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【ボルドーシャトー紀行】ドメーヌ・ド・シュヴァリエ

【ボルドーシャトー紀行】ドメーヌ・ド・シュヴァリエ

品種ごとにタンクで1月ごろまで貯蔵し、味を確かめてからブレンド比率を決める

「何もしないことは、何かをすることより難しい」とオーナーのオリビエ・ベルナール氏は言う。「私のワイン造りに対する姿勢は常に後ろに控えていることです。土が必要としていることをしてやるのです。自然を尊重すれば、自然の連鎖、摂理で果実は繊細かつエレガントになります」
 ドメーヌ・ド・シュヴァリエの「ドメーヌ」とはフランス語で「区画・領域・領地」を意味する。1783年作成の地図に、「シバレイ」(ボルドー以南の地域の方言ガスコーニュ語でシュヴァリエ)とあり、歴史の長さを物語っている。シャトーではなくドメーヌを名に持ち続けているのは、歴史と同時に土地の豊かさを継承しているとの誇りの表れだ。
「土壌に恵まれなかった人々は、技術に頼ったワイン造りをせざるを得ません。」自然を尊重できるのは、土壌が豊かゆえだ。
「私たちは手を加え過ぎず、しかしすべてがワイン造りにおいて十分という状態をつくらなければなりません。これは非常に難しいことです」
 現在50名ほどいるスタッフを教育し、独自の哲学を浸透させることがオーナーとしての仕事だという。「『明日は今日より常に良い』が私の哲学です。今年のワインは去年のものより良くなければなりません。そう考えられない人はワイン造りを辞めるべきです。私は変化を望んではいません。変革を望んでいるのです。この醸造所を運営してから30年、常に変革をもたらしてきました。現在共に働くスタッフには次の20年、さらなる変革を成し遂げる長い道のりを共に歩んでいってもらいたい」

オーナーのオリビエ・ベルナール氏

 スタッフとのコミュニケーションを取るため時には明け方まで一緒に飲み明かしたり、家族を招いてパーティーを開いたりする。銀行とのトラブルの仲裁に入るなど、金銭的な援助も行う。オーナー自ら醸造所に住み、オフィスを1年中開放し、常に「スタッフの側にいる」ことを心がけているという。オーナーの熱意はスタッフに確実に伝播し、祝日でも、金曜日でも(フランス人は金曜日にあまり働かないのだとか)、朝早くから畑には誰かしらいて作業をしている。「果実自体に手は最低限しかかけませんが、すべきことは」限りなくありますから。しかしスタッフは義務感で働いているのではありません。彼らはワイン造りを喜びと感じてくれています」
 多くのワインメーカーが喜びのためにワインを造っていないと、ベルナール氏は嘆く。「ワインは生活を楽しくするもの。人生を楽しめない、好きでない人はワインを飲むべきではない。水を飲んでいればいいんです」
 ベルナール氏の哲学はこの「ドメーヌ」が生み、「ドメーヌ」で培われた。ドメーヌを知り尽くしているからこそ、自然を尊重し、手をかけ過ぎないながらも、常に変革が行われているのだろう。

(左)エッグ型の貯蔵タンク。「角がなく、ワインがぶつかることがないのでより自然な環境における」のだそう(右)ファーストワイン「DAMAINE DE CHEVALIER GRANDCRUE CLASSE DE GRAVES」の2007

(左)カベルネ・ソーヴェニョンとカベルネ・ブランが同じ畑で育てられている。「他の土地では育てやすいソーヴェニョンもボルドーでは難しい」と、25年ベルナール氏の右腕として勤めるレミー・エダンジュ氏


文:川口奈津子(編集部)

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