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文化とはおこがましい、 日本酒を醸しているだけ

萬乗醸造・醸し人九平次

文化とはおこがましい、 日本酒を醸しているだけ

「日本酒造りを文化として捉えられているかと思います。確かに伝統産業であることは間違いありませんが、私が造っているのは文化ではなく酒です」と、萬乗醸造15代当主、久野九平治氏は切り出し、日本酒を後世に残すため、新たな切り口をフランスで模索していると続けた。

ワイン造りに
イノベーションの鍵がある

発酵状態は香りでわかると言う。「香りには段階があります。これはまだ、半分くらい進んだところですね」。白ワインのようなブーケが漂っていたのは「米を磨くというのですが、米の外側、油分を含み糠となる雑味のもとを削っているから」。よい酒ほど削られる。純米大吟醸酒は、米をすり合わせながら約48時間掛け、50パーセント以上削ったものを用いる

発酵状態は香りでわかると言う。「香りには段階があります。これはまだ、半分くらい進んだところですね」。白ワインのようなブーケが漂っていたのは「米を磨くというのですが、米の外側、油分を含み糠となる雑味のもとを削っているから」。よい酒ほど削られる。純米大吟醸酒は、米をすり合わせながら約48時間掛け、50パーセント以上削ったものを用いる

 美酒――。まごうことなく思わせる「醸し人九平次」。発酵時に醸された炭酸をわずかに含む純米大吟醸酒は、果実を思わせる香りの奥から麹の芳醇な甘みが広がり出すと、まろやかなコクへと変わっていく。喉を通った後の余韻も心地よい。やがてとろりと滑らかになり、飲み始めとはまた違った味わいをもたらしてくれる。上品で落ち着きがありながらも凛とした華やかさ、これほどエレガントな日本酒はどのようにして造られているのだろう。
 老舗に伝わる醸造技術や守り抜く家訓から聞くつもりだったのだが、話は思いがけない方向へと進んでいく。
「ワイン造りを始めます」
 日本酒の老舗がフランスでワイン醸造にトライすると言う。
「日本酒が長きにわたって受け継がれてきたのは、時代の流れに沿った変革が行われてきたからこそ。この先も、世間様から求められるような進化を続けなければ残れない。ワイン醸造をまねようというのではなく、日本酒の進化の鍵があるように考えたからです。原料が違うだけで醸造プロセスが同じ日本酒とワイン、2つの醸造酒が入り混じったミックスに日本酒の未来があるように思うのです」
 醸造蔵の片隅にワイン樽が置かれていた。
「樽の中で日本酒を熟成させています。これはあくまでミックスの一例。とはいえ見よう見まねに過ぎません。例え仕上がってもまねたものは見抜かれ、飽きられるでしょう。それだけお客様の味覚は正しい判断をされます。造り手として裏切ることはできませんし、偽りに似た行為は説得力に欠けます。本物からでなければよい酒を醸すことはできません」
左/醸し人九平次に用いる麹ができるまで約50時間を要する。昼も夜も温度管理が必要となり泊まり込みで面倒を見る 中/スタッフの平均年齢は約29歳。自ら門をたたいてくれた若者ばかり。発酵を終えた酒を絞るための準備を進めていた 右/酒蔵に置かれた樽には日本酒が入っている。数年前から試みているが、納得のいくものはまだできない

左/醸し人九平次に用いる麹ができるまで約50時間を要する。昼も夜も温度管理が必要となり泊まり込みで面倒を見る 中/スタッフの平均年齢は約29歳。自ら門をたたいてくれた若者ばかり。発酵を終えた酒を絞るための準備を進めていた 右/酒蔵に置かれた樽には日本酒が入っている。数年前から試みているが、納得のいくものはまだできない


萬乗醸造・醸し人九平次

japan (2)萬乗醸造の創業は1647年。名を代々襲名する。銘柄は、継いだ名と、日本酒は麹を発酵させて醸す品であることから、「醸し人九平次」と名付けられた

愛知県名古屋市緑区大高町字西門田41

TEL 052-621-2185
kuheiji.co.jp

文|竹井雅美(編集部) 写真|宮田政也(SUTUDIO CAPSULE)

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