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トーキョー・サードウェーブ物語

-コーヒー新時代、開拓者たちの挑戦-

トーキョー・サードウェーブ物語

カフェでもバールでもない、喫茶店という独自のコーヒーカルチャーを磨き上げてきた日本。近年、コーヒー界に新たなブームが起こり、瞬く間に多種多様のカフェが東京に乱立した。コンセプトの違う選りすぐりのカフェを巡りながら、日本のコーヒー文化の行方を追う――。

おいしいコーヒーの飲める時代

スペシャルティコーヒー 世界第4位。年間消費量45万トン。日本人はとにかくコーヒーをよく飲む。ブレイクタイムと言われれば、当然のようにあの芳醇な香りを放つ琥珀色の飲物を誰しもが想像するだろう。“珈琲”という当て字も秀逸だ。見ただけでリラックスできそうな気さえするし、字面も優美。“曹達(ソーダ)”とは大違いである。
 さて、気付けばいつの間にやら、そこかしこでコーヒーのクオリティを追求する時代になった。こだわりの喫茶店は今に始まったことではないが、大手コーヒーチェーンはもちろん、個人で営むコーヒースタンドやカフェ、コンビニや缶コーヒーですら「味」にこだわり始めた。“サードウェーブ”なんてワードもよく耳にする。一体今、コーヒー業界で何が起きているのだろうか。

スペシャルティコーヒーとシングルオリジン

スペシャルティコーヒー 最近のコーヒー店を覗くと、どの店もこぞって「豆」にこだわる傾向にある。より良い品質の豆を仕入れるため、彼らの基準の一つとなっているのが“スペシャルティコーヒー”だ。これは栽培、収穫から焙煎するまでの品質が適正に管理され、一定の要件を満たすクオリティの豆を指す。果実味がしっかりと感じられるため、比較的浅煎りにして、そのフレーバーを生かすのが時好のようだ。一方、“シングルオリジン”は、主に単一農園で収穫された豆のことを指すが、どこの誰が栽培したかわかる時点で、一定の品質は満たしていると思われる。日本に昔からある“ブラジル”、“グアテマラ”といったストレートコーヒーは国単位だったが、それがより細分化された形だ。同じ国でも農園が違えば味も違う。今やコーヒーも、ワインと同じ感覚になりつつある。

……何ウェーブ?

スペシャルティコーヒー スペシャルティコーヒーの話題になると必ず出てくるワードが“サードウェーブ”。1960年頃に質より量の“アメリカン”が流行ったのがファースト、スターバックスに代表される1990年代のシアトル系がセカンド、そしてこの数年の波がサード、というわけだ。しかし、これはもともと海外のコーヒームーヴメントを指す言葉で、日本においては少し的外れな感じが否めない。海外では「質の高いコーヒーを一杯ずつ丁寧に淹れる」ことがブームのきっかけだったらしいが、日本にはもともと喫茶店文化がある。ではスペシャルティコーヒーを淹れればサードなのか? そうとも言い切れない。そんな調子で、確固たる定義がないままサードは個々に解釈され、ここ2、3年で新しいカフェが乱立した。それもあくまで都心部に集中しており、地方に行けば「サードウェーブ? 聞いたこともない」という有り様だ。そんな何ウェーブなのかもわからない、混沌とした近年の東京のコーヒーブームを、フグレン・トウキョウの代表、小島氏はこう呼ぶ。
――トーキョー・サードウェーブ。
 定義のない波に乗って多様化したコーヒーの楽しみ方。2011年以降にオープンした、新しいスタイルを提唱する開拓者たちのカフェを巡りながら、コーヒー新時代の過ごし方について、少し考えてみたい。


文|志馬 唯 写真|福永晋吾

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