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世界に誇るジャパニーズウイスキーの実力

Whiskey Culture of Japan

世界に誇るジャパニーズウイスキーの実力

唯一無二の味へと導くブレンダーたちの矜持

 ウイスキーの語源はスコットランドの言語、ゲール語で“命の水”を意味する「Uisge- beatha(ウィシュク・ベーハー)」からきているが、製造工程を知れば、その言葉の意味にも妙に納得がいく。一本のウイスキーを造るのに、どれほどの労を要するのか。
no70_14-15_feature 2015年に行われたWWAと肩を並べる国際的酒類品評会、ISC(インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ)で、ワールドブレンデッドウイスキー部門最高賞である“トロフィー”を受賞した「フロム・ザ・バレル」を例に挙げて言うなら、原料となる良質なモルト(麦芽)を、香りの決め手となるピート(草炭)を焚きながら乾燥させた後に粉砕し、糖化、発酵、蒸留、という工程を経て、3年から数十年熟成された数千数万の樽の中から、目的の味を再現するために必要な100種を超える原酒を用いて、熟達したブレンダーたちが味覚と嗅覚を総動員させブレンディングを行い、再び熟成させるため再貯蔵(マリッジ)し、ようやく一本のウイスキーが完成する。一つひとつの工程のわずかな違いで、仕上がりはガラリと変わってくる。作業に予断は許されない。付け加えるなら、どんな樽を使うのか(シェリー酒の入っていたシェリー樽、バーボンの入っていたバーボン樽、新樽など)によっても、味わいは大きく変わってくるし、同じ時期に仕込んだ同じ原酒でも、樽の位置(入口からの距離など)によって、微妙な個性の違いが出てくる。ちなみに、ウイスキーは製造工程によって種類が分けられており、代表的なものを挙げると、同じ蒸留所で造られたモルトウイスキー同士を混和した(「ヴァッティング」と呼ぶ)ものをシングルモルト、複数のモルトウイスキーと、トウモロコシなどの穀類を原料とするグレーンウイスキーを混和した(「ブレンディング」と呼ぶ)ものをブレンデッド・ウイスキー、混和せずに一つの樽(カスク)からボトリングしたものをシングルカスクという。
no70_14-15_feature ブレンダーたちは、何を頼りに一杯のウイスキーを完成へと導くのか。
「一年のある時期に、今ある数千種以上の原酒をすべてテイスティングします。その折に感じた印象を、テイスティングノートに自分の言葉で書き留めておくのです」(佐久間)
 ブレンディングの際は、テイスティングノートが道標となる。自分の言葉で書かれているので、頭の中で感じた「こういった味がほしい」という要望に、限りなく近い形で応えてくれるというわけだ。とはいえ、一度で上手くいくケースは、もちろん稀だ。
 夥しい量の原酒の味わいを丹念に確かめ、それらの個性を知り尽くすまで研鑽を重ねてゆくブレンダーたち。彼らの胸の内にあるのが矜持だとすれば、矜持とはやはり、積み上げられた努力の上にのみ宿るものなのではないだろうか。竹鶴政孝の時代から、絶えることなく脈々と受け継がれてきた先人たちの弛まぬ努力と飽くなき探求心が、時を超えて今日の私たちの夜に、至福の一杯を届けてくれている。


※文中敬称略

文|志馬唯 写真|福永晋吾、花村謙太朗

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