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【実践サバイバル投資術】 ゾロゾロでそろそろ

【実践サバイバル投資術】 ゾロゾロでそろそろ

「日経平均4万円」

 昨年末に著名なエコノミストの「日経平均株価は2014年には2万円、5年後には4万円が視野に入ってくる」という発言があった。これを目にした時の私の最初の感想は「あ~っ、これはまだ出てきて欲しくなかったのに~」だった。実は、相場が過熱している時にもっとも興奮しているのは、金融のプロのはずの市場関係者たちである。職種や報酬体系、社風によって若干の違いはあるが、収益責任を負わない(はずの)エコノミストやストラテジスト達まで前のめりのコメントが多くなる。これが、書籍やメルマガの売上、講演料などの収入に直結する株式評論家や独立系のエコノミスト達であれば、なお更その傾向が強まる。
 日本の株・不動産バブル全盛の1980年代末には「日経平均10万円」、ITバブルの際にはソフトバンク株や光通信株が跳ね上がり、1万円の株が20万円になったら、「ソフトバンク30万円!」と評価額を吊り上げる個別株アナリストもいた。2012年秋に日経平均が8000円台だった当時に「日経平均2万円」と言えば失笑されたが、その翌年末には金融のプロが「4万円」とぶち上げる。どういった人たちが一番冷静さを欠いているかは明らかだろう。
「エコノミストやストラテジストは顧客が考えていることを再確認させて喜ばせる職業」という見方もあり、そうだとしたら市場心理のインディケーターとなる。今年に入ってからの相場展開を見れば、今回も「著名人によるとんでもなく高い株価予想は売りシグナル」であったことになる。

「今回は違う」と「君子豹変す」もゾロゾロ

 相場崩壊のシグナルとして「とんでもなく高い株価予想」と併せて重要なのが、「今回は違う(バブルではない)」という見解と、“相場の反対を主張して来た著名人が意見を豹変させる”ことだ。残念な事に、これも既にゾロゾロ出てきている。
 昨年秋から今春にかけて、折りに触れ国際通貨基金(IMF)は中国の理財商品を通じたシャドーバンキングに「ハードランディングのリスク」があるとして警告を発している。これに対して、中国は政治力を駆使して猛反発。IMFのラガルド専務理事から「ハードランディングになるとは考えていません。」(シンガポールストレーツ・タイムズ紙とのインタビュー)と事実上の撤回コメントを出させている。さらに、4月半ばに中国の朱光耀財政次官は記者会見で「IMFの分析や方法論は全ての国に適合するわけではない」「中国は金融リスクには対応済」「リーマン危機や欧州債務危機時の欧米の対応と比べ、中国の対応は最も成功している」などと反論している。つまり、「中国は欧米とは違うからハードランディングしない」と言っている訳だ。
 日本の株・不動産バブルの時は「日本の株・土地は高くて当然」、ITバブルの時は「ネット企業の価値は無限大」、サブプライムバブルの時は「高度な金融工学で設計された金融商品は安全」と言われていた。経験則では「今回は違う」はいつも間違っている。
 さらに、アベノミクスが始まった2012年終りには、「金融緩和で円安にはならない」、「アベノミクスは絶対失敗する」、「超円高・デフレ経済に逆戻り」、「円安では株価は上がらない」と馬鹿にする学者やエコノミストが多かった。ところが先日「米国の量的緩和縮小と日銀の金融緩和で日本円は再び105円を目指す」「世界経済が順調なのに日本株が下がる理由は無い」と、アベノミクス批判の急先鋒だった著名人がこぞって正反対の事を言い始めた時には腰が抜けそうになった。彼らは「君子は豹変す」というだろう。ただ、再び経験則となるが、相場の逆を唱え続けたグループが意見を変えたときは大転換点となる。というのは、彼らの後には誰もいないからである。「今回も違う」に加えて、「君子は豹変す」も出てきたとなれば、そろそろ上手に相場から撤退し、キャッシュを抱えて暴落に備える必要がありそうだ。


土居雅紹(どい・まさつぐ)

eワラント証券株式会社COO。CFA協会認定証券アナリスト、証券アナリスト協会検定会員。1964年静岡県生。88年一橋大学卒業後、大和証券入社。証券アナリストとして活躍。93年米国ノースカロライナ大学経営学大学院にてMBA取得。大蔵省財政金融研究所などを経て、ゴールドマン・サックス証券へ。00年同社でeワラントを開発・導入。11年8月より現職。時代に合った投資方法を研究、その分析力には定評がある。

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