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☆アニメのミカタ☆ 江戸の人々の息遣いが聞こえる、『百日紅~Miss HOKUSAI~』はロックな時代劇!

☆アニメのミカタ☆ 江戸の人々の息遣いが聞こえる、『百日紅~Miss HOKUSAI~』はロックな時代劇!

 国を越え、時代を越え。誰もが同じように悩み、笑い、踏ん張りながら人生を歩んでいると気づくとき、私たちは大きく心を動かされ、生きる勇気が湧いてくるもの。05年に逝去した漫画家・杉浦日向子の同名コミックを映画化した『百日紅~Miss HOKUSAI~』は、色鮮やかな江戸の街に四季折々の情緒を織り交ぜ、破天荒な絵師たちの生き様を描くアニメーション映画。江戸を生きる人々の息遣いが聞こえてきそうな、清々しいエンターテインメント作品だ。
 主人公となるのは、浮世絵師のお栄。父であり、師匠でもある葛飾北斎とともに絵を描いて暮らしている。雑然とした家に集う絵師仲間と騒いだり、犬と寝転んだり、離れて暮らす妹・お猶と出かけたりしながら、絵師としての人生を謳歌しているのだ。
 原作は、江戸風俗研究家で文筆家、若くして亡くなった杉浦が20代後半に描いた伝説的な漫画だ。“百日紅”というタイトルに彼女が託したものとは。わさわさと散り、もりもりと咲く。散っては、また咲く。そんな旺盛な生命力をもった百日紅の花を、90年の生涯において創作意欲を持ち続けた北斎の姿。そして、花を咲かせようと懸命に生きる江戸の人々の姿を照らし合わせたようだ。
 監督を務めるのは、『河童のクゥと夏休み』『クレヨンしんちゃん』シリーズなどの俊英・原 恵一。映画では、華やかな百日紅の花をはじめ、真っ赤な寒椿、真っ白な雪、ざあざあと降り続く雨、抜けるような青空など、季節の移ろいが息をのむような鮮やかさで描き出される。まずハッとさせられるのは、冒頭。エレキギターが鳴り響き、ロックとともに物語がスタート。両国橋から俯瞰で一気に江戸の全景を映し出し、江戸時代の生き生きとした暮らしを表現する。

悩みながらも我が道を進む

 そう、これはただの時代劇ではない。泣き、笑い、精一杯に生きる人々を描くロックな時代劇だ。主人公のお栄は、江戸弁でまくしたてる男前な女。北斎は、ゴミだらけの家でひょうひょうと絵を描くオヤジ。我が道を突き進む姿は、まさにロック!
 一方では、お栄は師匠の父に敵わぬことを自覚しており、「自分の描きたいものはなんだ」と悩む。不器用な恋にも悩む。北斎も、床にふせった娘・お猶の病の進行を怖がる。なんとも人間らしく、江戸の人々も同じようなことに身を焦がしていたのだと気づかされる。いつの世も、人は迷いながら、たくましくあろうと生きてきた。それは思い切り勇気の出ることではないだろうか。
 日常の中に喜怒哀楽があり、感動がある。それを押し付けがましくなく綴る原作同様、原監督はカラリと人生の機微を描き切った。さわやかな春風のような一作とおすすめしたい。


Text

成田おり枝(なりた・おりえ)
千葉県市川市出身。大学卒業後、シネコン、ミニシアターでの劇場経験を経て、映画サイトの編集者へと転進。現在はフリーライターとして、映画・アニメを中心に、インタビューやコラムなど日々の取材に奔走中。

MOVIE
『百日紅~Miss HOKUSAI~』

2015年5月9日よりTOHOシネマズ 日本橋、
テアトル新宿ほか全国にて
配給:東京テアトル
公式サイト:sarusuberi-movie.com
2014-2015杉浦日向子・MS.HS/「百日紅」製作委員会

文|成田おり枝

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