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インタビュー/interview
表紙の人
別所哲也「言葉の向こう側を表現したい」
蜷川氏の知的なたくらみに賛同
この秋、蜷川幸雄演出作品に初めて取り組む。舞台『コースト・オブ・ユートピア』は、激動の19世紀ロシアで自由を求め、革命の礎を築いた実在の若者たちの物語だ。同氏『グリークス』を超える本編9時間の大作だ。
とにかく難しい。「台本が重くて手首を痛めた」と出演者に言わしめた長さはもちろん、テーマや設定が難解で、キャスティングに難航した。蜷川氏は製作発表の場で「日本の俳優の知的水準が落ちた。このテーマを面白がって果敢に取り組もうという姿勢の俳優が少ない」と言い放った。蜷川氏が「知的なたくらみに賛成してくれた」という出演俳優陣は豪華。その一人が別所哲也だ。
蒸留水のようなピュアな感情を伝える
本作品のテーマを別所は深く理解している。「西欧で起きた産業革命以降のヨーロッパに追い付けないでいる自分たちへの焦り。スラブ民族であり、白人だがヨーロッパ的ではない自分たちに葛藤し、自分は誰かというアイデンティティ・クライシスに立ち向かっています」。
現在の日本は平和である。「まっすぐ追いかけるべき西欧の世界観があるということがある意味、羨ましい。きっと幕末の志士は、日本のあるべき姿とか思想、イデオロギー、哲学に目覚めて悩んだはずです。演じていると自ずと熱くなっていく」。
あるべき自分と今ある自分の間で揺れる人間像はきっと各国共通だ。「人間とは理想を語るもの。理想の恋愛もあり、禁断の恋愛もあり、それも含めて人間臭い。この話はそういったことにもまっすぐ向き合っています。どの時代でも同じように大人になる過程で考え、悩む。遠い異国ロシアの歴史物語としてではなく、もっと純化した、蒸留水のようなピュアな感情がきっと伝わると思います」。
「言葉にした瞬間に消えてしまうものもある」
別所が演じるのは、文学や言葉の力を信じる作家志望の若者、イワン・ツルゲーネフ。著書『狩人日記』は二葉亭四迷の翻訳により『あひびき』として日本に紹介された。夫と子がいるオペラ歌手に一目惚れし、彼女を追ってパリに移り住む色男の側面もある。
ツルゲーネフ同様、文学や言葉の力を信じる。「でも、言葉にした瞬間に消えてしまうものもある。言葉になる前の感覚、言葉の向こう側にあるものを信じたいですね。セリフが全部聞こえていても伝わらない芝居がある。そういう演技を目指したくないし、蜷川さんの求めるものもそうではないと思う」。
別舞台の本番を抱え、かなり遅れて稽古に合流した。「この焦りはロシアと同じ。みんなが先に行ってしまっている切迫感をそのまま稽古にぶつけます(笑)」。
すべてを拾って自分の力に変える強さが、魅力だ。
現代演劇界屈指の知性派劇作家トム・ストッパードが5年以上の歳月をかけた3部作。新時代の幕開けをいち早く察知したロシアの知識人たちが、理想を掲げて論争を交わし、行動を起こし、やがて挫折を経験しながら、それでも前を向こうとする姿を描く。
演出: 蜷川幸雄
出演: 阿部寛、勝村政信、石丸幹二、池内博之、別所哲也、長谷川博己、水野美紀、栗山千明、麻実れいほか
9月12日(土)~10月4日(日) Bunkamuraシアターコクーン
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