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Addicted to Connected  スマートフォン元年の総括と展望


気がつけば巷にスマートフォンが溢れている。「直感的」というフレーズに何度も煮え湯を飲まされてきたアーリーアダプターが待望の良き伴侶を見つけた、それが2010年のスマートフォン元年だ。この冬は雨後の筍のように次から次へと新製品が顔を出している。日本と世界の携帯電話市場では何が起きているのか、今後の課題は何か。ビジネスパーソンが知っておくべき事項を、ソフトウェア開発者としての視点も含め、BUAISOがピックアップした。

あらためてスマートフォンとは

スマートフォン階層図

スマートフォン階層図(画像クリックで拡大表示)

 スマートフォンの厳密な定義は難しい。大雑把にくくれば、 1. 比較的オープンなOS(オペレーティングシステム、基本ソフトウェアとも呼ばれる)、2 . 比較的オープンなアプリ開発・配布・インストール環境、 3. 通話機能、中速・高速データ通信回線、4.フルブラウザ搭載、5. 高クロックCPU、タッチパネル、各種高機能センサー搭載のデバイス、あたりを列挙できる。ただ「ガラケー」とも呼ばれる日本の従来型携帯電話端末(フィーチャーフォン)は独自進化を遂げてきたので上記の大部分を満たし、十二分にスマートである。従来型端末と区別するため1.通話機能および中速・高速データ通信回線、2. OSがiOS、Android、Windows Mobile 、RIM/BlackBerry、Symbian(一部)のいずれか、3. タッチパネル搭載、と簡易的に覚えよう。

国内スマートフォン市場 月間売上台数の三分の一に

 日本国内におけるスマートフォン利用率は09年の4%から10年の9%へと大きく伸びた。(インプレス調べ 図表1)。また同社がスマートフォン利用者を対象に調査した使用機種ランキングでは、スマートフォン人気を一気に爆発させたiPhone4を含むiPhone3機種が上位にランクインするが、NTTドコモのXperiaが3位に、10位までにウィルコムやauなども姿を見せる(図表2)。

 最近の月間売上台数で見るとスマートフォンの勢いがより明らかだ。BCNの調査では10年11月の携帯電話全体の販売台数に占めるスマートフォンの比率は35.5%に達し、過去最大だった10月の33.1%を2.4ポイント上回った(図表3)。主要3キャリアの中ではauの伸びが目立つ。機種別では10年11月に発売されたauのIS03がトップとなった(図表4)。10月まで4カ月連続1位だったiPhone4(32G)は2位となり、同16Gモデルが続く。上位10機種のうち半数がスマートフォンを占めた。10年後半に各社がAndroid搭載端末のラインナップを拡充させ、11年のスマートフォン市場は激戦が予想される。

図表1 スマートフォンの利用状況

図表1 スマートフォンの利用状況(画像クリックで拡大表示)

図表2 スマートフォン使用機種ランキング

図表2 スマートフォン使用機種ランキング(画像クリックで拡大表示)

図表3 携帯電話全体に占めるスマートフォン比率

図表3 携帯電話全体の販売台数に占めるスマートフォンの比率 2010年10~11月 (画像クリックで拡大表示)

図表4 携帯電話月間販売台数ランキング2010年11月

図表4 携帯電話月間販売台数ランキング2010年11月 (画像クリックで拡大表示)

世界の携帯電話端末市場 スマートフォンは19.3%

 世界市場に目を移す。NTTドコモが今年春にもSIMフリー端末を発売し、通信キャリアと端末のつながりが疎になり、キャリアフリー、ボーダレス化への動きが本格化する。国内の通信キャリア、端末メーカーは世界規模の競争に勝ち残ることができるだろうか。
 米ガートナーの調査によると、10年第3四半期における世界の携帯電話販売台数は4億1700万台で前年同期と比べて35%増加した。そのうちスマートフォンは前年同期比で93%増加し、全体の19.3%を占めた。OSとしてAndroidとiOSを搭載した機種が市場を牽引した結果、スマートフォン市場におけるアップルのシェアが前回調査で上位だったBlackBerryを販売するRIM(カナダ)を凌いだ。またAndroidは世界第2のOSへと急伸した(図表5)。端末メーカーで見ると、上位3社はノキア、サムスン電子、LGと前回と同じ顔ぶれだが、アップルがRIMを凌いでTOP5入りを果たした(図表6)。またスマートフォン市場の急拡大に加えて、新興国における「ホワイトボックス製品」と呼ばれる3G機能未搭載の安価な端末の売上拡大が、全体の売上台数を押し上げている。成長を遂げた中国を出て、インド、ロシア、アフリカ、ラテンアメリカに市場が広がり、依然として需要が強い。5年後10年後の経済成長後には高機能携帯端末が普及するエリアになるだろう。おそらくその頃には普遍的な端末となっているのでスマートフォンとは呼ばれていないはずだ。

