インターネットの書き込みから生まれた実話に基づく物語『ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない』が公開を控え、「ブラック会社限界対策委員会」のメンバーに、いろいろ語り合ってもらった。
構成: 鵜居かよ(編集部)

© 2009ブラック会社限界対策委員会

働いている人、働き始める人へのエールに

  この作品、本当はシャレにできる要素がもっとあったんだけど、時間が経って時代が変わっちゃったんだよね。たぶん企画内容も。

井口  そうそう、企画をいただいた時はリーマンショックの前で、むしろオチャラケのジョークで観てもらう作品になると思っていたら一変。会社の状況もそこに働く人もフリーターもガラッとね。でも、変わってしまった今だからこそ、企業や働く人、これから働こうとする人への「頑張ろう」という、ある種エールになっているんじゃないかな。

池田  不況を知らなかった僕らのような世代が不況を経験して、「何のために働いているんだろう?」って自問自答し始めている時期だと思います。その突破口になるような元気が出る映画ですよね。

  そう、元気を出してもらうためには、社会がこんな状況でももっと遊びの部分を残した方がいいってことで、製作委員会名も「限界対策委員会」に変えちゃいました。

働くことの意味を考え、立ち向かう勇気がもらえる

重松  我が社はいろんな意味でブラック会社で……事件も起こしたし。実は、その事件後、社員は大変疲弊して、働いている事の意味を問うため"働くとは、を話す"みたいな有志の会もできたりしたんです。そんな経験をした立場からも、この映画には「働くってこういうことなんだ」とハッとするような、皆の心に届くエッセンスがあると思いますね。

若林 弊社でも、この作品にインターネット上での連載時に接していた人が多かったのですが、皆、最終的に勇気付けられたそうなんです。まさに"エール"をマ男に贈りながら自分たちが贈られていたんですよね。

関西テレビ放送(株) 編成制作局 プロデューサー 重松圭一(しげまつ けいいち)

ヤフー(株) R&D統括本部メディア開発部 若林由美(わかばやし ゆみ)

(株)共同テレビジョン 制作センター 映画制作部 部長 井口喜一(いぐち きいち)

モチベーションは、この仕事が好き&人との関係

池田  マ男のように僕も、何でこんなことやらなきゃいけないのか、と思うことがあります。マ男の場合は、田辺誠一さん演じる、仕事ができて尊敬される先輩・藤田さんの存在で毎日を乗り切ってきたのですが、皆さんにも、限界を感じたりつらかった時に戦ってこられた理由やモチベーションはあるのですか?

井口  特に制作の現場で働いていた若い時は何度も辞めたい、逃げ出したいと思ったよ。でもなぜしなかったかって考えると、いくら99までやってきても最後までやらないと、0になっちゃうってわかったからかな。それまでの事すべてが無意味になり、しかも仕事も人間関係すら、もうつながらなくなるんだよね。我慢してやってきた結果、今こんな面白い仕事ができてるんだと思うよ。

  僕も昔いた小さな映画会社で、3年間昇給も賞与もなく、少ない給料で我慢してこられたのは、やはり自分がやりたい事で給料が貰えたからだよね。学生時代の仲間に会うと、給料はそこそこ貰ってても皆疲れ切っててね。それで僕に「好きなことで飯が食えてるお前は幸せだよな」って言って羨ましがるんだよ。好きなことのパワーってスゴイよね!

