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プロダクト
ブランドストーリー レノボ ThinkPad
ThinkPad。ノートPCでこれほど信頼され、常に期待されているブランドは世界で他にない。1992年日本生まれ。当時の社名である International Business Machines(IBM)を具現化した、人類が初めて手にしたグッドパートナーである。
「軽薄重厚」、相反する側面を内包するレノボThinkPadを紐解く。
ドイツの詩人・思想家であるフリードリヒ・フォン・シラー(1759~1805)は人が美的なものをどのように認識するか定義している。
人間の心理は「形式衝動」と「感性的衝動」の2つの衝動からなる。形式衝動は形や普遍性を理性的に解し、感性的衝動は個々の嗜好や多様性を感覚的に解す。2つの衝動は相反するものであるが、ここに第3の衝動である「遊戯衝動」(遊び)が加わることにより、3つの衝動の均衡が取れ「美」が生まれる。
ビジネス環境という制約の中で、これまでのThinkPadシリーズは「形式」と「感性」を磨き上げてきた。ノートPCをビジネスツールと定義する場合は必要十分である。しかし、ビジネスとプライベートタイムの境界線は徐々に曖昧になり、無機質なオフィスに鎮座するだけが仕事でもない。多様性が求められる現代への解として、自由環境へ「遊戯性」を拡張(extend)したものがThinkPad X1である。制約と自由は選択であり、良し悪しではない。

ペン先で思い切り叩いても無傷なゴリラガラス
環境に最も適応したものが生存する
X1はこれまでのビジネスユース前提の設計からシフトし、プライベートでの利用シーンも考慮している。魅せる外観デザイン、薄さ、ディスプレーの美しさなどはその一例だ。とくに楔形の外形は薄さをより強調する。
「キータッチのフィーリング、堅牢性、パフォーマンスなど、ThinkPadとして譲れないものを死守した上でどう薄くするかがポイントでした。アルファベットと数字3ケタの組み合わせだった品番をX1とし、今後のThinkPadを担うあらゆる技術を盛り込み、フラッグシップモデルとしての新しいシリーズを意識しています」。
ThinkPadは常に過度の装飾を抑えてシンプルながら新しいデザインを追求してきた。X1はゴリラガラスを採用し、華美ではない、すっきりとしたデザインを実現した。コストが高い強固なガラスは、本体の堅牢性と薄さにも貢献している。
「薄さのためには部品の隙間を詰める必要があります。するとハードディスクやLCD(液晶画面)など弱い部品はダメージを受けます。しかしゴリラガラスにより部品を保護でき、隙間が必要なくなりました。通常はパームレストがLCDにダメージを与えることが多いのでギャップを取りますが、ゴリラガラスはたとえ当たっても傷つきません。堅いガラスが結果として緩衝材の役目を果たしました」。
機能美は外観だけではない。標準電圧のCPUを冷やす薄型の静音ファンや映像鑑賞にも好適なディスプレーとドルビーホームシアター、高速充電可能なバッテリーを搭載し、ビジネスを超えたあらゆる環境に適応できる「ニュータイプ」である。

一つひとつのパーツが極度に薄いが堅牢性は十分
19年の蓄積
ThinkPadというブランド
ICT(情報通信技術)の新陳代謝は早い。ドッグイヤーと称され、換算するとThinkPadは100年以上の「老舗」となる。風と共に去って行ったPCブランドは数知れない。とはいえはじめから世界観が確立されていたわけではない。「当初ThinkPadという名前には議論がありました。新しい市場を開拓する状況でしたから、前例がなく、実験的に発売したのが実際のところです。模索を続けながら、徐々にThinkPad固有の製品に仕上げました」。
ノートPCを構成する主たる要素はCPU、液晶、バッテリー、メモリ、ハードディスクであり、加えて数多の半導体を扱う。現在ではパーツとしてコモディティー化したが、当時はすべてが日進月歩であり、販売価格を想定しての開発は困難を極めたに違いない。
「当初の液晶は白黒が主流でバッテリーはカドミウム電池、価格は100万円を超えていました。コストももちろん考慮しますが、魂だと思う部分は絶対に譲りません。全体の品質、堅牢性、耐久性、キータッチなどThinkPadらしさを大切にします。会社も開発者もThinkPadのブランドに誇りを持っていますから」。

インタビューに答えてくれた(左から)田保光雄氏 製品開発統括担当研究・開発 ノートブック製品開発/嶋久志氏 デザイナー 研究・開発 デザイン/ユーザーエクスペリエンス/小川満氏 ノートブック製品 システム技術 基礎設計技術/森野貴之氏 ノートブック製品 サブシステム技術 プラットフォーム機構設計
変えるもの、変えないもの
日本の神髄がこれからも続く
世界中からのリクエストを聞き、同じ製品ラインナップを世界市場に供給する。
「あらゆる面で常に高い水準が求められます。デザインやインターフェースの向上を目的に、定期的にアメリカ、ドイツ、中国などでモックアップを作って市場調査を行っています。国によって要望が矛盾することもあるのですが、意見を吸い上げて、日米中で議論を尽くして新製品の外観や機能を固めます。変えないことも変えることも勇気が必要です。ThinkPadが確立した世界観やフィロソフィーの幹は変えず、多様性の枝葉をどのように伸ばしていくのか、まだまだ進化は続きます」。
2005年、ThinkPadは中国資本のレノボ社の製品群に加わった。中国でのPCシェア1位のレノボであれば、通常、開発拠点は北京に移動する。「普通の中国企業なら真っ先に北京に統合すると思いますが、そうするとThinkPadではなくなってしまいます。日本での開発の重要性を理解しているのでしょう」。
神奈川県大和市に所在した「大和事業所」で生まれたThinkPad。横浜市のみなとみらいへ移転しても「大和研究所」として「大和」の名を残すところに日本発を続けることへの強い決意を感じる。日米中の3カ国をオリジンとしたグローバル企業が期待する「日本」には、まだまだ大いなるポテンシャルが満ちている。
※お詫びと訂正
誌面の同記事にてキャプションに誤りがありました。関係者の方々に深くお詫び申し上げますとともに、ここに訂正させていただきます。
ThinkPad X1
Dimensions (W×D×H):337mm×231mm×16.5〜21.3mm
Weight:1.69kg
Battery Life:Up to 5 hours
Display:13.3" HD SuperBright LCD
Memory:Up to 8GB
文|本丸達也(発行人) 羽田祥子(編集部)
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