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有機野菜+都会の友人知人+サービス業= 持続可能な直販農家

有機野菜+都会の友人知人+サービス業= 持続可能な直販農家

 就農5年目にして年間売上950万円に達している直販農家がある。軽井沢から40キロほど南に下る長野県南佐久郡佐久穂町にある「GoldenGreen」だ。年間60品目の有機野菜を、主に東京の個人宅向けに販売している。定期的な販売先は現在210件を超えており、キャンセル待ちが続く。顧客の9割はリピーターだ。
「売上が1000万円を超えると消費税を払わなくちゃいけないし、仕事がこれ以上忙しくなるのも嫌です。お客さんが飽きないように年間で2、3品目は新しい野菜を作るようにしていますが、規模を拡大するつもりはありません」
 高気密高断熱の快適な自宅でくつろぎながら余裕の表情を浮かべるのは「GoldenGreen」代表の在賀耕平さん(38)。妻の季代さん(33)も隣で控えめに同意する。在賀夫婦2人とパートタイマー1人の新規小規模農家がなぜ成功しているのだろうか。攻めと守りの2つの側面から見ていきたい。
 
 まずは攻め。顧客を獲得し、リピーターを確保する方法論だ。農家に転じる前は東京のITベンチャーでコンサルタントをしていた耕平さんは論理的思考の持ち主。就農するにあたって真っ先に考えたのは、暮らしや農法の理想などではなく「夫婦がちゃんと食っていけること」だった。
「会社を辞めて直販農家になると決めたとき、同僚たちが将来のお客さんに見えてきました。プライベートの連絡先も聞き出し、積極的に営業しましたよ」
 33歳で就農するまでは農業と縁のない生活をしてきた耕平さんの周辺には、「実家が農家なので野菜はあり余っている」ような人は皆無。チャンスだ。30歳前後で結婚や子育てを始める人が多くなっており、新鮮で安全な野菜を確保することに関心を示してくれた。顧客を見つけやすい環境にあったと言える。
 一方の季代さんは、都内の人気ダイニングバーで雇われ店長をしていた。食材への感度の高い常連客や仲の良い同業者(レストラン経営者など)が顧客に見込める。
 在賀夫婦はお互いの人間関係をエクセルファイルに書き出し、営業活動の「読み表」を作った。両親や親戚など野菜を必ず買ってくれる人はA、たぶん買ってくれる人はB、買ってくれるかもしれない人はCである。
 厳しめに予測した初年度の売上高は400万円。ふたを開けてみると510万円であった。顧客は120件に達した。「野菜の出来はぼちぼちだったけれど、営業は上出来でした」と耕平さんは笑いながら当時を振り返る。
 尊敬できる直販農家の下で1年間集中して農業を学び、現在も農法を科学的に改善し続けているGoldenGreen。その野菜は目が覚めるほど力強くて美味だ。しかし、冷静で皮肉屋の耕平さんは「日本一の野菜では決してない」と言い切る。
「単においしい有機野菜なら世の中にたくさんあります。顧客との接点を強めなければ大手との差別化はできません」
 モノからコトへ、物語性のあるサービスを展開せよ、生産者の顔が見える商品開発をしろ――。近年、「顧客接点の強化」が業界を問わずに叫ばれている。商品の高品質と低価格はもはや当たり前となり、生産者と消費者の情緒的なつながりが重視される時代だ。顧客の大半が「家族や友人、元同僚。およびその紹介」であるGoldenGreenは、接点はもともと広くて深い。


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在賀耕平(ありがこうへい)

1975年生まれ。慶應義塾大学卒。人材ビジネスのベンチャー企業およびソフトウェア関連のベンチャー企業を経て、2009年3月に直販農家「GoldenGreen」を開業。
農業を選んだ理由は、「20年後に最も食っていける職業だと思ったから」

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