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もうひとつのIPS~Another IPS(Indoor Positioning System)

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もうひとつのIPS~Another IPS(Indoor Positioning System)

屋内位置測位技術は千差万別

 屋内位置測位を行う技術は多様だ。まだ特定の技術に収斂されているわけではない。インパクトがあるのはGPSと似た技術を利用する、日本発であるIMES (Indoor MEssaging System)だ。GPS用に開発されたチップやソフトウェアが少々の改修で使えるため期待は大きい。世界で利用できるように日本発でインタフェースを整えつつあるので近い将来の本命だ。ただ、デバイスコストの問題と、誰もがすぐに使えるほど汎用化されていないのが弱みである。比較的普及しているのが、無線LANのアクセスポイントを用いた屋内位置の推測方式だ。安価ではあるが、位置精度が心もとないのと電波干渉の点が解消されにくいという課題がある音による位置特定の方法もある。人には聞こえにくい音波信号を用いてその場所を捕捉する。スマートフォンの既存機能で実現する強みがあるが、音を拾うためにアプリを常時立ち上げておく手間がかかる。
 位置精度重視の場合、期待が持てるのが微弱電波を発する位置タグだ。コインサイズのタグに位置情報を埋め込み、数か月の間、電池で稼働させる。近距離無線通信規格であるブルートゥースに対応したチップが安価になり、関連技術が汎用化されてきた。位置タグを屋内に数十メートルごとに配置することで10cm単位で位置を把握することができるため、現実解の一つだろう。

上手に傍受の絵を描け

 気をつけるべきは情報セキュリティである。屋外以上に屋内の位置情報は個人にとってセンシティブだ。GPSによる屋外での位置情報も確かに脅威である。ただ、GPSの電波は空(宇宙)から降ってくるので、一方向の情報だ。GPS利用で自身の位置情報が捕捉できてもGPS衛星(および運用している米国)側が個人の位置情報を把握しているわけではない(通信領域の携帯キャリア側で把握しているケースはあるが……)。他方、屋内位置測位は基本的にインタラクティブ通信で、施設側にも位置情報が把握される。誰もが「位置傍受」をされる可能性があるだけに、技術的な標準化とともに、不正利用がないか監視する仕組み・制度づくりが求められる。
 最近、米欧中露において傍受事件の余波がかしましい。元CIA職員の米国家安全保障局(NSA)の監視活動を暴露した件で、傍受と言えば言葉は少し柔らかいが、IP通信ネットワークに深く入り込んだ「傍受」は誰もが日常的に利用している通信環境だけに気持ちの良いものではないだろう。今回のケースではマイクロソフトやグーグル、フェイスブックといったよく知られた企業名が出てきた。いずれの企業も政府への関与は否定しているが、直接的なサーバアクセスを許さなくても、通信網の根幹を押さえることで情報を拾い上げるということはインテリジェンスの世界では従前より行われている。通信設備の世界シェアでトップを競っている中国企業である華為技術(ファウェイテクノロジーズ)が米国市場に参入できないのも米国の安全保障上の理由だからだが、裏を返せばそれだけ傍受が日常的であるという証左でもある。テロや金融犯罪の脅威と戦う国々なので傍受そのものを否定することは難しいだろう。日本でもIP通信におけるなんらかの策は求められつつある。
 特に日本はクラウド・コンピューティングに纏わるビジネス・サービスの主導権をほぼ米国に握られている。すなわち、情報も握られている。ここからの形勢逆転は厳しいだろう。ただ、位置情報、特に屋内位置情報に関しては、まだ日本主導のプラットフォーム化の余地は残されている。
 さて、幸か不幸か、日本の都市圏は高密度である。また国民性なのか他国と比べると建物の形状がわかる縮尺まで地図を詳細かつ広範に整備している。2020年の東京オリンピックの売り文句のひとつは「コンパクト」である。このタイミングで高密度の屋内位置測位技術を日本中に整備していけば、オリンピックの屋内競技をさらに楽しめるであろうし、初めての日本観光旅行でも屋内は存分に羽を伸ばすことができるだろう。コンパクトな日本だからできること、まだまだありそうだ。


文|本丸達也(発行人)

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