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ポルトガル 首都リスボンと第二の都市ポルト

ポルトガル 首都リスボンと第二の都市ポルト

Modernization

近代的整備が進む都市部
市民生活とのギャップ

 2011年1月12日、ポルトガル政府は総額12億5000万ユーロ(約1350億円)の国債入札を実施した。平均利回りは6.716%。低成長が続く国の利率としては高い。また1月23日には任期満了に伴う大統領選が行われ、社会民主党のカバコシルバ大統領が再選され、社会党のソクラテス首相率いる議会との協調路線を継続することを強調したが、アイルランド、ギリシャに続いて困難な状況に陥るという不安は根強い。財政難の一因である歳出超過を削減するため、公務員の賃金削減や増税の計画もある。
 ポルトガルでは経済不安と貧富の差が広がっており、首都リスボンにおいても混沌とした雰囲気を感じる。
 ポルトは人口26万人の同国第二の都市。周辺市域を含め160万人ほどが生活するが、これは鹿児島県の人口と同じ規模にあたる。
 まずポルトの空港の広さに驚く。2010年の乗降者数が500万人と神戸空港の約2倍だが、搭乗橋9本、搭乗口35カ所と神戸空港の3本、4カ所と比較しても多さがわかる。巨大な空港内部は閑散としていて、スチールやコンクリート主体のモダンな外観や内装が一層その印象を助長している。また、空港から市内へ向かう地下鉄も乗降者はさほど多くはないが、そのモダンさに経済危機という言葉を忘れてしまうほどだ。
 ポルトの街はその歴史地区が世界遺産に指定されている。歴史的建物の脇には今にも崩れそうな家が立ち並んでいたり、市の中心部である市庁舎広場のビルの窓ガラスが割れていて廃墟のようだったり、屋根が焼失した上階が放置されたまま階下で隣人が生活を続けていたりと、空港や地下鉄のモダンさと対極にある姿に違和感を覚える。
 街の主要な名所にはWi-Fiスポットがある。しかしPCを使う人の姿はほとんど見ることはない。整備を進める自治体と、実際に利用する市民の間にギャップを感じる。モダンな整備と現実の生活とのアンバランス感は、首都リスボンでもポルトでも同様に感じられた。
 しかし人々に焦燥感やギスギスした感じはない。穏やかで人当たりがよく、接していて心地いい。観光名所近辺ですら、レストランや土産物屋が少ない。観光地特有の押しつけられる感覚がない、自由でいられる心地良さに観光客としてほっとした。

オリエンテ駅。花が開いたような柱と天井はキリスト教会の建築用法

 オリエンテ駅。花が開いたような柱と天井はキリスト教会の建築用法
 ポルト空港に乗り入れるメトロは市街まで直通で30分

コンセプチュアル+モダン
現代建築の博物館

 近代化の流れの中で、ポルトガル内の現代建築が注目を集めている。
 きっかけは1998年のリスボン万博だ。アテネ五輪のメインスタジアムを設計したスペイン出身のサンティアゴ・カラトラバが、万博会場となったリスボン東部のオリエンテ駅をデザインした。このオリエンテ駅を周辺に世界に著名な建築家の作品が立ち並ぶ。建築界のノーベル賞、プリツカー賞受賞者でポルトガルの巨匠アルヴァロ・シザはポルトガル館を設計した。大阪にある海遊館を設計したピーター・シャーメイエフは海洋館を設計、ヨーロッパ最大の水族館として人気がある。今ではコンサートやスポーツイベントに使用されているアトランティック・パビリオンを設計したレジーノ・クルジュはこの作品で多くの賞を受賞した。
 リスボン万博のテーマは「海、未来への遺産」。バスコ・ダ・ガマのインド航路発見500年記念として行われた。そのため海をコンセプトにした建物が多い。海の青に映える白いマストのようなバスコ・ダ・ガマ・タワー、帆船をモチーフにした高層マンション、波がきらめく水面をイメージさせる携帯電話会社のオフィスビル、駅から続くバスコ・ダ・ガマショッピングセンターは、船体の先端のようだ。ほかにも、真っ黒なガラス張りのカジノなど、周囲の建物は一つとして平々凡々としたものがない。水族館とバスコ・ダ・ガマ・タワーの間を運行するロープウェイに乗ると、ジオラマのようにたくさんのモダン建築を楽しむことができる。
 リスボン万博の年に高松宮殿下記念世界文化賞を受賞したシザの作品はポルトにもある。セラルヴェス現代美術館だ。窓が極めて少なく、直線と空間を活かした簡潔な白亜の建物は潔さが感じられる。自然の傾斜に建ちながら、平行を保っているように見えるデザインはシザだから成せる技だろう。
 ポルトでセラルヴェス現代美術館と人気を二分しているのは音楽堂として建てられたカーサ・ダ・ムジカだ。日本語で「音楽の家」を意味する。シザと同じくプリツカー受賞歴のあるハーバード大学教授レム・コールハースが設計を担当した。見る方向によって異なる美しいフォルムが魅力だ。内部も自分が今何階にいるのかわからないほど複雑な造りだが、大小違った形のコンサートホールを造ることを可能にした。近代的な外観・内装に反し伝統工芸のタイル「アズレージョ」で覆われた部屋があり、伝承の心も忘れていないようだ。

ポルトガル地図

ポルトガル国旗 ポルトガルDATA

国名:ポルトガル共和国/面積:91,985km2(日本の約4分の1)/人口:約1,064万人/首都:リスボン(人口約48万人)/言語:ポルトガル語/宗教:カトリックが多数/主要産業:製造業、観光業/一人当たりGDP:約15,773ユーロ(09年)/経済成長率:1.1%(10年)/通貨:ユーロ/財政赤字対GDP比:9.4%(09年)/気候:温暖な地中海性気候/アクセス:ロンドン、パリ、モスクワ、マドリッドなどで乗り継ぎ東京から約17時間


文・撮影 川口奈津子

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