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「変化し挑戦する」INAX、トイレで世界を変える

株式会社INAX 設備事業部 商品開発部 商品企画課 トイレ企画担当 中山裕司氏

ECO6が起こした、節水トイレ革新

――INAXの節水への取り組みはいつごろ、どのように始まったのでしょうか。

中山氏(以下N)当社の節水への取り組みの歴史は長く、研究開発の始まりは約30年前のことです。節水や環境への世間の関心がまだ薄かった時代に、あえてそのような開発を始めたのは、当社が85年から企業理念として掲げている「変化し挑戦する」というチャレンジ精神が以前からあったからかもしれません。研究により、16リットルの洗浄水量が主流だった当時に洗い落とし式で6リットルを可能にする技術が開発されました。それから20年、私たちは消費者の節水への関心の高まりにあわせ、サイホン式便器でも10リットル、8リットル、と段階的に節水商品を発売し、06年に6リットルの超節水ECO6シリーズを、 09年にECO5を発表し、業界に一つの革新を起こしました。

――どのような革新だったのでしょう。

N)考え方の面での革新です。それ以前は、水を使って汚物を1回にどれだけ流せるかということが重要視されていました。しかし、トイレは断続的に使われるものです。私たちは、少ない水量でも次に使う人の汚物で前の人の汚物が玉突きのように流すことができるのではないかと考えました。当時はそういった概念がなかったので、排水管の中の調査などはあまり厳密に行われていなかったのですが、私たちは色々な角度で実験を重ね、問題がないことを証明したんです。私は当時開発の現場にいたのですが、汚物を1カ月間排水管の中に放置しても問題はないのか、といった実験も実際行ったのですが、全く問題なく流れた時は、みんなでホッとしましたね(笑)。

――革新的といえば、INAXの無水小便器も興味深いのですが、この商品はどのように開発されたのでしょう。

N)無水小便器は、私たちが5年以上にわたって研究を重ねて実現した、自信をもって提供している商品です。アメリカのファルコン社製のカートリッジを使用 し、便器の形状、匂いや配管への対策などを私たちが手掛けました。しかし、日本市場では、やはり水を使わないことへの抵抗感が大きいようで、まだあまり浸透していません。コンセプトに共感はしていただけるのですが、実際に使ってみるところまでは、なかなか踏み出しにくいようです。

世界と日本、トイレへの意識の違い

――意識という面で、世界と比べて日本人のトイレの清潔さやこだわりの意識は特殊なように思えます。

N)そうですね。トイレに対する意識やそれに対応した技術の発展は、かなり特殊なものと言えるでしょう。シャワートイレには、そのことがよく現れていますね。日本ではシャワートイレの普及率は7割程度であり、もはや当たり前。シャワートイレにまつわる細かな機能も大変発展していますが、海外では根本的にその必要性を理解いただけていません。ようやく最近になって、欧米や、中国や韓国などの先進的な方々に、多少受け入れられてきたところです。実際に使った方はとても気に入ってくださるのですが。

――日本は水資源が豊富な国であり、私たちは日ごろ、水の大切さをあまり意識することなく暮らしています。しかし、世界中で多くの人が水資源の不足に苦しんでおり、今後地球温暖化が進めば、さらなる不足が予測されます。

N)現時点でも、たくさんの地域で水不足が問題となっており、そこでは、節水技術はもはや死活問題です。たしかに、日本の節水に対する意識はそれらの地域に比べ高くないかもしれません。「少ない水でしっかり流す」ことは、日本人にとっては大したことではないように感じるかもしれませんが、それこそが、メーカーとしての私たちが常に取り組むべき、重要なポイントといえます。

海外市場での強みと課題

――海外市場では、このような節水技術はより必要とされているのではないかと思いますが、海外への進出については、どのようにお考えですか?

N)実は、現在の節水トイレのグローバルスタンダードは6リットル洗浄。最先端のもので3.8リットルまで節水は進んでいます。しかし、蓋を開けてみると、流しても1回できちんと流れず、結果的に節水になっていないものが多くあるんです。私たちは、世界の中でもずば抜けた品質を持っていると思っていま す。品質というのは、簡単に壊れない、汚物がちゃんと流れる、という基本的な2点です。私たちも、4リットルレベルの節水トイレは、技術的には実現可能です。しかし世界の競合他社と同じ品質レベルでいいのかというと、そうではないと思う。世界で認められている日本の品質を、きっちり強みにできるような商品を販売していきたいなと思うんです。

――反対に、海外市場での課題はどのようなところにありますか?

N)世界で広がっていくためには、お客様に受け入れられる金額も重要です。アジアでは、2~3年でモノが壊れても仕方がないという意識がありますが、私たちは10年使っても大丈夫という意気込みでモノをつくっており、そのような高品質の商品を提供しようと思うとどうしても価格が上がってしまう。価格の面をクリアするための技術革新も今後必要かもしれません。いくら良い商品でも売れなければ宝の持ち腐れになってしまいますから。一方で、アジアの文化レベルが上がり、機能や品質への意識も発展し始めている今こそ、私たちの強みを売り込むチャンスとも言えると思います。私たちは今年、中国やタイなどのトイレ市場で高いシェアを占めるアメリカン スタンダードのアジア・パシフィック部門を買収し、協力を始めました。アジアでまず地盤を固め、将来的には欧米も視野に入れた積極的な海外進出を考えてい ます。「さすが、海外の高級ホテルのトイレはINAXだね」、そう言っていただけるよう、がんばっていきたいですね。


株式会社 INAX(INAX Corporation)
設立: 1924年(大正13年) 2月1日
本社所在地: 愛知県常滑市鯉江本町 5-1
資本金: 485億円
従業員数: 15,861名(国内子会社13社、海外子会社7社含む、2009年3月31日現在)

text: 永野幸(アクビ・インタラクティブ)

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