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松雪泰子「魔性の女」

松雪泰子「魔性の女」

奇才ケラリーノ・サンドロヴィッチ作・演出の舞台『東京月光魔曲』で、松雪泰子は男を虜にする“魔性の女”を演じる。キーワードは「多面性」。彼女こそがその多面性と、その存在自体に引き込む空気感を備えた「魔性の女」なのかもしれない。

「舞台は思い切りお芝居ができる場所」

言葉の紡ぎ方やリズム感に富んだ会話表現にファンが多い奇才ケラリーノ・サンドロヴィッチ作・演出の舞台『東京月光魔曲』に出演する。
役者・観客両方の立場で舞台が大好きだ。「役者として、映画は監督のもの、舞台は役者のものという感覚があります。舞台は思い切りお芝居ができる場所ですね。観客としては日常から完全に離れられるし、その瞬間だけトリップできる場所という気がしますね。すべてが自分の感覚にヒットするとは限らないですが、何かひとつセリフが心に突き刺さって、元気になったり、考えるきっかけをもらったり、気持ちが豊かになります」。
最近ミュージカル『レント』を見て“NO DAY BUT TODAY”という歌詞に号泣したという。「『日常はないけど、あるのはただこの日だけ』という意味です。私自身、いつも存在するのはこの瞬間だけだと思っているんです。過去も未来も本当はない。そういった感覚にとらわれると自由じゃなくなる。だからこそ今この瞬間をすごく大事にしよう、楽しもう、と。本質的なところに響く言葉にとてもヒットしました」。

今回の作品では男を虜にする魔性の女を演じる。「多面性があって一瞬にしてその存在に引き込んでしまうのが『魔性』だと思います。相手は引き込まれていることにすら気付かない、そんな空気を放つ人でしょうか」。
媚を売るのとは違う。意思がなくてもその人の存在に吸い込まれてしまう。「見える印象を常に裏切って捕まえどころがない。でもそれを意図的に狙っていないというイメージですね」。

大事なのは“毎瞬”の切り替え

ケラリーノ・サンドロヴィッチ作品の根底には「人生は辛くて悲惨なもの。この世は矛盾だらけ。でも生きていくしかない」という現状認識がある。ひとつの手段として笑いを糧にそれを乗り切る。だからハッピーエンドもアンハッピーエンドもない。
30~40代は仕事量や責任も増大し、子育てとの両立に苦しむ女性も多い。彼女はそれを見事に乗り切っている。「生きるって大変じゃないですか。苦しくて当たり前、矛盾があるのが世の中、それを受け入れて楽しんでいこうと思っています。どうやってこなしたら面白いかな、と思うようにします。
仕事の時、子供といる時、自分の時間を楽しむ時と“毎瞬”の切り替えを大事にしていますね。全部同時にやろうとするのは絶対無理。ただ何か栄養がないと苦しいですよね。すべて捧げっぱなしでも何もなくなってしまう」。大切なのは大変な状況を楽しむ心だという。
彼女の言葉を借りれば、彼女こそが多面性と、その存在自体に引き込む空気感を備えた「魔性の女」なのかもしれない。


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Bunkamura20周年記念企画 『東京月光魔曲』
独自の世界観を繰り広げるケラリーノ・サンドロヴィッチが書き下ろすBunkamura20周年の最後を飾る贅沢な舞台である。昭和初期のモダン都市東京を舞台に、日常と非日常、現実と非現実とが表すKERAマジックリアリズムの世界。谷崎潤一郎もひれ伏すエロティシズムと海野十三も驚愕の奇天烈さで描く。大晦日にはKERAとキャストによるカウントダウン・スペシャルバージョンの上演を予定している。
作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ 出演:瑛太、松雪泰子 他
2009年12月15日(火)~2010年1月10日(日)
Bunkamuraシアターコクーン
10月3日(土)一般発売〈カウントダウン・スペシャルバージョンは10月24日(土)一般発売〉
問い合わせ先 Bunkamura 03-3477-3244

〈表紙〉ヘアメイク:中野明海・スタイリスト:長谷川みのり
〈衣装協力〉ピアス¥10,500、パヴェバングル 各¥23,730
(AGATHA PARIS/アガタ パリ伊勢丹新宿店 TEL 03-5919-3580)
文:羽田祥子(編集部) 写真:川隅知明

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