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~in their own ways 彼らの選択~「震災を経験した僕たちが、今できること」 HABATAKI PROJECTリーダー 白井森隆

~in their own ways 彼らの選択~「震災を経験した僕たちが、今できること」 HABATAKI PROJECTリーダー 白井森隆

HABATAKI PROJECT(HP)のリーダーを務める白井森隆は、2012年Support Our Kids(SOK)のイギリス派遣プログラムに参加したメンバーの一人。ロンドン五輪開催期間だったため、選手村訪問など貴重な経験をして帰国する。「一番得たものは?」という問いに、彼はこう答えた。「自分と向き合ったこと」と。

HABATAKI PROJECTリーダー。宮城県仙台市出身。東北大学経済学部1年生。趣味はロック、サッカー。震災時は高校2年生。激しい揺れに耐えながら、隣室にいた姉と「大丈夫か」と声を掛け合った。高校3年の夏休みにイギリス派遣プログラムの一員に選ばれ渡英。「いろいろな意味で自分の価値観を変えた体験だった」とプログラムを振り返る。

HABATAKI PROJECTリーダー。宮城県仙台市出身。東北大学経済学部1年生。趣味はロック、サッカー。震災時は高校2年生。激しい揺れに耐えながら、隣室にいた姉と「大丈夫か」と声を掛け合った。高校3年の夏休みにイギリス派遣プログラムの一員に選ばれ渡英。「いろいろな意味で自分の価値観を変えた体験だった」とプログラムを振り返る。

「僕はここにいて本当に良いのか」
 2012年、SOKのイギリス派遣プログラムに参加した白井はそんな思いを胸に抱えていた。パンクロックやサッカーが大好きな白井にとってロンドンは憧れの地。初めての海外だったから目にするものすべてが新鮮。ロンドン五輪開催時の渡航ということもあって選手村を訪ねたり、生で五輪競技を観戦することもできた。けれど……。
「一緒に参加したメンバーの中には両親や親族を津波で亡くしたりした者もいました。それに比べたら僕は特段、何不自由しているわけでもない。そんな僕がSOKの支援を受けて海外に来て良いのだろうかって、僕は被災をただ利用しているだけじゃないかって思えてきて……」
 もちろん白井にしても震災後は家の中は滅茶苦茶。水道・電気・ガスなどのライフラインは途絶え、食糧を求めてスーパーで長蛇の列に並ぶという不安な日々を過ごした。だが彼の中では「自分は被災者なのか」「被災者って何だ」という思いが澱のように沈殿していた。
 そんな彼を救ったのが、帰国後に母と交わした会話だった。「楽しかった。けれどずっと『自分で良いのか』と思っていた」と素直な心情を吐露した彼に、母はこんな風に語りかけた。
「そういう人も必要だから選ばれたんじゃないかな。たしかに被災のレベルで言えば低いかもしれない。でもだからできることってあるでしょ」、と。その時、彼は心の中のモヤモヤがゆっくりと溶けていくのを感じたという。

小さな実績を積み重ねた先に

プロジェクトのメンバーが集まったHABATAKI研修のひとコマ。中学生、高校生もいるメンバーにあって大学生の白井はお兄さん的存在でもある。周囲を動かすためには、まず自分が動くこと、できることをどんどんやっていくことを自身に命じているという。

プロジェクトのメンバーが集まったHABATAKI研修のひとコマ。中学生、高校生もいるメンバーにあって大学生の白井はお兄さん的存在でもある。周囲を動かすためには、まず自分が動くこと、できることをどんどんやっていくことを自身に命じているという。

 高校卒業後、1年間の浪人時代は受験に集中するためSOKの活動とは距離を置いていたが、2014年、東北大学経済学部に合格。しばらくして白井は東京で行われたあるイベントに誘われ、そこで動き始めていたHPのメンバーと出会う。
 最初は「新参の自分が出しゃばるのは良くない」と発言を控えていたが、話し合いが進むに連れ、白井は「どれも面白い計画だけれど、誰が引っ張っていくのかが明確ではないし、皆がただ思いつくままに意見を言っていて、理念が共有されていない」ように感じ始める。さりげなくそれをメンバーに伝えると、その夜のLINEでのやり取りで「モーリー(白井の愛称)が言う通り」、「モーリーがリーダーになってもらえないかな?」という流れができ上がる。中高生のメンバーにとっては、大学生の白井は“オトナ”であり、頼りがいのある存在に映ったのだろう。そんなひょんなきっかけで白井は、皆からの推薦を受けプロジェクトリーダーに就任することになった。
 とはいえ最初は手探り。特に各プロジェクトのリーダーに対する遠慮から、個別の案件に突っ込んだ意見を言うことにためらいもあった。だがプロジェクトはなかなか前に進まない。そこで白井は「プロジェクトの枠を超え、できる人間がどんどんアクションを起こそう」と積極的な仲間を中心に自らが動き、リーダーシップを取ることを決める。
「HABATAKI村なんてすごい大きな構想で、普通に考えたら無理って思いますよね。でもひとつひとつ、小さなことでも実際に行動して、実績を積み上げていくことで、何か道が見えてくるって思うんです」
 そう話す白井に「昔の自分ならこのリーダーやっていた?」と聞くと。彼はこう答える。
「絶対にやっていないでしょうね。ただ今は違います。被災も知っていて『今、動ける僕にできることをやる』というのがSOKを支援してくれる人たちへ、僕ができる恩返しだと思っていますから」
 そんな彼の将来の夢は「自らの手で起業すること」だ。(文中敬称略)


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文・写真|佐藤久

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