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実践サバイバル投資術 原発ゆでガエル日本を襲う狂乱物価に備える方法

実践サバイバル投資術 原発ゆでガエル日本を襲う狂乱物価に備える方法

 原発が一つもない東京の知事選挙で原発推進の是非を争う動きがあった。確かに東京は電力の大消費地ではあるが、できることといったら電力料金への特別課税で電力消費を抑えることぐらいしか無い。それでも、アベノミクスを潰す材料にしたい左派メディア、日本の原子力産業から技術者を安く引き抜きたい隣国の影響下にある一派、日本に原子力発電を諦められたら困る米国、無資源国の日本に原発は不可欠と考えるグループ、再生可能エネルギーが軌道に乗るまでの国富流出を避けようとする動き、と様々な思惑がぶつかった都知事選となった。結果は玉虫色与党候補者の勝利となったが、この先もプロ市民や左寄りのメディアを中心に原発稼動への反対は根強いものがありそうだ。そうなると、政治が何も決められないまま日本経済は“ゆでガエル”となる可能性が高いとみている。

原発停止で
30年前の狂乱物価再現?

 1973年と1979年の2回の石油危機はもう40年も前の話になる。それまで安い石油に安住していた日本を含む先進工業国は突然の原油高騰で急激なインフレが進み、あまりの上昇に“狂乱物価”ともいわれた。個人的には、お小遣いを抱えて近所の駄菓子屋に行ったら、定番商品の「クッピーラムネ」が突然5円から10円と倍額になったことや、スーパーからトイレットペーパーが消えたことなどよく覚えている。その教訓から、石油依存を減らすため日本は省エネルギー化と原子力発電に邁進してきた。ところが、2011年の東日本大震災で、日本の発電の3割を担っていた54基もの原発をすべて停止する事態となってしまった。その結果が貿易赤字の急拡大である(表)。

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 貿易赤字の原因をなぜか国内メディアははっきりと書きたがらないが、明らかに鉱物性燃料、つまり原油や液化天然ガス(LNG)の輸入急増である。2013年の鉱物性燃料の輸入額は、27兆円と総輸入額の34%にも上った。製品輸出や観光、外国への投資で稼いだお金を、電気を使うために産油国にせっせと支払っている構図だ。
 貿易収支が赤字でも、欧米のように観光客がたくさん来るとか、金融業で儲けられるなら問題にはならない。為替相場に大きな影響を与えるのは、モノの貿易の結果である貿易収支にサービス収支を加え、それに海外からの投資の成果(所得収支)や経済援助など(経常移転収支)を加えた経常収支だからだ。経常収支が赤字になると、外国との決済に必要なお金を海外資産の売却や外国からの資金調達などでやりくりしなければならなくなる。ちなみに現在通貨暴落で苦境に立たされている“フラジャイル・ファイブ(脆弱な5カ国)”といわれるインド、ブラジル、インドネシア、南アフリカ、トルコは全て大幅な経常赤字国である。
 日本の現状は2013年の経常収支こそ外国での稼ぎ(所得収支)でなんとか黒字になったものの、近年の経常黒字減少ペースは凄まじい。従来から高齢化の進展による経済構造の変化から、いずれ日本も経常赤字に転落すると予想されていた。しかし、原発停止が続けばあと数年しか猶予はないだろう。
 悪いことに、原油価格は急騰しやすい状況にある。米国は自国のシェールガス開発の成功で日本の生命線とも言える中東への興味を失っている。おまけに、中東からの航路である南シナ海では中国がほぼ全域の領有権を主張しているので、尖閣諸島を巡って対立する日本にとっては航海の自由さえも雲行きが怪しい。一方で、中国やインドでの自動車利用台数は増え続け、家電製品の普及で電気の使用量もウナギのぼりだ。中国と韓国は原発増設に余念が無いが、保守・運用が怪しいので大事故となる可能性が極めて高い。仮にそうなったら、世界中で反原発の動きが広がり、原油とLNG消費は急増する。諸々の状況を見ると、次の石油危機はすぐそこまで来ているといえる。
 石油危機に日本の経常赤字国転落を嫌気した“悪い円安”が加われば、鉱物性燃料の輸入代金はさらに増加して40兆-50兆円にもなり、「経常赤字20兆円!」も笑い話ではない。そうなると、電力料金は30%~40%も跳ね上がり、30年前の“狂乱物価”と同様に日用品の買い占めや便乗値上げが相次ぎ、たちの悪いインフレが“どうにもとまらない” 1970年代の再来となる。


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土居雅紹(どい まさつぐ)
eワラント証券株式会社COO。CFA協会認定証券アナリスト、証券アナリスト協会検定会員。1964年静岡県生。88年一橋大学卒業後、大和証券入社。証券アナリストとして活躍。93年米国ノースカロライナ大学経営学大学院にてMBA取得。大蔵省財政金融研究所などを経て、ゴールドマン・サックス証券へ。00年同社でeワラントを開発・導入。11年8月より現職。時代に合った投資方法を研究、その分析力には定評がある。

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