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2010.05.25

吉沢 悠 インタビュー「愛すべき人に感謝して、一日一日を大切に生きてほしい」

映画『孤高のメス』で、派閥や権力がはびこる医療現場の中、自分が持つ医療に対する情熱を発揮できずに苦悩する若き医師を演じた吉沢悠さん。「留学 は大きなターニングポイント」。彼の挑戦はこれからだ。

「爽やかな好青年」。この言葉が妙に似合う吉沢悠さん。どの質問にも考えを巡らせ、自分の気持ちを丁寧に伝える。こちらを真っすぐに見つめながら。今回の映画『孤高のメス』でもその期待を裏切らず、患者を救うという使命感と情熱に溢れた、誠実なドクター役を好演した。本格的な医師の役は今回が初めてだ。原作者で現役の医師でもある大鐘稔彦氏に会った時、医療現場と実体験に基づいた作品へのただならぬ思い入れを感じ、身が引き締まったという。

吉沢 悠

リアリティを追求した話題作『孤高のメス』

「手術シーンは、順天堂大学の現役外科医の先生たちが監修してくださったのですが、台本を読むと、共感して込み上げてくるものがあるそうです。実際に信念を持っていても思い通りにいかない部分はある、とおっしゃっていましたね。フィクションで描かれているはずの院内や医療問題の構図が、日常にあり得ると知り驚きましたが、それだけリアルな作品作りに参加していると思うと楽しかったです」。
 病院と医師と患者の関係、地域医療や臓器移植の問題、手術シーン。すべてにおいてリアリティを追求した『孤高のメス』は、約20年前を舞台とするも、現代の医療制度に対して人々が抱く不安や問題を描いている。さらに現在は、臓器の移植に関する法律が昨年改正されたことにより、脳死臓器移植への壁が低くなったタイミング。話題作になることは必至だ。

米国での経験から、一日一日を大事に生きよう、愛する人を大切にしようと思って毎日を過ごすようになったという吉沢さん

米国での経験から、一日一日を大事に生きよう、愛する人を大切にしようと思って毎日を過ごすようになったという吉沢さん

人間として何を感じているか それが役にも表れる

 脳死。自分の身近で起こる可能性は皆無ではない。
「もしそれが起こって選択を迫られたなら? こればかりは想像ができない。この選択が良い、悪いなんてないですからね。僕がこの映画で伝えたいのは、今そばにいる愛すべき人たちに日々感謝して大切にしてほしい、ということですかね」。
 当たり前のことに感謝して生きる。その思いが人一倍強いのは、吉沢さん自身が死やテロの脅威にさらされたことがあるからだ。
「WTC(ワールド・トレード・センター)のテロの1年後でした。98年から始めた俳優を休業し、留学するためにニューヨークに行ったのですが、到着して5日目に人が亡くなられているのを見たんです。それも衝撃でしたが、ある時『ベビーカーに爆弾が仕込まれてサブウェイでテロが起きる』という情報が流れて。マンハッタンが警戒態勢になり、拳銃を持った護衛の人がたくさんいました。自分がいる空間でテロが起きるかもしれないという、あの独特の空気感は日本では考えられないことですよ。日本は平和だなって実感して、その時から一日一日を大事に生きよう、愛する人を大切にしようと思って毎日を過ごすようになりました。当たり前のことですが、実はなかなかできないんですよね。現場は役者として成長できる場ですが、“人間として”何かを感じることができないと役を演じることは無理だと思っています。それが役に表れますからね。そういう意味でも、留学は僕の俳優人生の大きなターニングポイントでした」。

言語や人種を越えた役者に

 俳優を離れた留学中に「自分は一体何ができるのか」と考えたが、やはりすぐに俳優をやりたいと思い、世の中に影響を与えられる存在でいたいと思った。確かに、役者は映画やテレビを通して何万人にも影響を与える。天職だと信じた。そしてすでに世の何万人もの女性を(男性も?)そのスマイルや爽やかな容姿で癒しているのは明らかだ。
「爽やかって言われますけど……今までの役のイメージでしょう。だから次回は『孤高のメス』で言えば、生瀬さんが演じていたようなイヤ~な人間の役をやりたいです。映画には欠かせないキャラクターですしね。でも、生瀬さんってあの役を”嫌な人”として演じていないらしいんですよ。役を演じた結果、嫌なヤツに見えているだけ。だから嘘臭さを感じさせない。いつか僕もそういう役に挑戦していきたいですね。そして、自分が主役として一つの作品を背負う。主役って特別な位置の人しかできないので、絶対実現させたいですね」。
 芝居をする場を日本に限らず、いろんな可能性にチャレンジしていきたいとも。
「僕は日本人なんで、日本に対してのプライドやその良さを伝えたいという思いは持っています。だからといって日本語で芝居をしなくては、とは思っていません。言語・人種にはあまりとらわれたくない。国境って人間が決めたことで、ご飯を食べて、寝て、恋をして……こういうことは誰もが一緒ですよね。音楽がそうであるように、良いものはどの国でも、誰にでも良いはず。言葉や国籍が違っていても思いがあれば伝わる、そんなことにも挑戦していきたいですね」。
 爽やかで誠実な31歳。そのイメージから抜け出し、いろんな顔を見せて観ている者を魅了し、さらにファンを増やす。こんな日が来るのも近そうだ。

(C)2010「孤高のメス」製作委員会

(C)2010「孤高のメス」製作委員会



『孤高のメス』
地方都市にある市民病院に赴任してきた外科医の当麻(堤真一)。そこは、大学病院に依存しなくては運営できない腐敗した病院だった。しかし、当麻の“目の前にいる患者を救う”という信念に、病院や人々は動かされていく。ある日、市長(柄本明)が病に倒れた。彼を救う手立ては、法律ではまだ認められていない禁断のオペ、脳死肝移植手術だけ。当麻の決断は……? 現職医師の大鐘稔彦によるベストセラー小説を映画化。

監督: 成島出 原作: 大鐘稔彦(『孤高のメス』幻冬舎文庫)
出演: 堤真一 夏川結衣 吉沢悠 中越典子 松重豊 成宮寛貴 矢島健一 平田満 余貴美子 生瀬勝久 柄本明
公開: 6/5(土)より、丸の内TOEI 1、新宿バルト9 ほかにて全国ロードショー
www.kokouno-mes.com

ヘアメイク:朝日智仁 スタイリスト:石黒亮一
文:鵜居かよ(編集部) 撮影:イシワタ フミアキ

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