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プレパラート 始まる就職活動、若者の働き方の価値観は?

プレパラート 始まる就職活動、若者の働き方の価値観は?

転職志向の弱まり、終身雇用意識の強まり

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 若者の安定志向は企業の選び方だけでなく働き方にもあらわれている。今の若者は転職志向が弱まり、終身雇用意識が強まっている。
 新入社員に転職についての考えをたずねた推移をみると、以前は「きっかけ、チャンスがあれば転職してもよい」が「今の会社に一生勤めようと思っている」を大きく上回っていたが、2005年頃に逆転し、後者が過半数を占めるようになっている(図3)。
 また、新入社員に定年まで働き続けたいかどうかをたずねた推移をみると、以前は「状況次第でかわる」が「定年まで働きたい」を大きく上回っていたが、2000年頃から後者が増え、2012年には両者は同程度になっているvi
 このように入社した会社に固執するようになった背景には、やはり厳しい環境の中、就職活動に多大な労力をかけていることがあるようだ。
 就職活動で大学生がエントリーする会社数は平均93.1社、そのうちエントリーシートを提出する会社数は平均24.4社、通過して筆記・Web試験を受験する会社数は平均15.8社、面接試験を受験する会社数は平均11.0社、そして、10月1日時点の内定社数は平均2.0社であるvii。つまり、内定率はエントリー社数に対して2.1%、エントリーシート提出社数に対して8.2%となっている。
 苦労の末にやっと入れた会社なのだから、そのまま働き続けたいという思いが、転職志向の弱まりや終身雇用意識の強まりにつながっているのだろう。

飲みニュケーション優先、でもコスパ重視

 終身雇用意識の強まりは職場でのコミュニケーションのとり方にもあらわれている。
 新入社員がビジネス上の有益情報を入手した時の考え方を二択でたずねた結果の推移をみると、「上司・先輩とはいえライバルなので必要に応じて情報提供するかどうかを決める」の選択割合が低下し、「上司・先輩に積極的に情報提供する」が上昇している(2013年:79.8%)ⅴ。また、担当したい仕事については、「自分の個人的な努力が直接成果に結びつく仕事」が低下し、「職場の先輩や他の部門とチームを組んで、成果を分かち合える仕事」が上昇している(2013年:84.8%)。
 この様子は職場の飲み会への参加状況にもあらわれている。新入社員に職場の飲み会と友人との先約のどちらを優先するかをたずねた推移をみると、「職場の飲み会」が上昇している(2013年:64.3%)。今の若者はプライベートより職場の飲みニュケーションを重視するようになっており、この傾向は男性より女性の方が強くなっている(2013年:男性64.3%、女性69.3%)。
 とはいえ、昔ながらの飲みニュケーションを求めているわけではないようだ。
 20~30代のビジネスパーソンを対象にした会社の飲み会に関する調査結果をみると、「あまり長居せず帰りたい」(58.0%)や「ダラダラ飲み続けるのは格好悪いと思う」(48.0%)が半数前後を占めておりviii、朝まで上司につき合って飲むといったスタイルはあまり好まれないようだ。また、「飲み代はできるだけ安く済ませたい」(86.4%)と「安いからといっておいしくないお酒はいやだ」(83.7%)が8割を超えて高く、価格と質の両面を求めるという特徴もある。このようなコストパフォーマンス意識の高さが、価格だけでなく時間や労力といったコストにもつながり、「長居したくない」「ダラダラ飲み続けたくない」という考え方につながるのかもしれない。今の若者と上手く飲みニュケーションをするには、おいしい店で短時間で終わらせる必要がありそうだ。

「保守的」「内向き」は社会環境の影響

 以上、見てきたように、今の若者の働き方の価値観の根底には個人意識がある。しかし、企業選びには安定志向や国内志向がみられ、終身雇用意識は強まっている。中高年世代は、このような保守的な若者の様子に物足りなさを感じ、批判することも多い。日本の将来を背負う若い世代にもっとチャレンジ精神やグローバル精神を期待したいということだろう。しかし、若者が保守的な志向を持つようになった背景には、やはり日本経済の低迷がある。若者の価値観や志向には中高年世代が牽引してきた社会環境が大きな影響を与えている。若者にチャレンジ精神やグローバル精神を求めるのであれば、まず、社会を牽引している世代自身が、若者が将来に夢を持てるような社会を創っていく必要があるだろう。そういった姿を見せることで、保守的になりがちな若者の志向にも変化があらわれるのではないだろうか。


kuga久我 尚子(くが・なおこ)
株式会社NTTドコモを経てニッセイ基礎研究所入社。生活研究部門研究員。専門は消費者行動、心理統計学、金融マーケティング。早稲田大学大学院(工学)・東京工業大学大学院(MOT:技術経営、学術)修士課程修了。東京工業大学大学院博士課程在籍(学術)。

i 公益財団法人日本生産性本部「新入社員 働くことの意識調査」
iii内閣府「平成19年版 国民生活白書」
iv日本経済新聞 第二部「日経就職Navi2013年 新卒広告特集~生損保など金融 上位に」(2013/2/27)
v 就職人気ランキングとして2013年発表のダイヤモンド社「ダイヤモンド就活ナビ人気企業ランキング」、株式会社マイナビ「マイナビ大学生就職企業人気ランキング」、株式会社学情「学情ナビ就職人気企業ランキング」、株式会社文化放送パートナーズ「就職ブランドランキング」、楽天株式会社「楽天みんなの就職活動日記2014年度卒新卒就職人気企業ランキング」、2010年発表のリクナビ「就職人気ランキング」を確認。上位10位までにあらわれた外資系企業はP&G Japan株式会社1社のみ。
vi公益財団法人日本生産性本部「2013年度 新入社員 春の意識調査」
vii株式会社ディスコ「2014年度 日経就職ナビ 学生モニター調査結果(2013年7月発行)」
viii 株式会社ネオマーケティング「今どき“会社飲み”実態調査」

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