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輝きを放つ、美しき織物「錦」

龍村光峯錦織工房

輝きを放つ、美しき織物「錦」

純真であること

 龍村光峯錦織工房は、古代裂の復原、東宮御所や京都迎賓館の壁を飾る織額や、皇太子妃殿下の婚礼支度品などを納めてきた由緒ある工房であり、錦織を純粋に伝える貴重な存在として知られている。

左/直径1ミリにも満たない糸を幾重にも織り込む多重組織が立体感を醸し出す。刺繍のように後から加工されたものではない 右/緯糸が巻かれた竹管。1個ずつ、杼の中に納めて使われる

左/直径1ミリにも満たない糸を幾重にも織り込む多重組織が立体感を醸し出す。刺繍のように後から加工されたものではない
右/緯糸が巻かれた竹管。1個ずつ、杼の中に納めて使われる

 初代は、70種類もの名物裂や古代織物の復原を手掛け、織物技法の進歩に貢献した人物として日本芸術院から恩賜賞を授与されるほどの高度な知識を持つ、二代は「花樹対鹿錦」を復原(国語の教科書に掲載されていることから、目にしたことのある人が多いと思われる)し、その様子がドキュメンタリー映画となり、モナコで開催されるモンテカルロ国際テレビ祭にて、伝統芸術の普及に取り組む姿が評価され、CIDALC賞を受賞した。三代当代も欧州を中心に海外で催した展覧会が高い評価を得るなど、それぞれに功績を残す。
「祖父や父と共に生活を営み、錦織が身近にある環境で育ったからこそ自然に身についた感覚というものがあります。血を分けた者でしかもち得ないものです」
 周氏の後継者としての気構えは高い。先も見据えている――。
東宮御所に納められた「瀬戸のうちうみ」と同じ錦など、綿密で精美な作品の数々を工房の展示スペースで鑑賞できる

東宮御所に納められた「瀬戸のうちうみ」と同じ錦など、綿密で精美な作品の数々を工房の展示スペースで鑑賞できる

「錦織が織り上がるまでには70以上の工程があります。それぞれ職人が異なり、京の伝統工芸の多くがそうであるように、錦織も完全な分業システムによって成り立っています。どの工程が欠けても完成させることは難しい。しかしながら、専門性の高い技術を持ちながらも需要がないため廃業を余儀なくされる職人さんがおられるのが現実です。失った技術を取り戻すのは容易ではありません」
 周氏は、錦織を守るため、現代に合わせた仕事の創出を模索する。
「ビジネス主体にならないよう適正規模を意識しながら取り組んでいます。伝統文化の継承に市場原理は無視できないとはいえ、売れるモノを意識し過ぎると営利を主目的とする企業となってしまい、本来の理念とは異なる目的が生まれると思うのです」
 そうなれば、古来伝わる錦織ではなくなるであろう。
 この工房から創出される錦織は純粋美術である。その作品は、薄れゆく日本人の真心のこもった伝統文化を伝えている。


龍村光峯錦織工房

京都府京都市北区紫竹下ノ岸町25
TEL 075-492-7275
www.koho-nishiki.com
工房見学、織機体験が可能。予約制

文|竹井雅美(編集部) 撮影|バンリ

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