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REPUBLIC OF Fritz Hansen デザイン史に刻まれる、北欧家具を生み出したメーカー

REPUBLIC OF Fritz Hansen デザイン史に刻まれる、北欧家具を生み出したメーカー

デザイナーの気鋭な発想を形に

3本脚+人の2本足で安定感のある機能を満たすというコンセプトの「アントチェア」(右手前)。現在は4本脚もある。フリッツ・ハンセン社の名を世界に広めた「セブンチェア」は、キャスターやアーム付きもある。どちらのシリーズも、材質や色の種類が多く揃えられている

3本脚+人の2本足で安定感のある機能を満たすというコンセプトの「アントチェア」(右手前)。現在は4本脚もある。フリッツ・ハンセン社の名を世界に広めた「セブンチェア」は、キャスターやアーム付きもある。どちらのシリーズも、材質や色の種類が多く揃えられている

 フリッツ・ハンセン社は、世界的に知られるデンマークの家具メーカー。先進的なデザイナーとのコラボレーションによって生まれた数々の名作は、インテリアに興味のある人にとって憧れの存在となっている。
 1872年、コペンハーゲンに家具職人のフリッツ・ハンセンによって創業されたフリッツ・ハンセン社。家具パーツ作りから始まった工房は、やがて成型合板による軽さと強度に優れた家具を生産するメーカーへと成長を遂げ、世界のデザイン史に残る作品を生み出してきた。
 その中でもデンマークの建築家、アルネ・ヤコブセン(以下、ヤコブセン)によってデザインされた椅子は、フリッツ・ハンセン社のアイコンとなっている。
「ヤコブセンの作品が、大きな存在であることは間違いないですね」と、広報担当の鈴木さんは話す。ヤコブセンは建築を設計するとき、建物だけでなく、その空間の細部までこだわり、家具やテキスタイル、カトラリーに至るまで、インテリアのデザインも手掛けていた。
「ヤコブセンとのコラボレーションは、彼がリノベーションする製薬会社の社員食堂の椅子を作ったことから始まりました。ヤコブセンから制作依頼があったと言われています」
 そして1952年に誕生したのが、3本脚という独特のフォルムを持つ「アントチェア」と呼ばれるもの。世界初、背面と座面を一体成型するという3次元曲面成型合板で作られた椅子であった。
 アントチェアによって3次元曲面成型合板技術を確立したヤコブセンとフリッツ・ハンセン社は3年後に後継モデルを発表する。「セブンチェア」と名付けられた椅子は、そのミニマムで美しいフォルム、成型合板のしなりが生むフィット感と座り心地の良さ、スタッキングできる実用性の高さから、北欧のみならず世界的ベストセラーとなり、これまでに700万本以上を販売。誕生から60年経った今もなお、人気が衰えることを知らない。
「プロジェクトのために限定で作られたものなど、廃番になっているヤコブセン作品の復刻を望まれる声も多くあります。その一つとなりますドロップチェアを、昨年復刻することができました。こちらはヤコブセンが建築を手掛けた、コペンハーゲンのSASロイヤルホテル(現ラディソンブルーロイヤルホテル)のために150ピースだけ作られた椅子です。レーザーなどを使い、オリジナルの構造を確認したうえで、あくまでもデザインはそのままに、強度面をより向上させた構造を新たに開発しましてようやく完成に辿り着きました。科学技術が発展した現在だからこそ可能になったと言えます。長年の夢が叶ったという思いです」
 フリッツ・ハンセン社のヤコブセン作品に対する揺るがない信頼が、デザインを変えずに作り続けることに表れているようだ。
 ヤコブセンの気鋭な感性を形にするため、フリッツ・ハンセン社は技術と品質の模索を重ねてきた。既成概念に捉われることなく新しいものを積極的に取り入れることで、デザイナーの発想を形にするという姿勢が名作を世に送り出している。

クラフティングタイムレスデザイン

フリッツ・ハンセン日本支社  広報担当 鈴木理歩氏 アルネ・ヤコブセンによりデザインされた「エッグチェア」に座っていただいた。このパーソナルチェアは、包み込まれるようなソフト感が非常に心地よい

フリッツ・ハンセン日本支社 
広報担当 鈴木理歩氏
アルネ・ヤコブセンによりデザインされた「エッグチェア」に座っていただいた。このパーソナルチェアは、包み込まれるようなソフト感が非常に心地よい

 フリッツ・ハンセン社は長い歴史の中で一流とされる多くのデザイナーとコラボレーションしている。環境や時代が異なるデザイナーの作品たちは、そのどれもが同じ空間にあっても違和感がない。むしろ両者を引き立て合っているようだ。
「フリッツ・ハンセン社のデザインフィロソフィーをデザイナーの方々が理解してくださっているからだと思います。新作はコンセプトに沿って、デザイナーと長いディスカッションを重ねることで作られています。コンセプトはクラフティングタイムレスデザイン。時代に左右されることなく永く使えることです。そして、これまでにないユニークなものであること、アートとしても捉えられるものであることも大切な要素です」
 そんなフリッツ・ハンセン社の、個性的なフォルムでありながら座り心地がよく、シンプルモダンでありながら、無機質な冷たい感じがしない、包み込むような温もりが人を惹きつけている。
「デザイン立国と高く評価される国らしく、ユニークな発想力や豊かな色彩感覚を持ち合わせていることもありますが、デンマークは、住まいの経年優化を大切にしていることから、家具に対する意識がとても高いと思います。家具をローンを組んで購入し、子に孫に代々引き継いでいくことも一般的です。食事が楽しくなったり、ゆっくり本を読んだり、家具がもたらす心の豊かさに高い価値を持っていると感じます。このような環境がデザインに表れるのではないでしょうか」
 椅子ひとつでも心地良くなることを、フリッツ・ハンセン社の作品は伝えている。美しく機能的なデザインだけでなく、そこで過ごす時間に安らぎを生み、ライフスタイルに豊かさをもたらしてくれることが、時代を超えて愛される理由なのかもしれない。


「ドロップチェア」の誕生は1958年。SASロイヤルホテルの客室用に作られ、一般販売されることはなかったが、多くのファンがそのデザインに魅了されていた。ダイニングテーブル「アナログ」は、世界的に活躍するスペイン人デザイナー、ハイメ・アジョンによるもの。コミュニケーションをテーマに、テーブルを囲むすべての人が見られるよう、コーナーも座ることができるように考えられた天板と脚が特徴。2014年に発表された新作。

文|竹井雅美(編集部)

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