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【特集】スマートフォン環太平洋戦 —10億総スマート化―

希代の天才、アップルCEOのスティーブ・ジョブズ氏が経営の第一線を退く。彼の偉業は数限りないが、ジョブズ氏の感性の集大成であるiPhoneというプロダクトとサービスは人類のライフスタイルに大きな革新をもたらした。スマートフォン戦線の第一幕は花道を歩くジョブズ氏への喝采の余韻が響いたまま、幕間に入った。第二幕のスポットライトが当たるのは誰なのか。

アップルが申請した「キラー特許」

 東京のメトロでは、スマートフォンが大勢(たいせい)だ。駅間では間欠泉のようにネットワークへの接続が切れるが慣れたもので、オフラインとオンラインアプリを駅間の3分間で使い分けている。そろそろスマートフォンで2台目の人もいるだろう。草創期の「バッテリーが持たない、もっさりした緩慢な処理能力、画面解像度が低い、対応アプリが少ない」と製品完成度にクエスチョンマークが点灯していても果敢にチャレンジし、スマートフォン産業の健全な発展に大いに貢献した哀れな“アーリーアドプター(初期導入者)”には2台目用に「リベンジ割」を用意していただきたい。
 ケータイの端末の進化も利用ユーザの拡大も驚くべきスピードであったが、世界同一商品で供給されるスマートフォンの伝染力はそれをも凌駕する。
 米国の調査会社IMSリサーチによると、2016年末には世界のスマートフォンの年間販売台数は10億台を超えると予測している。2011年では世界全体で4億2000万台のスマートフォンの出荷が見込まれ、モバイル端末全体の28%を占める。メジャーシェアを持つスマートフォンメーカーの中に日本企業の存在感は薄く、辛うじてソニー・エリクソン(英)に面影を残す。
 スマートフォンでは主要メーカーでの寡占化が著しい。ノキア、アップル、RIM(ブラックベリー)、サムスン、HTCの5社で2011年第1四半期のデータ(IMSリサーチ2011年7月)では81%の占有率である(図1)。ソニー・エリクソンに続く第7位のシェア(4%)のモトローラ・モビリティがグーグルに買収されたのは記憶に新しい。
 スマートフォンのOS、特許を牛耳る米国西海岸企業の脅威に加え、成長著しい中韓台のメーカーの後塵を拝す日本メーカーは太平洋の東と西を両にらみで戦わなければならない。

特許紛争 リンゴの引力と遠心力

 2009年1月、米国で一つの特許が成立した。アップルが2008年4月に申請した「タッチスクリーン端末におけるグラフィカルユーザインタフェース」に関する特許(米国特許第7479949号)である(図2)。筆頭発明者としてスティーブ・ジョブズの名が記載されているこの特許はスマートフォンの操作において請求範囲が「広範」であり、キラー特許に近い価値を持つ。実際にこの特許を根拠として、2010年3月、アップルはアンドロイド陣営であるHTCを特許侵害で提訴した。アップルの競合他社と比べ比較的規模が小さいHTCをアンドロイド陣営最初の訴訟ターゲットにした狙いは、1997年設立のHTCには特許の蓄積が少なく訴訟上有利な展開を期待できること、驚異的な成長力のあるHTCを早めに叩いておきたいことなどが挙げられる。しかし、設立後わずか14年間でスマートフォンで世界4位のシェアになったHTCは経営トップの現状分析力・実行力が優れているのだろう。華麗なる反撃を開始する。2011年7月、グラフィック関連の技術、特許を持つS3グラフィックスを買収し特許固めを行い、さらに2011年9月、グーグルから譲渡された特許を根拠に逆提訴した。
 アップルとサムスンの戦いもまた熾烈である。アップルに多くの主要部品を供給するサムスンとの関係は一時期、蜜月が続いていた。しかし、アンドロイド陣営の花形端末Galaxyシリーズが好評を博し、サムスンが世界シェアを3%(2010年第1四半期)から15%(2011年第1四半期)に急激に拡大させ、アップルのシェアを奪うようになると状況は一変する。両社の関係は険悪になり、泥沼の訴訟戦に突入した。
 スマートフォンの特許紛争は、図表3に示す通り、スマートフォンOS3大会社である、アップル、グーグル、マイクロソフトの周辺で勃発している。冷戦時代の大国同士が破滅的な犠牲を伴う正面戦を避け、代理戦争を世界各地で繰り返していた事象と同じ構図である。
主要メーカーの寡占化が著しい

スマートフォン特許をめぐる攻防が続く


文:本丸達也、羽田祥子(編集部)

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