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~in their own way 彼らの選択~「『夢』と『ビジネス』をつなぐもの」グリーンロードモータース株式会社 代表取締役社長 小間裕康

~in their own way 彼らの選択~「『夢』と『ビジネス』をつなぐもの」グリーンロードモータース株式会社 代表取締役社長 小間裕康

京都のベンチャー企業グリーンロードモータース(GLM)が今年4月、電気自動車トミーカイラZZ EVモデルの予約受付を開始した。代表を務める小間裕康は自動車産業はおろかメーカー出身でもない。そんな彼らがなぜ車をつくれるのか。その疑問こそ21世紀のモノづくり、その変革を探るヒントになる。(本誌10ページに関連記事)

 GLMが予約受付を開始したトミーカイラZZ EVモデルは言うまでもなく電気自動車。ただしオープンツーシーターの車には屋根もなく、ラジオやエアコンなどは装備されていない。そこにあるのは安全性能と走りのバランスを極限まで追求した純粋なまでのEVスポーツカー性能だ。
 社長の小間裕康は自分たちのことを「ピュアスポーツカー・カンパニー」と呼ぶ。ミニバンでもセダンでも、あるいは自動車という広いカテゴリーでもなく「自分たちが創るのはあくまでもポーツカー」という思いがそこに込められている。
 もちろん市場は狭く、顧客層も限定される。だが小間は「だからベンチャーが参入する意味がある」と考える。
 普通に考えれば小型車などのマーケットの方が圧倒的に大きい。しかしそこにベンチャーが参入したとしてもコスト競争力で大企業相手に勝機は見出しにくい。だがピュアスポーツカーと捉えたならばどうだ。大量生産しないことでの希少性、そこからくる高級感、その価値を共有してくれる限られたマーケット。一見するとデメリットなファクトが視点をずらすことでベンチャーが参入すべき、いやベンチャーにしかできないビジネスの解へと変わってくるではないか。
 GLMのビジネスモデルは完全な水平分業体制だ。バッテリー、モーターなどの要素技術はGSユアサ、ニチコンなど京都メーカーが担い、GLMはプラットフォーム(車台)開発に特化する。さらに部品を車台部分と、ボディカウルに分けて製造。車台単独で剛性・強度等すべての性能を完結させ自走することを目指した。ちょうどF1カーをイメージすると分かりやすい。GLMはこのスタイルを「KYOTO生産方式」と呼ぶ。
 狭いが明確なターゲットの設定、メーカーやエンジニアがベンチャーに協力する意味はそこにある。最大公約数をねらうならGLMである必然性はない。オープンイノベーションの時代、ベンチャーがいかに他者(者)を巻き込みビジネスをドライブさせていけるかは、独自のポジショニングを明確にし、そこにいかに共感してもらえる関係性を築けるかだ。

この世に一台しかないクルマも

「ワクワクするものを創りたい」と小間は言う。年を重ね冷静さを装う術を身につけると、人はいつしかそんな思いを心の底に押し隠そうとする。特にシビアなビジネスの世界ならなおのことだ。
 もしかしたらベンチャーを支えるのは「志」かもしれない。精神論かと否定されるなら「志」を「コンセプト」と置き換えよう。たとえば「ベンチャーでスポーツカーをつくる」と言った時、多くの人の反応はおそらくこんな感じだろう「面白い。けれど夢のよう」。
 その「面白い」けれど「夢」であるものをビジネスへとつなぐ(もちろん無謀な賭けとは一線を画して)のがコンセプトであり、それを強く支えるのが小間の言う「ワクワク」にあたるものではないか。
 実はトミーカイラZZ EVモデルの開発は、車単にとどまらない、思わぬ宝を生んだ。GLMの車台はそれ自身が公道走行可能。理論上はどのような外装も装着できる。そのことに注目した内外の企業から「車台のみを融通してくれないか」という多数の引き合いが寄せられたのだ。
 GLMのサイトにはこんな一文がある「私たちのプラットフォームを使えば、エンジニア以外の人でもPC上で車をデザインし、わずかな単位でも製造を発注できます。つまり、あなたの作ったデザインで明日から自動車会社が始められるのです」
 小間の周りで今、何かが確実に動き出している。(文中敬称略)

デザインのベースは京都の伝説のスポーツカー「トミーカイラ」。EV化にあたっては当時のデザイナー陣自らがモディファイにあたった。0-100km到達までわずか3.9秒という抜群の加速性能を誇る。車両本体価は800万円(税別)。同社ウェブサイトなどで予約を受け付けている(年間99台の限定生産)。

デザインのベースは京都の伝説のスポーツカー「トミーカイラ」。EV化にあたっては当時のデザイナー陣自らがモディファイにあたった。0-100km到達までわずか3.9秒という抜群の加速性能を誇る。車両本体価は800万円(税別)。同社ウェブサイトなどで予約を受け付けている(年間99台の限定生産)。


小間裕康
1977年神戸生まれ。大学在学中に人材派遣会社「コマエンタープライズ」を起業。年商20億円に成長させる。京大経営管理大学院修士課程在学中に「京都電気自動車プロジェクト」に関わり、それを母体に2010年グリーンロードモータースを設立。出資者には元ソニー会長の出井伸之氏、X JAPANのYOSHIKI氏らが名を連ねる。

文・写真|佐藤久

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