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「電子書籍との付き合い方」

漫画ユニットうめの原作/演出担当・小沢高広氏

漫画ユニットうめの原作/演出担当・小沢高広氏

広がる表現方法、変わる本との付き合い方

 まず読者としての「電子書籍との付き合い方」を考えていこう。電子化されると、「本」はどこが変わるのか。
 第1に、収納スペースが必要なくなる。とくに漫画は5巻、10巻といったシリーズ物が多いため、場所を取るのが悩みの種だった。だが、そんな悩みとは、もうおさらばだ。
 第2に、漫画ならではの問題だが、「ノド」の制約から解放される。ノドというのは、紙の本を綴じている部分。
「紙媒体の場合、見開きの真ん中は誌面が歪むので顔を描くには適しません。だから、複数のキャラクターが集まっている場面を大きく描きたい時は配置に工夫が必要です。ともするとノドに来る子の首を不自然に傾けさせたり。電子化によって、大きい一枚絵をきちんと見せられるようになるのは嬉しいですね」(小沢氏)
 第3に、当面はアップルのiPadに限った話だが、アニメーションを入れるなどマルチメディア的な表現も自由自在となる。

(上)『大東京トイボックス』(バーズコミックス) (下)Kindle Storeで購入できる『青空ファインダーロック』

(上)『大東京トイボックス』(バーズコミックス) (下)Kindle Storeで購入できる『青空ファインダーロック』

 ただ、問題がある。プラットフォームメーカーによる審査だ。アップルのAppStoreのグラビア系アプリ一斉削除事件も記憶に新しい。
「ごく普通の水着のグラビアがリジェクトされるならば、日本の漫画の相当数が審査を通らないのではないでしょうか」(小沢氏)
 猥褻表現や暴力表現だけではない。
「iPhone向けの漫画アプリを開発した時、せっかくだからアップルのCEOスティーブ・ジョブズ氏の話にしよう、と作ってみたんですが、『リアル・アップル・ストーリーだから駄目だ』と国際電話でダメ出しされました(笑)」(小沢氏)
 以上、審査の問題は気になるものの、一応、作家側から言えば表現の自由度が広がる、読者側から言えば「本」との付き合い方の自由度が広がる、と言えそうだ。

 それだけではない。「本」との付き合い方の選択肢も広がる。”絶版本”が手軽に読めるようになるのだ。出版社が「品切れ重版未定」のまま放置している事実上の絶版本や、雑誌に発表された後に単行本として出版されていない作品など、現実問題として読めなくなっている作品が数多く存在する。そうした作品を作家本人あるいは出版社が電子書籍化すれば、ファンはあちこちの古本屋を探し歩く必要がなくなる。

「単行本化したけれど増刷がかからない、とは、読者から評価されていない、ということなので、事実は事実として受け止めなくてはいけません。ただ『採算ラインに乗るかどうか微妙』という判断で増刷見送りとなっている本は、意外と多いと思います」(小沢氏)
 電子化されると、例えば短編集のうち1編だけを買う、という選択も可能になる。
「通常紙の本は1折にあたる16ページをいっぺんに印刷します。そのため、ほとんどの本のページ数は16ページの倍数になっています。そうした印刷の都合に加えて、流通の都合で、これまで漫画の単行本は200ページ前後、というのが暗黙の了解となっていました。ところが、電子書籍であれば、ストーリーの都合に合わせてページ数を自由に設定できるだけでなく、数ページ単位での販売も容易です。いずれは『ゴルゴ13のあの回がスゴイ』と聞いてその回だけ買って読み、気に入ったら順番に読んでいく、といった買い方、読み方もできるでしょう」(小沢氏)


渡辺麻実

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