PA(パーキングエリア)やSA(サービスエリア)でRelaxation(リラクゼーション)できる施設を目指した「Pasar(パサール)」。インドネシア語で「市場」を意味する言葉とも音が重なる造語だ。いま、NEXCO東日本は大人の旅を快適にする「本物志向」の場を提供し始めている。
text: 羽田祥子(編集部)

大きな屋根の重なりと直線の美しさが印象的な外観

高速道路は我慢の場?

 地方部の土日祝日の上限料金を1000円とする休日特別割引や、平日の地方部の全時間帯が3割引になる平日昼間割引など、高速道路を利用した車の旅行が近年ぐっと財布にとって快適になった。
 非日常の空間に身を置けるから旅行は楽しい。旅立ちから心が弾む。しかし、長時間のドライブで気になるのがトイレ休憩と食事だ。汚くて当たり前、美味しくなくて当たり前。正直なところ「仕方ないから」が多くのSA・PA利用者の気持ちだった。
 SA82カ所、PA223カ所、合計305カ所(09年11月1日現在。上下線別)をその事業エリアに持ち、08年度の店舗総売上1240億円を上げるNEXCO東日本は、利用者の不満を解消し、より積極的に高速道路を利用してもらうための新たな試みを始めている。大人もくつろげて楽しめる「わざわざ行きたい」スポット「Pasar(パサール)」を高速道路上に誕生させたのだ。

PA+SA+Relaxation=Pasar

 Pasarプロジェクト第2弾として昨年11月にオープンしたのが東北道下り線のPasar羽生。外観の大きな屋根の重なりと直線の美しさが印象的で、古来の日本家屋をモダンにしたような空間美が、心地よく、楽しい。
「『ザ・ペニンシュラ東京』などを手掛けた橋本夕紀夫デザイン事務所に設計デザインをお願いしました。『洗練された粋な和風モダン』をコンセプトに、『東北道における旅の始まり』をイメージし、お客様の記憶に残る情緒的な空間となるようデザインしています。建物外観は、日本の古典的意匠である千本格子や、屋根の集合体をモチーフとしたシンボリックなファサードとしています。また、建物内部には、伝統的な日本の生活をイメージするような囲炉裏スペースを設けています」。(NEXCO東日本)

地域を彩るショッピングゾーン「旬撰倶楽部」

羽生製麺処

「道ナカ」

 羽生、そして第1弾のPasar幕張(京葉道路上下線)、第3弾のPasar三芳(関越道上り線)ともに共通しているのは、楽しく快適な空間の提供だ。「あるから利用する施設」から「すすんで利用したくなる施設」への転換が図られている。
 すべてのトイレはバリアフリー化され、広々と快適だ。子供用トイレやパウダーコーナーも設けられ、以前のネガティブなイメージは払拭された。
 飲食店や物販店舗も大幅に変わった。たとえば羽生なら「羽生製麺処」などの地元モノのほか、厳選された飲食店のラインアップは非常に魅力的で、知らずにふと立ち寄った人は空腹でないことを後悔さえするだろう。
 また、地域を彩るショッピングゾーンとして「旬撰倶楽部」を施設ごとにこだわりをもって設計している。たとえば幕張(下り線)ならばデパ地下をイメージした都会的な「東京気分」、幕張(上り線)ならば千葉の醤油蔵をイメージした「千葉気分」と各店舗デザインや品揃えを行った。もはやネガティブな意味での「売店」のイメージは全くない。わざわざ行きたい「駅ナカ」ならぬ「道ナカ」である。

高速道路という商材

 NEXCO東日本は今後もPasarブランドを展開予定である。
 Pasarだけではない。サン・テグジュペリの「星の王子さま」とのコラボレーションによるSA・PAのリニューアル計画も進んでおり、関越道寄居PA上り線に10年夏オープン予定だ。「星の王子さま」ブランドが持つ癒しや非日常性のコンセプトを元に、南仏の雰囲気の空間を予定しているという。
 道路公団民営化に伴う05年10月の会社発足から丸4年。NEXCO東日本は、道路の建設・維持管理だけにとどまらず、高速道路という商材の魅力向上に向けて、利用者の目を強く意識したマーケティングを始めているようだ。

由来築地百年、東京の老舗和菓子屋「築地ちとせ」も軒を連ねる