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地域力を生み出す仕事のメソッド  デザインの力で地域に新たな魅力・活力を生み出す[第3回]

地域力を生み出す仕事のメソッド デザインの力で地域に新たな魅力・活力を生み出す[第3回]

地域にあった技術、地方に残っている産業を、現代の商流に合わせビジネスを生み出す地域産業が盛んだ。
地域に根ざしながら自社の強みを生かし、新しいビジネスを生み出す秘訣はどこから湧き出るのか?
いくつかの例をふまえながらそのヒントを探っていく。

01|自分たちの特技を極限まで生かす

空気以外何でも削れる、
加工のコンビニを目指す匠の集団

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 日本のモノづくりを支える中小の製造業。日々凌ぎを削りながらも、持てる技術を誇りに企業活動を続けている。そんな製造業の中には何度もピンチに陥りながら、それでも諦めずに活動している企業は少なくない。
 その一つに、「空気以外なら何でも削れる」をコンセプトに、加工のコンビニを目指す株式会社中村製作所がある。金属をレーザー加工で削る技術を得意とし、匠の技術を持ったスタッフを抱える日本の製造業を陰で支えて来た老舗企業である。現在社長を務める山添卓也氏は、24歳で社長に就任しさまざまな改革を行ってきた。
 そんな中村製作所にも山添氏が社長就任当初には何度か危機が訪れた。同時多発テロやリーマンショック、為替の影響などで一時は売上げが前年の10%を割るという非常事態を半年も経験した。そんなピンチの際、先代の意志を継ぎ次世代を担う若き社長・山添氏の下、従業員全員が一丸となって、その逆境を何度も跳ね返してきた。それは、常に改善とチャレンジを行うという日本の企業スタイルそのもので、2014年度は過去最高の売上げを残し、2015年度は次のステージを目指しているという。

SAMURA-IN 手書き文字でオリジナルの印面が作成できる印鑑。素材は金属アレルギーなどが起きづらく、抗菌・殺菌効果があるチタンを使用。耐久性に優れ、摩耗・欠け・錆びなどにも強い優れもの。金属の独特な臭いや嫌な触感もなく長年の使用にも安心して使える逸品。認印は31,320円から

SAMURA-IN
手書き文字でオリジナルの印面が作成できる印鑑。素材は金属アレルギーなどが起きづらく、抗菌・殺菌効果があるチタンを使用。耐久性に優れ、摩耗・欠け・錆びなどにも強い優れもの。金属の独特な臭いや嫌な触感もなく長年の使用にも安心して使える逸品。認印は31,320円から

 そのステージとは、自分たちの強みを極限まで生かし、削る行為自体をデザインするオリジナル商品の企画販売で、自社商品の販売を事業として展開することを目指している。
 その商品の第一弾は、自筆の名前をチタンに掘り起こす世界で一つのハンコ「SAMURA-IN(サムライン)」だ。その人ならではの文字の形を得意分野の「削る」を生かした商品で、一つ一つ違う形を削りだし「印を押す」という行為自体をデザインした。さまざまな勝負所で役に立つ工場直結ならではの丁寧なモノづくりにより生まれた、たった一つだけの想いが込もった印鑑だ。
 自分たちにできることを常に考え、それを実践する。当たり前のことだが、目の前の仕事に追われることなく新しいことにチャレンジするのは、できそうで意外に難しい。それを実践できるのは、自分たちの技術に絶対的な自信があるからに違いない。

method_3株式会社中村製作所
時代のニーズにマッチしたモノづくりを心がけ、古き良き加工技術の伝承を続ける金属加工企業。「空気以外なんでも削る」というチャレンジ精神で、工作機械部品加工や産業用モーター部品加工、各種精密部品加工などを行っている。また、地元のサッカーチームをサポートし、選手を正社員で雇用するなど地域に治する活動もさまざま行っている。
三重県四日市市広永町1245
TEL 059-364-9311 
samurain.jp

02|デザインで街まで活性化

事業領域を決めない戦略

「感謝米」「寿米」 株式会社新潟ケンベイが運営するお米の通販サイト「いなほんぽ」(niigata-rice.com)から、ギフト・贈答品に特化したお米のギフトシリーズ。新潟産のコシヒカリを真空パックにして届けてくれる。「感謝米」新潟産コシヒカリ(1合450円/2合700円)、「寿米」魚沼産コシヒカリ(1合550円/2合800円)

「感謝米」「寿米」
株式会社新潟ケンベイが運営するお米の通販サイト「いなほんぽ」(niigata-rice.com)から、ギフト・贈答品に特化したお米のギフトシリーズ。新潟産のコシヒカリを真空パックにして届けてくれる。「感謝米」新潟産コシヒカリ(1合450円/2合700円)、「寿米」魚沼産コシヒカリ(1合550円/2合800円)

 新潟市にクリエイターたちの手によって再生した商店街がある。「上古町商店街」と呼ばれている商店街だ。商店街の衰退より一時はよくある裏さびれたシャッター商店街だったが、現在は店舗出店も増え、以前とは見違える通りに変貌した。その再生の物語は「ヒッコリースリートラベラーズ」という3人のクリエイターから始まった。
 彼らはクリエイターという立場になるのかもしれないが、よくあるクリエイター像とは少し異なっている。ポスターやカタログのデザイン、商品パッケージなどのデザインも行うが、ショップのオーナーでもあり、なんと商店街組合の理事も務めている、まさにマルチワークのチームだといえる。他にも、彼らがユニークなところは、自分たちの仕事の領域を限定せず、できることは楽しんで組み立てていき、周りをいい意味で巻き込んで行くところだ。商店街のロゴやマップの製作、フリーペーパーのデザインはもとより、イベントの企画やオリジナルグッズの販売までも自分たちで手がける。自分たちの仕事ではないと事業領域を決めず、楽しむために色々な活動をしている点が彼らの魅力なのだろう。そんな活動により、徐々に彼らが展開するショップやギャラリーに人が集まり始め、それと同時に商店街にも活気が戻ってきた。
 そんな彼らが最近提案するのが、新潟を代表する「お米」のギフト。今までお米はなぜか地域の名前がつくのが当たり前となっていたが、地域の場所ではなく誰かにプレゼントしたくなるようなお米の新しい提案をするネーミングのデザインを行った。それが「感謝米」「寿米」「超助かる米」などだ。しかも、ネーミングコンテストも開催し、グラフィックデザインに留まらず、さまざまな仕掛けを生んでいる。自分たちの立ち位置を敢えて明確にせず、できることを少しずつ増やすことで楽しさが倍になり、そして人が集う。このいい循環が、これからの新潟市をきっと面白くしてくれることだろう。
「やれることには常にチャレンジする」彼らの姿勢が人々を魅了してやまない。なんと今年はミュージアムショップも始めるそうだ。

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method_6hickory03travelers(ヒッコリースリートラベラーズ)
「日常を楽しもう」というコンセプトにもとづいて、さまざまなモノやコトをクリエイトする集団。懐かしい雰囲気が漂う上古町商店街に店舗と作業場を構え、Tシャツや雑貨などを中心にデザイン・制作している。ショップは築80年の木造2階建(元酒屋)を活用した空間で1階と2階ではまったく異なった表情を持つ。
新潟市中央区古町通3番町556
TEL 025-228-5739 
www.h03tr.com


文|五十嵐 洋(Casokdo)

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