若林  私もそうです。新卒で入った映画関係の会社では、宣伝の業務をしつつ、後輩が入ってこなかったので4、5年くらい毎朝、全新聞のクリッピングと雑誌の整理をしていました。結局、自分の中の能力に限界を感じてしまい、もっと広い観点や視点を身に付けようと飛び出しました。でも、会社は毎日楽しかったんです。やはり好きな仕事に触れている事がモチベーションとなっていたのに加え、社員同士とても仲が良かったからですね。本当に周りに支えられていたと思いますし、今でも財産となっています。

みんなで何か作り上げたという達成感を味わい、やり続けられる

重松  僕は、今のTV局に入社したら上司の煙草を買いに行くのがまず仕事、みたいな環境でした。「一所懸命勉強して大学出て、煙草買いに行く仕事をするつもりはない!」って爆発しそうになったんですが、僕の指導役だった先輩は文句も言わずに買いに走るんです。仕事もできてものすごく良い人、まさに"藤田さん"でした。彼が指導役だったから、辞めるに辞められなかった(笑)。

池田  理不尽な事なんだけど、結局誰かがやらなきゃいけない事ってあるんですよね。そんな中でも、仕事で何か成し遂げて達成感を感じたり、作り上げたという事実が生まれ、それに救われていくんですね、マ男のように。表に立つ人と裏で支える人、両方ないと完成しないんですよね。あ、こう言えてる自分はやはりまだ限界じゃないですね。

アスミック・エース エンタテインメント(株) 映画製作事業本部 池田幸弘(いけだ ゆきひろ)

(株)パルコ エンタテインメント事業局 映像担当 部長 堤静夫(つつみ しずお)

"自分にとって"ブラック会社かどうか、それを知る

  そもそも"ブラック会社"という基準は、人それぞれ違うってことを忘れないでほしい。同じ会社でも、自分はブラック会社だと思っていてもそう思わない人もいる。実際、前職の会社は社長が「俺はいつも崖っぷちでやってる、お前たちもそこに立て。そこで初めて人間としての実力が出る」と言う人だった。そんな所から今の会社に来たから、今の会社しか知らない人が「この会社はブラックだ」と言うと「なんで?」と思うよ。つまりセクハラやパワハラと同様、個人の取り方の違いなんだよね。だからこそ"自分にとって"ブラック会社かどうかを見極めることが肝心になってくるんじゃないかな。

若林  そうですね、たぶんほとんどの人たちは「自分はブラック会社にいる」と思っているだけで、実はどの会社にも多かれ少なかれあったり、自分の知識がないだけだったり、空回りしていただけの事がすごく多いと思います。この映画を、そこを冷静に判断するための指標にしてもらえるといいですよね。本当のブラック会社も存在すると思うので。

皆が感じる、観終わった後の"爽快感"

重松  確かに、この映画ってブラック会社の設定なのにクライマックスではすごく素敵な会社になってて、もはや誰もブラック会社と思ってないですもんね。つまり会社って人の集まりなんですよね。皆がひとつの方向に向かうと、ブラック会社がそうでなくなる。

井口  だから、やはりまず頑張ってほしいよね、限界かもしれないけれど(笑)。

若林  この映画には、自分や周りと重なる人物が必ずいると思います。だからこそ、各シーンがとてもリアルに感じられ、どこにでも同じ様な境遇でもがき苦しんでいる人がいるんだ、と共感できる作品なんですね。皆さんきっと「頑張ってみよう、何か開けるかもしれない」と前向きな気持ちで、爽快にシアターを後にしますよ。

ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない
<ストーリー>
高校中退でニートのマ男まおとこは、母の死をキッカケに一大決心。プログラマの資格を取得して小さなIT企業に就職する。しかし、そこは想像を絶する"ブラック会社"だった! 超過酷で変な職場とクセ者ぞろいの同僚たちにマ男の限界はピーク!
はたして、マ男を本当の"限界"に追い込んだ理由とは? マ男と会社の運命は? 実話から生まれた、勇気と感動の物語。

black-genkai.asmik-ace.co.jp
監督:佐藤祐市『キサラギ』
脚本:いずみ吉紘『ROOKIES-卒業-』
原作:黒井勇人(新潮社刊)
出演:小池徹平 マイコ 池田鉄洋 田中圭 / 品川祐 / 中村靖日 千葉雅子 森本レオ / 田辺誠一
11月21日(土)、全国ロードショー
配給:アスミック・エース

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