

【Story】舞台は古代の南インド。寺院の舞姫ニキヤと高名な戦士ソロルは密かに愛し合い、神に結婚の誓いを立てる。しかしソロルを気に入った領主ラジャは娘である王女ガムザッティとの結婚を彼に命じる。権力と彼女の美しさに抗えず結婚を承諾してしまうソロル。一方、ニキヤに求愛を拒絶されたハイ・ブラーミン(大僧正)はニキヤとソロルの関係をラジャに密告する。ガムザッティはニキヤに身を引くように迫り、二人は言い争いとなる。そしてラジャたちはニキヤを亡き者とするため、毒殺を計画する。ガムザッティとソロルの婚約披露の宴で悲劇が起こる。ソロルに裏切られて、悲嘆に暮れるニキヤは命じられるままに祝いの舞を踊るが、その最中、仕組まれた毒蛇に噛まれ、絶望の中で死んでゆく。罪悪感に苦しむソロルは幻影の中で再びニキヤと出会う。愚かな人間たちが引き起こしたこの愛憎劇の末路は――。

(C)Nobuo Yano

(C)Nobuo Yano

公演期間:2014319日()~26日(水)全14公演

会場:Bunkamuraオーチャードホール

芸術監督・演出・再振付:熊川哲也

舞台美術・衣裳デザイン:ディック・バード

音楽:レオン・ミンクス

演奏:シアター オーケストラ トーキョー

料金:<3/193/20昼、3/24夜、3/26夜>S席 ¥18,000A席¥14,000B席¥10,000(税込)<その他の日程>S席¥13,000A席¥10,000B席¥8,000C席¥6,000(税込)

主催:TBSBunkamuraBS-TBS

特別協賛:株式会社オンワードホールディングス

協賛:チャコット株式会社

オフィシャルエアライン:ANA

制作:K-BALLETTBSBunkamura

http://k-ballet.co.jp/

お問い合わせ>

チケットスペース 03-3234-9999

Bunkamura 03-3477-324410:0019:00) http://www.bunkamura.co.jp

 

 

インタビュー・文|松永理佐(編集部) 撮影|藤城貴則

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