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『昆虫探偵ヨシダヨシミ』強面は脱ぎ去って 哀川翔はトボけてニヒルな探偵になった

強面は脱ぎ去って 哀川翔はトボけてニヒルな探偵になった

強面は脱ぎ去って 哀川翔はトボけてニヒルな探偵になった

虫と会話できる昆虫探偵

 国民的“アニキ”と慕われる哀川翔さん。今回挑んだのは、なんと虫や動物たちと会話をする探偵。探偵といっても虫専門。虫から依頼を受け、浮気や情事の実態調査、虫探しを行うのだ。始まりから「これが虫の声!?」と少し混乱、呆気にとられる。もう笑わずにはいられない。
 原作は、講談社「モーニング」、「モーニング・ツー」で掲載されていた青空大地のコミック『昆虫探偵ヨシダヨシミ』。シュールな中にサスペンスとちょっとマヌケでハートウォーミングな要素をプラスした娯楽映画だ。

(c)青空大地・講談社/昆虫探偵製作委員会

(c)青空大地・講談社/昆虫探偵製作委員会

生き物のすごさに爆笑

 メガホンを執ったのは、日本映画界の鬼才と言われる佐藤佐吉監督。実は、映画にしようと持ちかけたのも、監督に佐藤氏を推したのも哀川さん自身だ。
「“生き物のすごさ”をテーマにしてるところがすごく面白くて、かなり笑っちゃって、映画にして(この笑いを)やってくれるのは佐藤監督だって思った。監督には、絶対面白いもの作ってくれるって信頼があったからね。それで原作を読んでもらったんだけど、『生態までも相当正確に描写してあって、7、8年かけて一冊を書き上げてるスゴイ本だ!』って感動してたよ。嘘がないだけに映画にする難しさを考えると『どうやって逃げよう』と思ったらしいけどね(笑)。監督って大変な仕事で、俺は二度とやりたくない。相撲の横綱、内閣総理大臣、監督。これは世の中で最もつらい三大職業だよ」。

戦いも交尾も本物で

 カブトムシの不倫やコオロギの失踪、チョウの拉致、と珍事件を見事解決し、その報酬はオオクワガタ。そんな虫との風変わりかつ平凡な日常を過ごす探偵ヨシダヨシミ(哀川翔)が、ある日人類の存亡に関わる大事件に巻き込まれていく模様をコミカルに描く。昆虫とのW主演と思えるほど虫と共演し、ほとんどが本物。一層パラレルワールドへと引き込まれる。
「監督のこだわりで虫の戦いも交尾もCGじゃないんですよ。でも言うこと聞くわけない(笑)。カブトムシのお陰でファーストカットから半日かかり、その時点で止めとけばよかったと思いましたよ」。

映画は観る人が感じるもの

 任侠道の役に始まり様々な人物を好演、コスプレしてヒーローになる『ゼブラーマン』では前人未到の主演100作を達成した。今回の“人間嫌いで昆虫と話す探偵”は非現実的でまさにコミック。どのようにヨシダヨシミを理解したのか。
「『何でこいつ虫と喋るようになったんだ?』ってまず考えた。生まれた時から虫と喋れたわけでも人間嫌いでもなかった。じゃないと探偵なんかやらないよなって。ギャグも言わないただの真っすぐな人間で、あれだけ人と話すことを苦手としながら再びチャレンジしたのは、その時虫と会話したからだと思う。虫の声が聞こえなかったら死んでるよ、きっと(笑)」。
 その役をひも解くには、自分で役を想像して考えていく、これしかないのだ。
「そこにどんどんヒントが出てくる。すると、こっちに監督の意図が伝わってきて観てる側にも伝わる。それが映画じゃないのかな。ストレートにすぐ伝わってしまったら映画でも何でもない。ただ笑うだけでもいいし、バカバカしいと思うだけでもいいし、『生きるとはこういうことか!』と思う人がいてもいい。観る人によってテーマが変わってくるのが映画だと思うね」。

実はすごいテーマが隠れた作品

 昆虫の世界をバカバカしく描いたように見えて、実は人間の本質にも迫る。
「ヨシダヨシミが人間嫌いになり虫にハマったのは、嘘を言わないからじゃないかな? 虫には探り合いや駆け引きが全くない。でもこれって人間も本来あるべき姿だと思うよ。余計な考えがあるからややこしくなる。相手が本音で来たら人だって動くでしょ。あと、1週間しか生きられないって言われたら『何でもやってやる』ってなるのは、人間も虫も一緒。こうやって人に置き換えるとすごいテーマの映画を撮ってるなと思いましたよ」。
 自宅で50匹以上のクワガタやカブトムシを、とにかく長生きさせたい一心で飼っている。虫を思いながら話をするその瞳は、強面役者の鋭い眼差しとは裏腹に、温かくて少年のように純粋だ。

思い切り遊び一生懸命に仕事

「物事には需要と供給があって俳優も一緒。いくら俺が映画に出たいと言っても求められないと成立しない。だから、引き受けたら『一生懸命した』と自分で納得できるくらい頑張る。年間300日、いや320日ぐらい働いた時期もあったよ。その後で思いっきり遊ぶ。俺、仕事は遊ぶためにしてるんだよね」。
 思いきり遊ぶために一生懸命仕事をする。それが哀川流だ。
「仕事は何のためにするかって考えるのは大事。もし“食べるため”としか考えてないと、仕事したくないでしょ? 俺は“遊ぶため”だね。仕事って何でもつらいじゃない。『これ終わったらハワイだ!』って決めてたら多少のことは我慢できる。どうせ仕事をするんだったら“何のためにするか”を考えた方が本気で仕事できるよね。思いっきり遊んで一生懸命に仕事をする、これ働く人のテーマだと思う」。
 その言葉どおり、今回の仕事では15年ぶりにレコーディングに臨み、主題歌『生きていることがいい』を歌う。歌手としても情熱を注いでいるのである。ぜひこの映画に対する“アニキ”のパッションを、「生きているっていい」という喜びを、感じてほしい。


(c)青空大地・講談社/昆虫探偵製作委員会

(c)青空大地・講談社/昆虫探偵製作委員会

『昆虫探偵 ヨシダヨシミ』
5年前、ある事件で大爆発し荒廃した新宿。昆虫専門の探偵・ヨシダヨシミ(哀川翔)は、人間嫌いだが虫と会話ができ、虫たちの浮気などを調査していた。ある日、女(小山田サユリ)からカメムシ探しの依頼を受けるが、実はヨシミに会いに来たのだった。女は刑事のマリで、ヨシミは本当は新宿爆発事件で失踪した元恋人の田中だ、と告げる。そしてヨシミの前に昆虫デカが現れ、新宿爆破事件の真相を話し始める。

監督・脚本:佐藤佐吉
原作: 青空大地(講談社 モーニングKC刊)
出演: 哀川翔 小山田サユリ 村野武範 水元秀二郎 (声の出演)勝俣州和 猫田直 田中要次 山田広野
公開: 4/3(土)より、新宿K’s cinema、シネ・リーブル池袋ほかにて全国順次ロードショー
www.koncyutantei.jp

ヘアメイク:柏村信雄(c’est la vie)
文・撮影:鵜居かよ(編集部)

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