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実践サバイバル投資術「極意4 相場と大きな船はゆっくり曲がる」

「車は急に止まれない」という標語があるが、相場も急には止まれない。いったん動き出すと勢いがつく。上がり出すと提灯(ちょうちん)買いと呼ばれる有象無象の投資家が我も我もと殺到する。そして相場が天井をつけるのはいつものとおり。ちょっと下げ始めると、面白い事に成金やインテリが多く引っかかって痛い目を見ることは前回説明した。そうなると、「じゃあ、下がりきったところで買えばいいじゃん。簡単だよね」と考えるのだが、そこにもう一つ大きな落とし穴がある。相場は大きな船のようなもので、慣性がつくとなかなか止まらないのだ。

大きな船はゆっくり曲がるが、
カエル投資家はニュースに跳びつく

 大きな船を遠くから見ると、方向を変えてもなかなか曲がり始めたことが分からない。船の慣性があって前に進みながら大きな弧を描いているからだ。かなり先に進んでようやく曲がり始めた事が見て取れる。相場も大きな経済全体が動くのだから、のっそりもっそり動くのは全く同じだ。
 巨大バブルが崩壊すると、最後に大きな市場ショック(クラッシュ)が来てクライマックスとなる。そうすると、まともな政府であればさまざまな対策を打ち出す。しかし、どんなに有効な対策であってもなかなか効果が相場に現れないことが多い。いや実は効果はすぐに出始めているのだが、相場の勢いがあるのでしばらくしてから相場は大底となる。ちょっとずつ方向を転換し、V字反転というよりもなべ底のようにU字型で「底練り」したり、ちょっと上がったと思ってもう一回下げる「二番底」となることが多いのはそういうわけだ。
 ちなみに、カエルは目の前にある動くモノを餌だと勘違いして抱きつくように跳びつくらしい。ニュースに跳びつく投資家の様はどこかカエルに似ている。

事例1:ITバブル崩壊から
日本の不良債権問題払拭まで

 まずは日本の事例を見てみよう。インターネット革命をはやしてバブルが起こったが、2000年をピークにIT株バブルは崩壊した。これにより、日本では1990年初めから続く不良債権問題が再び表面化した(図1)。
 2000年後半が、下がったけれども安いと勘違いしてしまうがインテリトラップの時期にあたる。投資家にとっては第1の鬼門だ。そこを潜り抜けて資金を温存できたとして、次の問題が大底のタイミングとなる。2002年3月で政府は空売り禁止策を打ち出した。日本株を借りてきて売り崩していたヘッジファンドの買い戻しで一時的に株価は戻したが、抜本的な解決策ではなかったので効果は長続きしなかった。
 2002年10月に不良債権問題の処理に関する政府の方針(いわゆる「竹中プラン」)が発表された。公的資金による銀行救済の方向性はここで決まっていたことになる。しかし、株価は下がり続けた。2003年3月にはりそな銀行が誕生し、同月三井住友銀行とわかしお銀行の逆さ合併(存続会社はわかしお銀行)という奇策まで飛び出している。
 それでも株価はフラフラと下がり、4月末のソニーの期待を大きく下回った決算発表で株価は暴落(ソニーショック)し、ようやく悪材料出尽くしで底入れとなった。竹中プランの総仕上げともいえる5月のりそな銀行国有化時点では、すでに株式相場は上昇トレンドに入っていた。2002年10月時点で政府の方向性が決まっていても、株価の底入れは半年後なのである。図中の赤い点線が値動きのイメージを分かりやすくしたものだ。すぐに跳びついたカエル投資家は大変痛い目を見たことになる。


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土居雅紹(どい まさつぐ)土居雅紹(どい まさつぐ)
eワラント証券株式会社COO。CFA協会認定証券アナリスト、証券アナリスト協会検定会員。1964年静岡県生。88年一橋大学卒業後、大和証券入社。証券アナリストとして活躍。93年米国ノースカロライナ大学経営学大学院にてMBA取得。大蔵省財政金融研究所などを経て、ゴールドマン・サックス証券へ。00年同社でeワラントを開発・導入。11年8月より現職。時代に合った投資方法を研究、その分析力には定評がある。

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