京都・東山、南禅寺畔。路地を入ると静かに佇む草庵風の建物がある。小旗が風に揺れ、床机には煙草盆、脇には茶壷と水瓶が置かれ、古びた草鞋が掛けられている。「瓢亭」。創業400年の歴史を持ち、懐石料理の最高峰と名高い名料亭がそこにある。
text: 加藤紀子(編集部) 構成: 羽田祥子(編集部)

「食材や産地、調理法、食べ方など、料理には代々考え尽くされてきた背景があります。例えば鯛の昆布〆は、鯛をいかに美味しく食べるかを追求したもの。また、鯛はめでたいというように、祭事的な要素もあります。伝統は触れる機会を増やせば自分の中に息づいてくるものだと思うのです」。
 時代や意識の変化にも対応しているという。「私たちがお出ししているのは昔からの伝統料理ですが、同時に自分たちの経験を少しずつ織り交ぜてきたものです。また、京都ではイタリアンやフレンチに京野菜が積極的に取り入れられており、祭事的な要素を入れれば立派な日本料理になります。外国の方には完全に日本料理に見えることでしょう。日本人として大切なものを料理に織り込むことで、日本料理の幅を広げることができるのではないかと思っています」。

 昨年は日仏交流150周年を記念した食の饗宴に参加し、フランス料理界の名手、アラン・デュカス氏とのコラボレーションを行った。料理教室の講師から、自身が通った地元の小学校での食育と、幅広い活動に精力的だ。
「年を重ねて自分も変わり、見るものも変わります。その出会いによって自分の中に掘り起こされるものが必ずあります。人は皆、それに気付いた時に感動するのではないでしょうか。料理の中にも、ひとつでも多くの出会いがあればいいと思っています。そのためには、技術を磨き、もっと勉強をしなければ」。
 受け継がれる伝統に謙虚でありながら、新しい時代を織り込む情熱を絶やさない。日本が誇る瓢亭の伝統と歴史は、15代目の新しい息吹を織り交ぜながら、明日へと繋がっていく。

瓢亭

京都府京都市左京区南禅寺草川町35
TEL 075-771-4116

<<最初へ <前へ 1|2 次へ> 最後へ>>