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イマドキ女子の恋するマーケティング論×KIRIN

ジョシノベーション2013 ~キリンビール「一番搾り フローズン<生>」開発者 田代美帆さんに聞く~

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「カンパーイ!2013年もオツ~!」と、少し早めの女子忘年会にて、彼女たちが重ねたグラスの上でポヨヨ~ンと愛らしく揺れるソフトクリームのような泡。ご存知、今やキリンビールの主力商品のひとつとなった「一番搾り フローズン<生>」だ。ビール革命とも言うべき全くもって新感覚の本品、実はジョシセン(「女視線」=女子の視線)から誕生したことをご存知だろうか。今回は、「おいしさを笑顔に」のスローガンでお馴染みのキリンビール株式会社にスポットをあて、「フローズン<生>」の開発者であるマーケティング部の田代美帆さん(29)とともに、今ドキ女子のマーケティング術をお届けしよう。

ビールの若返り

 「プハー」から「シャリシャリ~」へ、ビール飲料時にまず口から漏れる擬音語すら変えてしまうほどの勢いでヒットを飛ばす「一番搾り フローズン<生>」。

「一番搾り フローズン<生>」

「一番搾り フローズン<生>」

 生ビールの上に乗るマイナス5℃に冷やされたフローズン状の泡が約30分間フタの役割を果たし、ビールの飲みごろの冷たさ持続する。実際に飲んでみると、爽快感はもちろん、氷の細かい粒からなるフローズン状の泡の冷たくスムーズな口当たりが心地よい。元来的なビールのイメージをいい意味で裏切る大胆さを備えた本品は、どのようにして産声を上げるに至ったのだろうか。
「近年のビール業界は、嗜好の多様化や新ジャンルの市場拡大によってビール需要が微減傾向にあり、中でも、20~30代の若い人たちのビール離れが目立っています。その理由を考えたときに、「ビール=おじさんが飲むもの」というイメージが強いためではないかと思ったんです。同じことはホットコーヒーにも言えるでしょう。昔ながらの喫茶店でお父さんが新聞を読みながら飲むイメージ(笑)。それをガラリと変えたのがスターバックスです。例えば、コーヒーをフローズンにしてみたり、各種トッピングでアレンジしたり……全く新しいスタイルを提案しました。結果、今では若い人たちの間で「コーヒー=おしゃれな飲み物」とイメージが定着していますよね。こうした革新的な新しい風をビール市場にも吹き込むべく、『生ビールの現代化』をテーマに、とりわけ若い人のライフスタイルに溶け込むような生ビールの新たな魅力や楽しさを提案したいと考えたことが、開発のきっかけです」

 商品開発を進めるなかで、最も有益なマーケティングデータは「自分の足でつかんだ情報」だったと振り返る。
「まずはチームで、時代の変化に伴い飲用スタイルが変化したのではないかという仮説を立て、会社のデスクでただ考えているだけではなくよりリアルな声に触れるため、大学生たちとの飲み会を開催しました。そこでビールの問題点について訊ねると、ある女の子が『ビールは嫌い』と言ったんです。聞けば、缶ビールを夏に外で飲んでいたとき、友達とのおしゃべりに夢中になるあまりビールがぬるくなり、そうなると当然美味しくはないので捨ててしまうケースがよくあると。それまで、私のまわりには短時間のうちにゴクゴクとビールを飲み干す人が多かったので、ビールがぬるい状態をあまり気にかけたことはありませんでした。早速、若い人たちがビール1杯を飲み干すのにどれくらいの時間をかけているのか調べてみたところ、なんと平均約20分!多くの若者が腰を据え、じっくり時間をかけてビールを飲んでいることがわかったんです。それならば、より冷たい状態を維持することができるよう、ビールをフローズン化しようと思い立ちました」
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 フローズン状の泡の生成に際しては、何種類もの試作品を作り比較検討した結果、ビールは-5℃のフローズン状の泡にすることで、飲み頃の温度を30分保つことができ、シャリシャリとした泡の新食感や爽快感も楽しめることがわかったという(図1)。
「開発は2010年秋からスタートしました。本品のウリである、きめ細かい-5℃のシャリシャリとした泡を安定的に生成することに最も苦労しましたね」
 およそ1年間に亘る試行錯誤の末、「冷凍攪拌技術(キリン独自の特許技術で、空気を巻き込みながら冷却と攪拌を繰り返し、冷たくきめ細やかな泡を生成する技術)」が生み出され、温度制御機能が搭載された「フローズン<生>サーバー」の開発に成功。その後、情報感度の高い人々が多く集まる東京・丸の内のダイニングから商品展開を始め、徐々に人気は広まっていった。


文|松永理佐(編集部)

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