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人間も「有機栽培」で成長する 勝村政信インタビュー

人間も「有機栽培」で成長する 勝村政信インタビュー

人と出会うことで良いことも悪いこともある

勝村氏(以下、勝):人との出会いが(今の自分を形成した)すべてですね。最初に蜷川(幸雄)さんに出会って勉強させていただき、紆余曲折あって第三舞台に参加させていただくことになり、舞台を見たプロデューサーが映像の仕事に呼んでくださったり、また蜷川さんとご一緒させていただいたり。人との出会いで今の僕があります。
まぁ、良いことだけでなく、悪いこともありましたけど。
BUAISO(以下、B):悪いこともですか?
:もちろんです。アクションを起こせばリアクションがあります。芝居を始めた蜷川さんの劇団では役などありませんでした。でも、第三舞台の鴻上(尚史)さんが芝居を観てくださって、僕を劇団に呼んでくれた。
劇団を移ったことで、お世話になった蜷川さんとの関係がしばらく気まずくなりました。「元気が出るテレビ」に呼んでいただいた時は、「あんな品のない番組に出るくらいならファンをやめます」なんて手紙がたくさん来ました。
役者はたくさんの人に、芝居を観ていただきます。無責任なことはできません。仕事が増えれば増えるほど、してはいけないことがたくさん出てきます。仕事が増えることによって、優等生になっていくことによって、本来持っている役者の「やんちゃ」な部分までいつの間にか消えてしまう可能性もある。演技だけでなく、生活や言動までがどんどん優等生になっていく。それが役者にどう影響していくのかは、もはや自分では判断ができません。大袈裟にいえば、いいことも、悪いことも、歴史が判断してくれるのでしょう。
こういった考え方も、蜷川さんの影響が大きいのだと思います。蜷川さんは聡明で、発想も行動力もいまだに衰えを知りません。僕が本を読むようになったのは蜷川さんの話していることを理解するためでした。最初にスタニスラフスキーなんて言われても、名前を覚えるまで、2週間はかかりましたから(笑)。
芝居を始めた当時は、高名な演出家の演劇書をとにかく読みました。意味なんかわからないんだけど、勉強しないと演劇の歴史も、蜷川さんのしゃべってることもまるでわからない。もちろん、勉強したことが自分の演技に反映されているのかなんてのもわからない。でも、確実に自分の栄養になっている。
根は非常に暗いですよ。常に自分の闇の奥の方から物事を考えています。
『HERO』というドラマでも、木村拓哉くんが、太陽のように輝いているわけですよ。だから、まずそこを妬む(笑)みたいなね。関係性をつくっていくんです。あの時のメンバーはみんな個性が強くて、クレバーで、その場で臨機応変に対応できる人たちだったんで、それぞれがそれぞれを妬み合っていて、あんまり好きじゃない光線みたいなのを、スタッフも含めてつくっていけたんです。でもその分、普段はとても仲が良かった。スペシャルの撮影でも、お盆で田舎に久しぶりに親戚が集まったみたいになって、全員でずーっとぺらぺらぺらぺらしゃべっているんです。監督が怒って「お前らいい加減にしろ!台詞言え!」って(笑)。阿部(寛)ちゃんも(松)たか子ちゃんも忙しいのに、今の舞台を観に来てくれたし。素敵な親戚です(笑)。

勝村政信 1963年7月21日生まれ。蜷川カンパニーで舞台俳優として活動開始。1987年劇団第三舞台入団(92年退団)。舞台、テレビ、映画、ラジオ、CMなど活躍の場は広い

勝村政信 1963年7月21日生まれ。蜷川カンパニーで舞台俳優として活動開始。1987年劇団第三舞台入団(92年退団)。舞台、テレビ、映画、ラジオ、CMなど活躍の場は広い