図表5 世界におけるスマートフォンのプラットフォームシェア

図表5 世界におけるスマートフォンのプラットフォーム(OS)シェア (画像クリックで拡大表示)

図表6 世界における携帯電話端末の出荷数

図表6 世界における携帯電話端末の出荷数 (画像クリックで拡大表示)

スマートフォンへのシフト、コミュニケーションの変化

従来型からスマートフォンへの変化

従来型からスマートフォンへの変化はコミュニケーションの変化とも相関する(画像クリックで拡大表示)

 携帯電話の使用目的は電話以外にシフトしている。インプレスが行った調査では、10年には42.9%が「1日に1回も通話しない」と回答し、また通話時間は8割近くが「10分未満」であった。そしてメール利用時間は「10分未満」が半数を超え、決して多くはない。
 また同社が従来型端末、スマートフォン、iPadなどのタブレットPC利用者に対して、過去3カ月に利用したインターネットサービスを尋ねた調査では、スマートフォンユーザは「ナビゲーションや地図」「動画」「Twitter」の項目で最も多かった。
 外出先で位置情報を利用して道案内を任せ、待ち時間にWiFiの大容量通信を利用して動画を楽しむなど、携帯電話、PC、インターネットが実現した「いつも情報につながっている」状態を、スマートフォンがより利用しやすくした。そして象徴的なのが昨年スマートフォンと同様に急拡大を見せたTwitterである。誰もが見える場所に140文字をつぶやき、誰かの反応を待つ。個人が1対1で向き合う通話やメールと異なり、多くの友人や他人と広く緩やかに、そして同時多発的に迅速につながる。スマートフォンの画面視認性や操作性の向上により、SNSやTwitterなど同時多数とのコミュニケーションに遷移した。
 いつも情報や誰かにつながっていること――「Addicted to Connected」。携帯電話、PC、インターネットが人々の願望をかなえてさらに大きな願望を生み出した。スマートフォンはその大きな願望をもかなえようとしている。
 スマートフォン躍進の最大の推進力はもちろん、一般ユーザである。「画面の解像度が高くて、発色がきれい」(32歳女性、小売)、「TwitterやSNSに便利」(26歳女性、不動産)、「外回り営業中にGPS地図やPCサイト閲覧をよく使う」(31歳男性、商社)といった肯定的な意見が多い。中には「仕事をしているように見える」「時代に乗り遅れないように」といった疑問符がつく声もあるが、これも含めてスマートフォンへの潮流の変化が本物のように見える。

巨大すぎる新参者(アップル、マイクロソフト、グーグル)

 スマートフォンの神髄であるOS開発はアップル(世界時価総額ランキング2位、2010年末時点)、マイクロソフト(同5位)、グーグル(同23位)の3社でしのぎを削る。いずれも従来型携帯電話端末開発にはほとんど関与せず、PC分野で培った技術やナレッジを惜しみなくスマートフォンに投入し、市場拡大を牽引する。各社それぞれ何億人ものユーザ、何百万という開発者、幾度にわたるユーザビリティ研鑽という層の厚さは他の追随を許さない。Windows Mobile では先行者でありながら周回遅れ感が否めないマイクロソフトもWindows Phone7を海外でリリースした。劣勢を力技でカバーする幾多の実績があるだけに今後の動向は気になる。

