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関岡渉氏×ぬまっち ガンダムDVD発売記念スペシャル対談

「シャアもアムロも死ぬ予定だった」「全52話の予定だったが低視聴率のため途中打ち切りになった」など、数々の“逸話”が残るテレビアニメ『機動戦士ガンダム』。そのすべてを知る、当時の番組プロデューサー、元名古屋テレビの関岡氏にガンダムDVD宣伝部長の“シャア芸人”ぬまっちが鋭く迫る。放映開始から30年経った今だからこそ知りたいガンダムの裏側とは?
構成:渡辺麻実

元・名古屋テレビ 関岡渉氏

元・名古屋テレビ 関岡渉氏

ガンダム放映前夜

ぬまっち(以下、ぬ):イベントの時、空き時間に煙草を吸いに行ったら、先客がいたんです。一人のじいさん、しかも、ジャブローにいてるような連邦軍の制服を着て、まるで将軍のような雰囲気を醸し出している。「変なじいさんやなあ、いや、じいさんまでコスプレするなんて、さすがは『生誕30周年祭』やなあ」と感心して話しかけたら、そのじいさんは「今、孫がおもちゃやプラモデルを買いに行っていてね」とおっしゃった。それがなんと、実は関岡さんだったんです。
関岡氏(以下、関):行ったら、この制服を着ろ、と言われたからね。
:ブライト・ノアの制服を着ておられましたね。あとで舞台上に関岡さんを発見して、びっくりしました。「あのじいさんがファーストガンダムのプロデューサーだったのか」と。関岡さん、僕のこと、憶えていらっしゃいます? その時も、このシャアのコスチュームを着ていたんですけど。
:いやあ……まあ、煙草を吸った記憶はあるけど。孫が買い物をすると言ってね。
:だから、その話はもうしましたって(笑)。関岡さんにはたくさん伺いたいことがあるんですが、まずはファーストガンダムのプロデューサーとなった経緯からお願いします。
:それまでにも『無敵超人ザンボット3』『無敵鋼人ダイターン3』など、名古屋テレビでアニメ番組を制作していたが、実は東京支社が担当していたんだ。それが、人数が足りないから大変だと言うので、本社が担当することになったが、本社の人間も山と仕事を抱えていて、自分がやろうと名乗りを上げるのがいない。結局、私がやることになったんだ。
:噂では、アニメ制作会社の日本サンライズ(現サンライズ)は、ガンダムを放映してくれるテレビ局を探していたそうですね。
:そうだったね。でも、企画書を見て、その頃はまだ「ガンボーイ」というタイトルだったけど、会社として利益が出るくらいにはなると思ったよ。広告代理店もメインスポンサーも決まっている。あとはネットを通せばいいだけだから。テレビ朝日系、当時は12局でしたが、なんとか説得できるだろう、と思いましたよ。ザンボットの神勝平の声が大山のぶ代さんだったから、また大山さんがやるのかな、と思ったね。
:(初代ドラえもん=大山のぶ代さんの声で)「ぼく、アムロく~ん」だったかもしれないんですね(笑)。
:フジテレビや日本テレビのアニメ枠は決まっているし、そこは大手のアニメ制作会社ががっしり押さえていたからね。独立して間もない日本サンライズが入り込む余地はないわけですよ。ガンダムはザンボット、ダイターンに続いて土曜の夕方に放映したんだけど、当時他のテレビ局はその時間帯にアニメを放映していなかったからね、ネットワークを取りやすかったんだよ。いわば、名古屋テレビは裏から行ったわけだ。ただ、系列局は嫌がってね。「名古屋テレビが責任もって、電波料をお渡ししますから」と言って、「1回だけですよ」と渋々了承してもらった。大阪(朝日放送)や九州(九州朝日放送)など、時間をずらして放映した局も多かったね。

ファンは子どもじゃなかった

:そうして1979年4月7日、ついに第1回が放映されたわけですが、反響はありましたか?
:ドッとハガキが来た。「シャアがかっこいい!」という内容ばかりだったな。シャアのイラスト入りのも結構あって、これは当たると思ったね。
:僕、姉が2人いてるんですが、下の姉もシャアのファンでした。そういうふうに、見る側がアニメの美少年キャラに恋をする、というのは、ガンダムが最初ですよね。ハガキも女性からが多かったですか?
:いや、男女半々くらいだったかな。それまでのアニメと違って、ファンは子どもじゃなかったね。高校生や大学生だった。7月頃、名古屋には南山大学という名門大学があるんだが、その系列高校の生徒が話を聞きに来たよ。大阪大学工学部からも来たな。ガンダムにはテレビ電話やパソコンがバンバン出てきたし、ミノフスキー粒子とか、架空の設定もいろいろあって、科学に関心のある学生が興味を持ったんだな。そういう人たちが子どものファンを引っ張っていってくれたんです。子どもには向上心があるからね。
:若いエンジニアの方に話を聞く機会があったんですが、ガンダムを見て科学者を目指した人も多いそうですよ。「スペースコロニー」も構想中だそうです。
:まあ、ガンダムを実際に作れたら、世界制覇できるね、ワッハッハ。