すべてを受け入れたまま
減らすということ

:年を経て身についた自分の経験値ってかけがえのない、自分だけのものじゃないですか。それがスズカツ(鈴木勝秀)さんとか他人の経験値とぶつかった時にどういう化学反応が起こるか楽しみなんです。
B:スズカツさん、蜷川さん、阿部さんら多くの方と様々な場で再会しますよね。新しい化学反応を起こすために自分に必要なことは何でしょうか。
:有機的にものを考える、とういことでしょうね。今もこうして初めてお会いして、周りにたくさん人がいていろんなこと考えるわけじゃないですか。最初に後ろでしゃべっている人がいて「うるさいなぁ」って思ってたでしょ?(笑)そういうことすべてを引き受けて会話が進んでいくんです。自分のことだけ考えたり、周りが見えないとその場ででき得る最高の瞬間を逃してしまう。有機栽培みたいなことを人間としてしていくんです。
出会った人が太陽になってくれたり、水になってくれたり、土になってくれる。ある時は虫になって僕を殺す可能性もある。良いことだけじゃなく悪いこともたくさんある。でも、悪いものを「排除」するのではなく、受け入れたまま減らしていかなきゃいけないと思うんですよ。
B:受け入れたまま、減らすんですか。
:世の中に必要ないものはなくて、人間が勝手に必要としないだけ。除菌がはやってますけど、あっていいんですよ、ばい菌。陰もどんどんなくなっているでしょ。谷崎潤一郎の『陰影礼賛』じゃないですけど、陰がなくなるとどういう影響があるのかも考えなければいけない。誰かにとって「害」のあることが自分には「益」になる可能性もある。自分に不必要なものを「排除」するのではなく、すべて受け入れた方がいい。足腰がしっかりしていれば、そう簡単には倒れないでしょ。面倒なことを自分からどんどん進んでやっていかないと、観ている人の心が震えたりすることってできないんじゃないかと思うんですよ。僕が劇団にいた頃、常に新しいことをしてやろうと努力してきましたが、新しいことはほとんど先達の方がやってしまっていました。そこで、音符を組み合わせるように、今までの方法論を組み合わせてマイナーチェンジすることで、新しいことが生まれると気づいたんです。今、メディアの情報が膨大で、受け取る側が飽和してしまい、与えられたものなのか、自分の判断なのか曖昧になっているような気がします。しっかり自分をクールダウンして、自分の判断と自分の思考で、自分を、社会を見つめ直して進む方向性を決めていくいい時期なんだと思うんです。

夢が叶った最高の時代 取説(とりせつ)は自分で

:今、夢が持てなくなったとかよく言われますが、夢に満ちあふれた昭和の夢が叶った最高の時代じゃないですか。叶った夢をどう乗りこなすか、その「取説」は自分たちで考える。こんな幸せな時代はない。インターネットという魔法も使える。あとは、自分を鍛えるだけなんです。そして思う存分楽しめばいいんです。
しかし陰の部分も常に考えなければいけない。高い代償として自然や動植物が失われる。再生と崩壊は同時に行われなければいけない。演劇も同じです。
B:それも受け入れて減らすことなんですね。
:子供たちだってこんな素敵な時代に生まれたんだから、大人が昔を語って教育しても無理なんですよね。今の子供たちに大人が言えるのは、生き方は自分たちで考えるしかないんだってこと。
ヒントは歴史にある。僕はなぜか子供の頃から生きることについて考えてきました。生きるってことを真剣に考えれば、自ずと答えは出てくるんじゃないかな。


舞台「ビリーバー」
多様な文化が発展し、科学技術が向上した現代。すべてが証明されることが正しく、不可解なこと・非現実的なことを否定する現代文化。これでいいのだろうか?「サンタクロースを信じた男」ハワード(勝村政信)を通じて、創造すること、信じること、愛することの大切さを語る。

キャスト:勝村政信 風間俊介/草刈民代/川平慈英
作:リー・カルチェイム 演出・上演台本:鈴木勝秀
日程:9月3~12日(東京)世田谷パブリックシアター
チケットお問い合わせ:
サンライズプロモーション東京TEL0570-00-3337
www.sunrisetokyo.com
CATチケットBOX TEL 03-5485-5999
www.stagegate.jp
地方公演予定:
9月17・18日(大阪)梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ/9月19日(福岡)福岡市民会館/9月21日(仙台)電力ホール

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