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山本耕史「役を『生きる』ということ」

山本耕史「役を『生きる』ということ」

幅広い活動を続ける山本耕史が、自ら本業と言い切る舞台上で、3年連続となる「ヘドウィグ」を「生きる」意味とは?

山本耕史インタビュー

自分にあるものしか人間は絶対に表現できない

 性転換手術に失敗し、裏切られながら生きていくヘドウィグを3年連続で演じる。ヘドウィグ=頭(head)のカツラ(wig)。ブロードウェイで上演され、全世界を熱狂させたロックミュージカルである。
 芸歴33年、33歳。「本業は舞台役者」。『レ・ミゼラブル』『RENT』などのミュージカルのほか『新選組!』『華麗なる一族』などのテレビドラマにも出演するなど活躍の場は広い。
 21歳で出演した『RENT』で強烈な衝撃を体感した。「この作品はロックミュージカルのくくりを超えたパフォーマンスだと思うんですよ。泣きたいのに歌があるから泣けない、それでも耐えられずに涙が出てしまう。こんなにも自分の力をステージの上で出すことができる、じゃあ僕はこういうことをやる人なんだな、と。それまで僕がやっていたのはプロローグに過ぎなかった気がしました」。それまで「呼吸するように自然だった」役者の仕事が、はっきりと目的意識を持った仕事に変わったという。

 幅広い役柄を「演じる」のではなく「生きて」いる。「『その役、まんまだよね』って言われると、しめしめって思うんですよ。真逆の役の時も『それ、まんまだよね』って(笑)。自分が持っているいろんな部分をどれだけ本物のように見せるかですね。自分にあるものしか人間は絶対に表現できないと思う。
 舞台は特にですが『あ、今この役の心が動いた』という時、観客って見るんですよ。心が止まっている役は見えない。いつも役の心が不安定にゆらゆら揺れて、それが『グラッ』と動いた時に観客は何かを感じるんです。芝居ではなく、本当に心が壊れた時に泣いたり怒ったりする。演じるんですけど、なりきるのとも違って『生きる』。稽古を積んで頭を使わずにセリフが出るようになった時、心ががーっと動きだす。そのための稽古なんです」。

 プラトンの「饗宴」をコンセプトとする楽曲「The Origin Of Love(愛の起源)」が作品のテーマの一つだ。神に切り裂かれた人間が自分の片割れを求めて彷徨(さまよ)う、それが愛の起源だとヘドウィグは歌う。「人は一人で生きてるんだってヘドウィグをやってると思います。みんな一人だからみんな助け合える。誰か一人じゃないと思うんですよ、片割れって。
 一人の男性のために自分の生殖器を切り、相手に捨てられ、新しい彼に裏切られ、何とか取り繕うけれどその繰り返しで生きている。派手な化粧もカツラも全部フェイク。まさに僕らですよ。僕らはいろんないらないものを背負っているけれど、ひとつの生命体にとっては何も意味もない、と。そこを表現していることがこの作品のすごさです」。
 回を重ねるほど「衝撃的なものを見逃して損した!」と多くの俳優に言われるという。だから「今度こそ見逃さないでください」。


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ロック・ミュージカル「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」
1960年代、旧東ドイツに生まれたヘドウィグは、愛と自由を手に入れるために性転換手術を受ける。しかし手術の失敗で股間に「アングリーインチ(怒りの1インチ)」が残ってしまった。男でもあり女でもあり、そのどちらでもないロックシンガー、ヘドウィグは幾多の出会いと別れを経験し、己の存在理由を問い続けながら「愛」を探し求める。ブロードウェイをはじめ世界各国で公演され、熱狂的な支持を受けた。
出演:山本耕史、ソムン・タク
作:ジョン・キャメロン・ミッチェル

◎東京公演: 12月2~6日 @Zepp Tokyo
お問い合わせ: サンライズプロモーション東京 0570-00-3337
◎大阪公演: 09年11月27日
@大阪厚生年金会館 芸術ホール
問: キョードーチケットセンター 06-7732-888

ヘアメイク:西岡和彦(bud's hair) スタイリスト:岡野友美
衣装協力:スーツ、シャツ WILD PARTY/渋谷109-2 TEL 03-3477-8172
文:羽田祥子(編集部) 撮影:川隅知明

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