近年コミックやテレビドラマなどで社会現象にまでなったクラシック音楽。年間1万1千回を超えるプロの演奏家による公演が行われる日本。特に東京は、10を超えるプロのオーケストラが存在し、毎年のように世界有数のオーケストラの来日公演が行われる、世界でも非常に恵まれた都市なのだ。BUAISOがビジネスパーソンにお薦めしたいクラシックコンサートがある。
text: 羽田祥子(編集部)

音楽が本来持っている豊かな響きを引き出すノリントン氏

 サー・ロジャー・ノリントン指揮シュトゥットガルト放送交響楽団がこの5月に4度目の来日公演を行う。来日を控えたノリントン氏にお話を伺った。
 ノリントン氏は1998年にシュトゥットガルト放送交響楽団の首席指揮者に就任した。ノリントン氏の生み出す音は純粋で豊かな響きをもつ「ピュア・トーン」と呼ばれる画期的なものだ。
 ブラームス、ワーグナー、ショパン、ハイドン……。作曲家が当時のオーケストラに期待したことに近づく取り組みをノリントン氏は70年代から続けている。自ら設立した古楽器のオーケストラ、ロンドン・クラシカル・プレイヤーズ(LCP)とともに、70年代後半から、バロック音楽、後期ロマン派など、時代ごとの楽器を使ってそれぞれの演奏法を実践しつつ、驚異的なスピードで時代を遡るように貪欲な演奏活動を続けた。

 その答えは、現代楽器を使用するシュトゥットガルト放送交響楽団とのコラボレーションにより明らかにされた。それが「ピュア・トーン」である。現在当たり前のように多用されるヴィブラートをあえて抑えてピュアな音を出し、音楽が本来持っている豊かな響きを生み出したのだ。
「マーラーの時代までは、自身の曲がヴィブラートを用いて演奏されることを想定していた作曲家は一人もいませんでした。私はこういう偉大な作曲家たちの意思を尊重しようと、シュトゥットガルト(放送交響楽団)とともにピュア・トーンを考案したのです。この演奏方法は、クラシック音楽を熟知している観客、そうでない観客、すべての人に感動を与える力を持っていると信じています」。

サー・ロジャー・ノリントン氏

「シュトゥットガルト・サウンド」

 シュトゥットガルト放送交響楽団は45年の創設以来、偉大な古典やロマン派の楽曲の模範的な解釈を行うことと、敬遠されがちな現代音楽を先頭に立って行うことを目的として、クラシック音楽界を牽引してきた。ノリントン氏が首席指揮者に就任して以来、音の深みを増し「シュトゥットガルト・サウンド」と称され、より高い評価を受けるようになった。

 「『シュトゥットガルト・サウンド』とはまさしく19世紀のピュア・トーンのことです。しかしながら、体全体による表現、フレージング、音同士のバランスを保つことも必要となってきます」。過去の日本ツアーでは批評家が選ぶベスト・コンサートの1位、2位に選ばれた。
 練習の際の楽しいユーモアでも知られているノリントン氏は、75歳を超えてなお意欲的に演奏活動に取り組む。「ユーモアは我々の人生を豊かにし、仕事へのさらなる活力を与えてくれる必要不可欠なものです」。エネルギーの秘訣はやはり音楽だという。「それから、犬や馬と田舎でのんびりと暮すこと、科学書を読むこと、愛する家族と過ごすこと、ミツバチの世話をすること。私はとても幸運な人間です」。

 ノリントン氏がその才能を高く評価するヴァイオリニスト、パク・ヘユン氏。いま最も将来を嘱望されている新星だ。09年9月に行われた第58回ミュンヘン国際音楽コンクールにおいて、史上最年少の17歳で優勝した。同コンクールは第1位をなかなか出さないなど厳しい審査で知られている。4歳でヴァイオリンを始め、9歳でソウル市交響楽団との共演でデビューした、上品な雰囲気を漂わせる韓国人女性である。
 今回の来日公演ではパク・ヘユン氏をソリストに迎えてのブラームスのコンチェルトが大きな見どころとなる。巨匠と新星のコラボレーション、そして伝統と革新を備えた名門楽団が奏でる唯一無二のシュトゥットガルト・サウンドは、聴き逃したくない。

2010年5月13日(木)19時開演・サントリーホール大ホール
出演:シュトゥットガルト放送交響楽団 指揮 サー・ロジャー・ノリントン/ヴァイオリン パク・ヘユン
(曲目詳細はサモンプロモーションHPまで)
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