シャア芸人 ぬまっち

シャア芸人 ぬまっち

今明かされる打ち切りの真相

:ところで、プロデューサーって、どんなお仕事なんですか?
:台本に目を通して、変な言葉の使い方なんかがあれば直すけど、現場に行って細かい指示を出す、なんてことはしないよ。プロデューサーはポイントだけ指摘すればいいんです。
:シャアが死ぬ予定だったのを止めさせたのは、関岡さんだそうですね?
:富野(由悠季・総監督)さんのことだから、きっとシャアが劇的に死んで、妹のセイラが泣く、というシーンを作るんだろうなと思った。それで、7月くらいに日本サンライズに行って富野さんに「シャアだけは殺さないでくれ」と言ったよ。アニメは3カ月くらい先の回を作っているから、「10月でいいから出してくれ、この低視聴率を上げてくれるのは、シャアしかいない」と頼んだんだ。
:僕が今ここにいてるのは、関岡さんのおかげです。ありがとうございます(笑)。それから、最終回でアムロも死ぬ予定だったんでしょう?富野総監督の小説でも最後、アムロは死んでます。
:「最後にアムロを殺すな」と言った。第2作を作るつもりだったからね。アムロがいないと、今までの苦労が水の泡だ。だから、アムロは『Ζガンダム』から出てきたでしょ。
:52話の予定だったのを43話で打ち切るという決断を下したのも、関岡さんなんですよね。
:ネット局がみんな「降りる」と言い出したからね。9月に東京支社に行って、決めた。
:心情的に辛い決断でしたか?
:いや、冷静な判断ですよ。スポンサーに迷惑をかけてはいけないからね。玩具メーカーがメインスポンサーで、おもちゃというのはお正月と4月に売れるんです。だから、「1月いっぱいで打ち切りますから、お正月にガンダムのおもちゃを売り切ってください。2月から視聴率が上がるような新番組をスタートさせて、4月にそのおもちゃが売れるようにします。必ず取り返しますから」とお願いしたよ。
:たくさんハガキも来てたのに?
:一部に熱狂的な人がいるのはたしかだったが、大衆性はないとわかっていたからね。
:富野総監督は「43話にしてくれて、関岡さんは救世主だ。今のガンダムがあるのは関岡さんのおかげ」とおっしゃっているそうですよ。
:それは嬉しいですね。初めて聞きました。
:それにしてもこの生誕30周年祭の舞台で、関岡さんが「打ち切りと決定したのは私です。すみませんでしたー!」と叫んで、富野総監督にビーム・サーベルで切られた瞬間は、このイベントを象徴する屈指の名シーンですね。DVDでもう一度観たいです。
:あんまりみなさんが「人気があったのにどうして止めたんだ?」と聞きに来るので、いちいち答えるのがめんどくさくなってね。これはチャンスだ、と思ったんですよ(笑)。

関岡氏が所有する当時の番組資料。貴重!

関岡氏が所有する当時の番組資料。貴重!

「ガンダムは青春小説」

:また79年当時の話に戻りますが、皮肉なことに、打ち切りを決めてから視聴率が上がったんですよね。
:それは織り込み済み。子ども向けの番組の視聴率は秋から上がるものなんだ。今の子どもは「家でゲーム」かもしれないが、その頃の子どもは夏の夕方は遊びに出ていて、家にはいないんだ。
:そして、ニュータイプの登場から人気が爆発した。それも、織り込み済みだったんですか?
:いや、あれは戦略的なものじゃなくて、富野さんのひらめきでしょう。
:すごいアイデアですよね。翌年「新人類」が流行語大賞を受賞したんですが、僕、子どもながらに思いましたもん、「ニュータイプやろ」って(笑)。話は変わりますが、どうしてガンダムは、これだけ多くの人に愛されているんでしょうね?
:それは愛の物語だからでしょう。ガンダムは青春小説なんですよ。どの登場人物にも必ず美女が寄り添っている……。
:一番好きな女性のキャラクターは誰ですか?
:ミライだね。ホワイトベースを操縦していた。ブライトの奥さんになっちゃったんだよね。けしからん。
:ブライトにヤキモチですか(笑)。一番好きなモビルスーツはどれですか?
:モビルスーツかどうかわからないけど、コア・ファイターはいいですねえ。あれは零戦のイメージでしょ。だから僕は好きですね。
:43話の中で一番印象深いシーンはどれでしょうか?
:ほら、一番美人だった人……マチルダが死んだ場面。あそこに出ていかなければよかったのにねえ。
:そうですねえ。プロデューサーをやって一番良かったことは何でしょうか?
:たくさんの番組を作ってきたけど、この番組だけだね、30年も経ってるのに後輩がイベントをやってくれるのは。
:(笑)


(c)創通・サンライズ Presented by メ~テレ Illustrated by Naochika Morishita

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・メ~テレ特設サイト
www.nagoyatv.com/gundam30th_nagoya/dvd
・メ~コレ 名古屋テレビコレクション
www.mei-colle.com(メ~コレ限定特典付)

ぬまっち
1972年生まれ。通称・天王寺区の赤い彗星。ガンダム好き芸人としてTV、イベントなどで活躍中。コスチューム通りのシャアのモノマネは秀逸。

ブログ「ぬまっちの【認められたいものだな…】」
numaka.otaden.jp

関岡 渉
1962年名古屋テレビ開局とともに入社。ガンダムのプロデューサーを務めた1979年当時は制作部部長。その後、報道や関連会社社長を経て退職

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