何事も継続することは難しい。始めることよりもずっと。
40年間ミシュラン三ツ星を得ているレストラン「メゾン・トロワグロ」は、25年間同じパートナーと継続して日本で事業提携してきた。継続へのこだわりと挑戦。トロワグロのルーツと哲学を探る。
text:羽田祥子(編集部)

三代の親子、「継続」の原点

 フランス・ロアンヌ―パリから約400キロ離れた豊かな自然溢れる地方にトロワグロの本拠地がある。1930年、ジャン=バティスト・トロワグロは駅前のホテル・レストランを買い取った。そこで地方色豊かでシンプルな、しかも革新的な料理を出した。フランス料理の伝統である、ルーを主体とした重いソースは「素材の味を隠す」として嫌い、シンプルな芸術性を目指したのである。
 ジャン=バティストの独創的な発想は広がる。ボジョレーの赤ワインの温度は室温が常識だった。しかし彼はカーヴから出したての少し低めの温度が美味しいと考え、氷水のバスケットに入れてそのままサーブした。またパンで拭って食べていたソースは、そのままでも味わえるようにとソーススプーンを考案。次々に新しい流れを生み出していった。
 50年代、パリで修業を積んだ2人の息子、ジャンとピエールが店を発展させた。55年にミシュランの一ツ星、68年には三ツ星を獲得したのだ。その頃生まれた料理「サーモンオゼイユ」はオゼイユというありきたりなハーブを酸味として使い、低温・長時間調理し、クリームソースでいただく、というものだった。当時非常に斬新だったこの料理は長くトロワグロの看板メニューとなる。

「昨日と同じでないことをするために今日やめる勇気が必要だ」

 3代目ミッシェルのこの言葉は、代々受け継がれたトロワグロ家のDNAだと言ってもいい。本物感、素材感を大切にするミッシェルの料理は、ロアンヌの豊かな自然から生まれたものである。また、父ピエールが日本の初代マキシム料理長として日本に滞在していたことから、ミッシェルにとっては幼い頃から日本は身近な存在で、多くの影響を受けたという。
 小田急百貨店はバブル景気前の84年、新しい食文化を伝えようとトロワグロと提携を始めた。「フランスの味を日本で実現するために試行錯誤が繰り返されました」(商品政策部・井上薫さん)新商品の開発では、日本への造詣が深いミッシェルのアドバイスも生かされているという。以来25年間。これだけ長い間、同じパートナーとの継続した提携は珍しい。

 11月5日、トロワグロブティックがリニューアルオープンした。ミッシェルがドメーヌへ足を運び直接買い付けた希少なワインも買える。あの「サーモンオゼイユ」もデリとして楽しめる。本物の味を気軽に家で楽しむ。そんな贅沢を楽しめるショップだ。本物を気軽に味わえることこそが3代のトロワグロがずっと目指してきたことなのだ。

ショップデータ

トロワグロブティック
(小田急百貨店新宿店本館B2F・ハルクB2F)
カフェトロワグロ
(小田急百貨店新宿店本店8F)
東京都新宿区西新宿1-1-3
TEL 03-3342-1111