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愛があるから生まれてくる 強さと優しさ 映画『おまえ うまそうだな』

恐竜の物語の中にある大切なメッセージ

 映画『おまえ うまそうだな』で、草食恐竜のお母さんの声を担当した。
「恐竜の唸り声はどうなのか悩みましたよ、実際に聞いたことがないですからね(笑)。一生懸命走っているところや、卵を必死に守って敵を攻撃するシーンって、台詞には書かれていない声や息づかいで表現しなければなりません。そこは女優と演じ方が違う部分です。ほかの声優さんを見ていて勉強になりましたね」。
 人気絵本作家、宮西達也さんの「ティラノサウルス・シリーズ」の絵本が原作。恐竜たちの関わり合いを描いているが、そこには親子や兄弟の絆、人を愛することや違うものを認めることの大切さ、挑戦する勇気といった、当たり前すぎて普段忘れてしまいがちなメッセージがたくさん込められている。育児放棄や幼児虐待などの事件が後を絶たない今だからこそ、より大きな意味を持ち、「愛することって大切なんだよ」と子どもにも大人にも伝えようとする映画だ。

親の愛情が子のエネルギーに

 草食恐竜マイアサウラのお母さんが、川から流れてきた卵を拾うところから物語は始まる。自分が産んだ卵とともに大事に温め育てることに決めたお母さん。数日後、それぞれの卵から殻を破って赤ちゃんが生まれてきたのだが……。
「拾った卵から生まれてきたのは、肉食恐竜のティラノサウルスの赤ちゃんでした。でもその子を『ハート』と名付けて、自分の子どもの『ライト』と一緒に、同じだけの愛情を注いで育てていくんですね。しかし、群れのボスはハートが大きくなったら自分たちを食べてしまうことを恐れ、踏み殺そうとする。それを母親恐竜は命懸けで守り抜き、結局群れを離れて暮らすようになります。ここに、自分の子どもではなくても、外見が違っていても、平等に愛情を注ぎ続ける、優しくて強い母の愛の形が描かれています。私もそんな大人でいたいと思いますね」。
 成長していくにつれ徐々に肉食の本能が目覚めてしまい、自分の本当の姿を知ったハート。ショックを受けてお母さんとライトの元を去るのだが、自分を鍛えてたくましくひとりで生きているハートを見て、気持ちが込み上げたという。
「私も母からたくさんの愛情を注いでもらいながら育ってきました。離れていても“いつも自分を信じてくれている”という確信があり、それがとても強い励みであり勇気となっていましたね。お母さんたちの元を去ったハートが、ひとりでも強くなろうと努力をして立派な肉食恐竜に育つことができたのは、きっとそれまでに受けてきたたくさんの愛情があったから。それがものすごいエネルギーとなっているのだと思います」。

もらう愛と与える愛

 この映画には、もう一つの愛の形が描かれている。それは、ハートが出会った草食恐竜アンキロサウルスの赤ちゃん(ウマソウ)との愛、つまり今度は大きくなったハートが与える愛である。ウマソウにお父さんと勘違いされてしまったハートが、弱肉強食の世界で生きるために、ウマソウを優しく厳しく訓練している姿は、まるで本当の親子のようだ。
「最初はウマソウを食べようとしたけれどもそれを止め、一緒に生きて彼を愛し育て始めます。これは、ハート自身が愛してもらったことがあるから、愛し方を知っているからできたことだと思いますね。子どもは成長していつか親から離れていきますが、受けた愛情は決して消えないし、離れていても愛情でつながっている。そして自分の子どもを同じように愛し守るようになり、親のことを思いやるようになる。こういった愛のつながりが続いていくのが家族だと思いますね。本当に心温まる映画です」。
 ウマソウが襲われるとわかると命を懸けて敵と戦い、離れているけれどいつもお母さんやライトのことを思いやっているハート。この姿が本当の強さであり優しさで、愛によってそれらが生まれてきたことを、家族みんなで観て感じてほしい。
「姉(女優の原田貴和子さん)の子どもが生まれてから特にですが、子どもたちが喜んで観てくれるような作品に参加したいと思ってきました。ですから、この映画のお話を頂いた時は本当にうれしかったです。でも先日、姪に今回の役のことを話したら、『恐竜の着ぐるみを着たの?』と言われてしまいましたけどね(笑)」。


『おまえ うまそうだな』 www.umasoudana.com
ひょんなことから草食恐竜のお母さんの元で愛情豊かに育った肉食恐竜のハート。大きくなり自分の真の姿を知ると、森を飛び出し一人で生きていく決意をする。ある日見つけた卵から草食恐竜の赤ちゃんが生まれた。「おまえうまそうだな」と食べようとすると、なんと赤ちゃんはハートがお父さんで、自分の名はウマソウだと勘違い。そこから不思議な親子の愛情が芽生えていく。
原作:宮西達也(ポプラ社刊)
監督:藤森雅也
声の出演:お母さん・・・原田知世 ウマソウ・・・加藤清史郎 ハート・・・山口勝平 バクー・・・別所哲也
公開:10月16日よりヒューマントラストシネマ有楽町より全国ロードショー 上映時間:本編89分 配給:東京テアトル

文:鵜居かよ(編集部)

文:鵜居かよ(編集部)

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