垂直モデルのiPhone 、水平モデルのAndroid端末

 アップルは強い。OS、ハードウェア、ソフトウェア・コンテンツの三位一体を高レベルで開発、融合できる唯一無二の企業である。もともとMacはクリエイティブ分野のユーザ層が多いイメージあるが、BSD UNIXベースのMac OS Xのリリース(01年)、Intel CPUの採用(05年)により高レベルなアプリケーション開発者およびITエンジニアを巻き込んだ。洗練されたモバイルPCが多機種ある日本市場と違い、海外ではデザイン、リーズナブルな価格、モバイル性能でアップル製のMacBook系以外の選択肢が限られているのも開発者に選ばれた一因だろう。 
 ステップアップ誘導も上手だ。iPodは01年に発売、iPod Touchを07年に投入し、そのユーザエクスペリエンスを08年で爆発的にヒットしたiPhone 3Gにつなげた。Mac、PC上のiTunesアプリケーションを介してモバイル端末をリンクする手法は既存のMac販売という市場を維持したまま、新市場の開拓を可能にした。加えてアップルはメモリ、小型高精度ディスプレイ、バッテリーの世界最大級の需要家でもあり、類似するデバイスの大量投入は部品購入単価の著しい削減をもたらす。音楽、アプリといったコンテンツに洗練されたデザインとユーザインタフェース、リーズナブルなデバイス、魅力的なハードスペックと万人に受け入れられる魅力を最適なタイミングで投入するビジネスモデルは、すべてが絡み合った多重螺旋構造で進化を続けている。
 グーグルも受けて立つ。検索からの広告表示が最大の収益源である以上、グーグルがコントロールできるディスプレイ(PC、携帯電話)を確保することは至上命題である。多大な開発費を投入しているAndroid OSを無償で展開することで、多くの通信キャリア・端末メーカーに採用され、結果として世界中の人の目に、手に触れるのである。
 もともと多くの開発費を必要とするOS開発は携帯キャリアにとっても端末メーカーにとっても頭痛の種だった。際限なく性能アップを繰り返すチップ群や高解像度化が著しいディスプレイ対応、アプリやコンテンツの管理技術、GPSやカメラ、各種センサー群とのインタフェース開発、操作性を高める音声認識技術など膨大な技術領域を各社で対応するにはもう限界である。その上、ユーザの期待値は高く、短期間で実現しなければならない。したがって、OSおよび各種インタフェースを含んだプラットフォーム開発はグーグルが担い、デバイス連携の独自の機能やルックアンドフィール、キラーアプリケーション開発は通信キャリアもしくは端末メーカーが担うという水平分業は理にかなっている。通信キャリアにもマーケットプレイスを提供し、グーグル自身がキラーデバイスを作らないという端末メーカーにも配慮した対アップル共同戦線は今のところ広く受け入れられている。グーグルの完成度の高いリファレンスモデルが浸透し、各社のフレーバーを身に纏って、2011年はAndroidが百花繚乱となる。
 アプリケーション開発者の視点から見れば、iPhoneおよびiOSは端末機種、機種、OSともバージョンが少なく、アップルそのものがハードウェアを含めてコントロールしているため開発がしやすい。ただし、開発言語であるObjective-Cと開発環境Xcodeは経験が少ない場合には慣れが必要だ。一方、Androidは端末メーカーに実装を委ねられているため、数多くの派生バージョンを生み出す。アプリケーション開発者はメジャーな機種に対応するのに加えて、亜種の動作確認にも目を配る必要があり、開発の手間が増える可能性がある。ただし、開発言語は携帯電話向けアプリの開発や企業アプリケーション開発にも利用されているJAVA言語で、開発環境として定評のあるEclipseを主に使用するため開発効率もよく、Androidを搭載した多くの端末対応も案外スムーズにいくかもしれない。悩んだ際の「グーグル先生※」は強力なサポーターだ。また、アプリ審査のないAndroid Marketはアプリ開発者にとって大いに魅力的だ。ちょっとしたアイデアと少しの技術で迅速にアプリ展開を可能にする。

※疑問が生じた際にグーグルで検索をすると、なんらかの解を得るケースが多い。その集合知を擬人化して一般的にグーグル先生と称する

Android生態系に期待

 グーグル主導のAndroid生態系は共存共栄のバランスをうまく演出している。OS、サービス・マーケット、アプリ、デバイスとそれぞれ急速な進化を続けるこの数年ではこの枠組みは固く維持されるだろう。ビジネス、コンシューマー分野を問わず、すべてのサービスがクラウドに移行しつつあり、モバイル端末が高速かつ安価で接続できることも、この世界の盟主であるグーグルに追い風である。この培養地で力をつけたものが究極体と言われる次の4G帯を牽引することになる。


文:羽田祥子(編集部) 協力:リベラ株式会社 技術開発部

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