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感性駆動のプレミアム・プロダクツ

感性駆動のプレミアム・プロダクツ

 一目ぼれ、衝動買い、あばたもえくぼ。人は論理的な説明や裏付けのない強い感情に突き動かされる。
 個人消費が拡大しバブル経済期に突入した1980年代半ば、価値観を商品価値に組み込む感性重視型マーケティングが注目された。定量化しづらい個人の価値観を把握しようと、応用研究の立場からは感性工学、マーケティングの立場からは感性時代というキーワードで探求が進められてきた。
 言葉としての「感性」をものづくりの手法に取り込んだ企業としてマツダが挙げられる。1986年に米ミシガン大学で行われた講演で、人が感じる自動車の価値をデザイン開発プロセスに計量的に取り込んだその手法が「カンセイ・エンジニアリング」として紹介され、世界に広まった。
 日産自動車が2000年頃から打ち出した付加価値が「Perceived Quality」である。その後「感性品質」と訳され「機能的な必要性に基づく品質ではないが、あることでより魅力が増す品質」と定義された。顧客が見て、触って、使うことで感じる品質感であって、気づかない限り評価されない品質だが、設計上きわめて重要な要素であるとしている。
 経済産業省が2007年5月に策定した産業振興施策が「感性価値創造イニシアティブ」だ。新興国の成長や国内の人口減少、産業構造の変化などを背景に、より日本の産業が競争力を高めるべく、機能性やコストなどの従来の価値軸に加え、「感性」を新たな基軸にすることを提唱した。作り手の感性がものやサービスに反映され、生活者の感性に訴えかけ、感動、共感、共鳴を得られたときに特別な経済価値を生むという「感性価値」を広く提唱するため、2008年からの3カ年を重点時期と定めてさまざまな取り組みが行われた。
 近年、日本の漫画やアニメ、ファッションなど、文化面での感性が海外で支持されている。しかし、高度成長期を支え、技術革新による高機能、高付加価値競争に邁進した多くの企業が、現在の世界市場で苦戦し、デザインや新興国ニーズなどを新たな価値軸に据えて戦う外国企業の攻勢が目立つ。
 機能や価格に圧倒的な優位性がなくても、技術に基づき人の感性に訴えかける商品は広く受け入れられる。消費者の感情を揺り動かすマーケティングは、有意差がなくなった性能競争や、消耗戦に陥る価格競争とは一線を画す。日本企業は新しい価値軸での新たな戦いを勝ち抜けるのか。「感性駆動」によって消費者にプレミアム・プロダクツと感じさせる企業の取り組みを追った。

イマジネーション・マーケティングが創る次世代サービス

 直接目には見えない、サービスにおける付加価値とはなにか。それは、顧客ニーズに応えることにほかならないだろう。顧客がそのサービスをいかに有効に利用できるかに加え、カスタマーマインドにどこまで迫れるかが重要だ。
 最近では、広告やCMなどでも「お客様の立場にたった○○」「顧客目線での○○」という謳い文句を唱える企業が増えた。元来、サービスやシステムは、世間一般に馴染みの良いものを企業側が作り出し、その中から顧客が自分に最適なものを選ぶ、という形で成り立ってきた。“ここがもっとこうだったらいいのに”という、惜しい経験をしたことがある人も多いはずだ。それでも、顧客から企業生命を脅かすほどのクレームが上がらなかったのは、周囲に溢れる情報が今より乏しかったことと、“贅沢は言うべからず”という日本人ならではの固定観念がまだまだ社会に蔓延していたからではないだろうか。
 しかし、時代は超高度情報化社会へと一変。IT通信に加え、フェイスブックやツイッターなどのSNSサービスも驚くべきスピードで発展した。個人差はあれど、現代人が一日に得る情報量は、江戸時代の人の一生分に相当するというから、その進化に驚かされる。またSNSコミュニティを通し、海外とも積極的に交流を深める人が増えたことにより、グローバル化も随分と進んだ。情報、通信の面でみれば、もはや日本は閉ざされた島国ではないのだ。


文:羽田祥子、川口奈津子、松永理佐(編集部)
メイン写真:アフロ

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