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飽くなき向上心と行動力 活気溢れる中国ビジネス界で活躍する日本人米国公認会計士

経済の知識と中国への興味

田中年一氏(デロイト・トウシュ・トーマツ会計事務所勤務 米国公認会計士)

 田中氏が中国と関わる最初のきっかけは、大学での第二外国語の授業だったという。「『これからは中国だ』と母に勧められまして。同じ漢字だから勉強も簡単だろうと思いました(笑)」。卒業後、田中氏は中国語から離れた生活をしていたが、ビジネスチャンスやキャリアの可能性が中国において非常に大きくなると感じ、再び中国に興味を持ち始めた。
 理系の学部を卒業後、SEとして働いていた田中氏は、今まで自分が学んできた理数系の知識だけでは、様々な顧客の要望に応えられるようなビジネスパーソンにはなれないと感じたという。「今まで全く興味もなく必要性も感じなかった経済の知識が必要だと強く感じました。また外資系の企業でもあったので英語の必要性も感じていました。そこで経済知識と英語力を両方向上させようと、米国公認会計士の資格勉強を始めたのです」。当初は講義を受けるのみで受験は考えていなかったという。しかし、具体的な目標があった方が身に付くだろうと、途中から田中氏は資格取得に向けて本格的に勉強を始めた。「働きながらの通学で、予習復習の時間も含めかなり厳しいスケジュールでした。励まし合える予備校のクラスメートの存在や、日本の公認会計士資格を持つ親友がいたことも大きな励みになりましたね」。努力が実り、田中氏は無事合格した。
 米国公認会計士の勉強と並行して、田中氏は中国語の勉強も始めていた。週末は会計士の、平日夜は中国語の学校に通うかなりハードなスケジュールをこなしていたのだ。「中国語の学校で、中国人や中国に興味を持つ日本人とも親しくなり、ますます中国に興味が湧きました。中国人の逞しさや強さを見習いたいと思いましたし、そんな中国人と対等にビジネスでやりあうことができれば、世界のどこでも通用する人間になれるだろうとも思いました」。そして北京での語学留学を経て、田中氏の中国で働くための準備は本格的に整った。

東京に似た上海とおしゃべりな北京

外灘から望む上海浦東新区、中央に見える最高層のビルは森ビルグループが開発した上海環球金融中心(上海ワールドフィナンシャルセンター)

 現在、田中氏は中国に進出する日本企業の監査を業務として行っている。「日本企業が中国でビジネスを行う際に最も重要なことは、まず信用できる中国パートナーを見つけることです。中国には中国のやり方があり、中国人との接し方があります。立てるべき相手を飛び越えて話を進めようとしたり、人前で食事の誘いを断ったりすることは、中国人にとって面子を潰されることであり、絶対に避けなければなりません」。国が変わればマナーも変わる。中国人との接し方についても予習が必要だと田中氏は言う。
 田中氏の上海での生活は3年になる。上海は生活環境が日本に近いという。「上海は日本の食材が入手しやすく、おしゃれなレストランなどもたくさんあります。人間関係も東京に似て希薄な感じがします。北京ではタクシーに乗ると『どこから来たのか』『北京に住んでいるのか』『中国語はどうやって勉強したんだ』などと運転手が非常におしゃべりでいろいろ質問されます。『日本が負けるのは明らかなのに第二次世界大戦でアメリカに攻撃を仕掛けたのは一体なぜだ』というような難しい話をされたこともありました。上海のタクシーでは事務的な会話だけです。日本人同士でも、北京は上海よりも日本人の数が少ないので関係性は強かったですね。上海は広くいろいろな人に出会えます」。
 上海には日本人が多く、4万5千人ほどが常駐しているとされる。「それは居留届を出している統計上の数字で、実際にはもっといるのではないでしょうか。8万人とも10万人とも聞きます。日本人同士の繋がりは強く、私も日本人草サッカーリーグ、フットサルチーム、テニスサークル、大学のOB・OG会、青森県人会などに参加しています。mixiのコミュニティもありますし、日本人向けのフリーペーパーにも多くの集まりが紹介されています」。それぞれ自分に合ったコミュニティを見つけて積極的に参加しているようだ。
 田中氏はまた、「上海の裏スポット」とも呼ぶべきお薦めの場所を紹介してくれた。「豫園の南の『方浜中路』を東の方へ5分くらい歩いたところにある『四牌楼路』という通りです。友人が上海に来た時に必ず連れて行って、全員が最も印象に残る場所だと言いますね。上海に遊びに来た人は豫園には必ず行くと思いますので、そこから是非少し足を伸ばして『四牌楼路』を南の方へ『復興東路』に抜ける形で歩いてみてください。昔ながらの街並みや庶民の生活、屋台、青空床屋など、高度に発展する経済と共存する上海の別の一面が垣間見えると思いますよ」。

今後も中国を舞台に

 今後も活気あふれる中国で仕事を続けていきたい、と田中氏は話す。「やはり勢いのある場所で活力のある人達と一緒に働くと、自分にも活力が湧いてきますからね。ただし長くいると逆に活力を吸い取られてしまいそうなので、一生はいないつもりです(笑)」。 田中氏が今、目指しているのは中国公認会計士資格である。「日本人で中国公認会計士に合格した人は私の知る限りではいないので、合格すれば仕事の幅が大きく広がることは間違いありません」。試験は年に一度、「会計」「監査」「税法」「経済法」「管理会計」の5つの科目があり、科目合格が可能だという。田中氏にとって今年が3度目の挑戦だ。
 田中氏のその飽くなき向上心と行動力は止まるところを知らない。米国公認会計士という資格を取得後、上海という「新天地」に飛び込み、わずか4年弱で中国の文化、習慣、商慣習を体得し、すでに中国人社会にも溶け込んでいる。「安定」を求めるよりも絶えず「挑戦」し「努力」することを楽しんでいるから、「新天地」で輝き続けているのだろう。中国の活気が、そんな田中氏に更なる力を与えているのかもしれない。


仲 智行(なか・ともゆき)
東京大学経済学部卒業後、ソロモンブラザーズアジア証券(現日興シティグループ証券)入社。事業法人70社余りにB/S、P/Lの改善のためのコンサルティング営業に従事。そこで不良債権処理、証券化、デリバティブを用いたリスクヘッジ案件に数多く携わる。その後、中国留学を経て、中国不動産投資ファンド会社にて、本部長として北京オフィス証券化ファンド、PEファンドを手がける。現在、日中双方向での投資・ビジネスコンサルティングを行うZENパートナーズ(株)代表取締役社長

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