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☆アニメのミカタ☆夭折の作家・伊藤計劃が話題。死してなお生き続けるワケとは?

☆アニメのミカタ☆夭折の作家・伊藤計劃が話題。死してなお生き続けるワケとは?

デビューからわずか2年で死去

 2009年に34歳の若さで亡くなったSF作家・伊藤計劃の長編3作品をアニメ映画化する“Project Itoh”が始動。彼の綴った強烈な世界がスクリーンにお目見えする。なぜ今、彼に注目が集まっているのか。魅力を探ってみたい。
 伊藤計劃は、1974年生まれ。デビュー作『虐殺器官』が2006年の小松左京賞の最終候補となり、続く『ハーモニー』で第30回SF大賞を受賞。さらにはフィリップ・K・ディック記念賞で特別賞を受賞するなど、国内外から「期待のSF作家」として迎えられた。しかし作家デビューからわずか2年、肺癌のため早逝。病と闘いながらの作家生活に幕を閉じた。
 プロジェクトのトップバッターを飾る『屍者の帝国』は、彼の未完の絶筆を円城塔が完成させた大冒険長編だ。舞台は“死体蘇生技術”が発達し、屍者を労働力として活用している19世紀末のロンドン。盟友とのタッグが叶った本作が、アニメ化作品としてどのようにスクリーンに登場するのか実に楽しみだ。
 次に公開されるのが、伊藤計劃の名を世に知らしめた『虐殺器官』。世界の紛争地を飛び回る米軍特殊部隊のシェパート大尉を主人公に、各地で紛争を泥沼化させては忽然と姿を消している謎の男との追跡劇を描く物語。そしてラストを締めくくるのが、『ハーモニー』。超高度医療社会となり、万人が健康に暮らせるようになった時代で、“優しすぎる世界”に反抗を試みた少女たちの行く末を描く。

“生きる実感を得ているか?”

 彼の作品に触れた人は誰もが、緻密につくられた世界観に驚くはずだ。情報はデータ化され、個々が管理される。人工知能の研究が進み、人工物にも意識が与えられようとしている。核の脅威にだってさらされている。彼は、人類が進化・進歩する中で、未来に何が待ち受けているのかを圧倒的な想像力で描き出した。そこには、私たちがどこかで抱えている不安が内包され、それぞれを映す現代の物語として寄り添う。
 「死、そして自由とは?」と問うてくるのも、彼の作品の特徴だ。死を目前にした彼の問いかけは、淡々としながらもヒリヒリとした痛みを伴うほどに激しい。しかし彼は、未来への閉塞感や死から逃れられない絶望だけでなく、生きることへの希望も作品に封じ込めた。その溢れ出すきらめきこそ、最大の魅力であるように思う。
 死してなお彼は問いかける。生きる実感を得ているか? と。作品を通して生き続ける伊藤計劃の“Project”を、ぜひ目撃してみては。


MOVIE

『屍者の帝国』10月2日より全国にて
『虐殺器官』11月13日より全国にて
『ハーモニー』12月4日より全国にて
公式サイト:project-itoh.com
ⓒProject Itoh /THE EMPIRE OF CORPSES

Text

成田おり枝(なりた・おりえ)
千葉県市川市出身。大学卒業後、シネコン、ミニシアターでの劇場経験を経て、映画サイトの編集者へと転進。現在はフリーライターとして、映画・アニメを中心に、インタビューやコラムなど日々の取材に奔走中

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