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Jリーグのアジア戦略

 Jリーグが発足して20年。1993年に10チームで開幕したJリーグは、40チームに増加した。開幕当初のブームの後、一時期の低迷期を経て、現在では平均1万6000人の観客が来場する世界でも有数のプロリーグへと成長した。「日本サッカーを強くしたい、ワールドカップに出たい」という強い気持ちのもと発足したJリーグ。その努力が実り、それまで一度も出場したことがなかったワールドカップに、この20年間で4回連続出場を果たしている。この20年、成功といっていい結果を残してきたJリーグが、今なぜアジアの市場に出て行こうとしているのか? 現在のJリーグが進めるアジア戦略のキーマンである、Jリーグ理事競技・事業統括本部長中西大介氏と、Jリーグメディアプロモーションアジア戦略室長山下修作氏に話を聞いた。

サッカー大国ニッポンを目指して

「現在、世界のサッカー大国には2つのスタイルがあります。一つは、イングランド、スペイン、ドイツのような、自国のリーグに観客がたくさん集まって、世界中に放映権が売れて、世界から選手と富が集まる国。ヨーロッパに多く見られます。もう一つは、ブラジル、アルゼンチン、オランダのように選手を供給する国。ヨーロッパの一流リーグに次々と選手を送り込み、そこで鍛えられることで自国の代表チームも強くなっていく国です。
 では日本はどういうサッカー大国を目指して行くのでしょうか。前者なのか後者なのか。
 一足飛びに前者にはなれません。今すぐにイングランドのプレミアリーグのようになろうとしても難しいでしょう。であれば後者でしょうか。しかし、後者の中には国内のプロリーグがきちんと機能していない国も多くあります。そういった国では、送り出した選手が一流のリーグで鍛えられることで、一時的に代表チームが強くなりワールドカップで良い成績を収めますが、永続的に強さを維持できないケースが多いのです。ワールドカップで一度だけ良い成績を残しても、長い目で見るとその国のサッカーは発展しません。
 私は新しいサッカー大国への道は持久戦だと思っています。一戦必勝である大会のみで成し遂げるだけのものではありません。10~15年のスパンで世の中がどう変わっていくのかに合わせて日本のスタイルを模索しなければいけません」(中西氏)

アジアに一つの大きなマーケットをつくりたい

 そこで考えられるのがアジア市場の拡大である。
「アジアの中に、プロサッカーの一つの大きなマーケットが出来上がれば、Jリーグをより成長させることができ、競技面とビジネス面の両面において、サッカー大国日本を築いていけるのではないでしょうか。
 これまで、中国やタイなどアジア各国のサッカーマネーは、放映権料、スポンサード、チーム買収など、すべてヨーロッパのサッカー市場に向かって流れてしまっていました。アジアでは非常にサッカーが盛んで、サッカーが好きな人が多いのですが、お金も選手も出て行く側、出す側というのが現状です。しかしアジアの中でマーケットができて、アジアのサッカーマネーがアジアの中で回るようになると、ヨーロッパ一極集中である現在の状況から、アジアからお金や選手が流出せずにアジアで環流できるようになります。
 例えば、中国の企業がイングランド・プレミアリーグに投資していますが、最近では中国国内のクラブチームが、イタリアの有名監督やブラジルの最優秀選手を獲得している。今までヨーロッパ市場で使われていたサッカーマネーがアジアの中の自国のプロリーグで使われ始めているのです。
 そういった環境の中で、Jリーグが20年間で培ってきた知識やノウハウをアジアの国々でシェアして、アジアのプロリーグが盛んになると、Jリーグにとっても恩恵があります。今後、アジアでのマーケットが形成される過程で、日本は中国より先に、Jリーグの価値をブランド化していくことでリーダー的な存在になっていきたい、という狙いもあります」(中西氏)


 アジアに大きなマーケットをつくり、その中でトップの位置にいることが重要なのだという。
「日本サッカーを強くするには今までのJリーグのあり方では限界があります。2010年のFIFAワールドカップ南アフリカ大会でベスト16になったことはすばらしいことですが、今のままではあの辺が限界でしょう。日本代表がさらに上を目指すためにも、アジアのマーケットをつくり出す必要があります。 ワールドカップでヨーロッパ勢が強いのは、ヨーロッパ予選でさえ本大会のレベルで戦っているからです。ヨーロッパで上位にいると世界でも上位になる。アジアもそれくらいのレベルに向上しないと、これ以上日本は強くなれないという考え方です。
 イングランドのプレミアリーグが強いのは、UEFA(欧州サッカー連盟)のトップにいるという条件があるからです。ヨーロッパ全体で選手とお金が回っているため、そのトップにいるプレミアリーグに選手とお金が集まってくるのです。アジアにもUEFAに匹敵する経済圏をもう一つつくりたいですね。これは本来AFC(アジアサッカー連盟)の仕事なのかもしれませんが、プロリーグのノウハウを持っているJリーグがAFCの代わりにできるのではないかということです」(中西氏)


構成:佐藤高士(編集部)

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