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伊原剛志インタビュー「世界へ挑む二人の日本人(サムライ)」

映画『ラスト・ナイツ』

伊原剛志インタビュー「世界へ挑む二人の日本人(サムライ)」

世界30ヵ国で公開される
紀里谷和明監督ハリウッドデビュー作が
いよいよ11月14日から日本で劇場公開される。
名優、クライヴ・オーウェンやモーガン・フリーマンの
心を動かした、権力に挑む騎士たちの姿を描くヒューマン・ドラマだ。
名だたる世界の実力派俳優たちと肩を並べ、
その存在感を知らしめた
唯一の日本人俳優・伊原剛志に迫る。

「忠臣蔵」は世界を魅了する物語

 赤穂浪士、大石蔵之介、吉良上野介(きらこうずけのすけ)とくれば、もちろん「忠臣蔵」。日本人に馴染の深いこの物語は、元禄14年(1701年)に江戸城松之大廊下で起きた刃傷事件に端を発し、主君・浅野内匠頭(あさのたくみのかみ)の無念を晴らさんと赤穂藩主家老・大石蔵之介をはじめとする赤穂浪士たちによる仇討ち劇として有名だ。
 忠義や名誉を重んじる日本独自の武士道が描かれたこの「忠臣蔵」は、実は海外でも人気が高く、今回紹介する映画『ラスト・ナイツ』の脚本も、二人のカナダ人が「忠臣蔵」を題材に、心震えるような騎士道のドラマとして描いたものだ。
 そのオリジナルの魂を忠実に受け継いだ脚本と出合った監督・紀里谷和明は、世界に向けて映画化することを決意。5年の歳月を経てハリウッド映画『ラスト・ナイツ』を完成させた。
 紀里谷監督はこの作品を製作するにあたり、なんと英米の大物俳優に出演を依頼。クライヴ・オーウェンに騎士ライデン役を、モーガン・フリーマンには高潔な領主バルトーク役をオファーした。この二人の名優をはじめ、各国を代表する俳優やアクションチームの参加が次々と実現し話題となった。
BUAISO_0036_1「クライヴ・オーウェンやモーガン・フリーマンがこの作品に参加した理由の一つには、脚本のベースに『忠臣蔵』があったからだよ」と教えくれたのは、日本から唯一参加した俳優の伊原剛志だ。
「二人とも『忠臣蔵』を知っていて、今回のオファーに『ぜひ参加したい!』と快く申し出てくれたんだ。他にもこの作品には、世界中から大物俳優や個性派俳優がこぞって参加している。それは、『忠臣蔵』をベースにした魅力的な脚本に依るところが大きかったと思う」
 主君への揺るぎない忠誠心を胸に、難攻不落の城と不条理な権力に挑む、気高い騎士たちの姿を描くヒューマン・ドラマは、日本人だけではなく、世界中の人々の心を動かすストーリーのようだ。
 今回、日本から紀里谷監督と共にこのハリウッド映画に参加した伊原は、「この『ラスト・ナイツ』は、日本のコンテンツや日本人の可能性について、世界に挑戦した作品として、多くの方に楽しんでもらえる映画に仕上がっている」と自信を見せた。

世界へ挑む二人の日本人

 この作品で伊原が演じた護衛官イトーは、ライデンの宿敵ギザ・モットに仕える身だが、共に騎士としての誇りを持ち、主君への忠義を備えた人物として描かれている。騎士としてライデンに敬意を払い、領主や領地を失い堕落していくように見える彼に憐みの念を抱く。しかし、お互いの運命には逆らえず、最後はライデンと剣を交えて死闘を繰り広げることとなる。
「仕えた主がいかに悪人であれ、忠義を尽くすのが騎士道。それがイトーという男に与えられた生き方だと感じながら演じた」とする伊原は、この役を演じる上で、紀里谷監督と幾度となく交えたディスカッションのことを懐かしそうに振り返った。
「紀里谷監督に演出について相談すると、『いいアイデアがあればもっと出してほしい』と積極的に耳を貸してくれる。例えば、ライデンとイトーが剣を交えて戦うシーンのラストは、私が提案したアイデアが活かされていて、ライデンの振るった剣がイトーの剣を二つに折り勝敗を決します。ライデンは主君バルトークから授かった剣に護られ、イトーはその部分の違いで敗れ去る。騎士としての腕は互角でも、最後は二人が持つ剣への想いの違いが勝敗を分けるといった演出です」
 海外の映画監督は、シーンごとで俳優に意見を求めることが多い。自分の意見を主張することが当たり前の海外では、俳優にも自分の役、シーンについて主張することが求められる。これまでも、『硫黄島からの手紙』(クリント・イーストウッド監督)やブラジル映画『汚れた心』(ビセンテ・アモリン監督)など、海外の映画に出演してきた伊原は、それら監督に通じるものを、紀里谷監督にも感じたようだ。
「過去の映像ではCGを多用した作品が多く、その印象で語られることが多いようですが、世界中の実力派俳優に対し、しっかりとした演出ができる監督だということを、この作品を通して多くの方に理解されることでしょう。このスケール感の映画を海外で作ることができる監督は、現在の日本では紀里谷監督しかいないんじゃないかな」と高く評価してみせた。
 伊原自身も、「今後もチャンスがあれば、どんな国の作品にでもチャレンジしていきたい」と、世界への意欲を覗かせる。
 監督と俳優という立場で臨んだ今回のハリウッド映画は、二人に新たな道を開いたようだ。


ラスト・ナイツStory
とある封建国家を舞台にした物語は、高潔な心を持つ領主、バルトーク卿(モーガン・フリーマン)が悪徳大臣ギザ・モット(アクセル・ヘニー)の奸計に陥り、いわれなき反逆罪に問われるところから始まる。腐敗がはびこる国の未来を憂うバルトークは皇帝から死刑を宣告され、彼の忠実な部下である騎士団の隊長ライデン(クライヴ・オーウェン)が斬首の役目を命じられる。バルトークから「使命を果たせ」と告げられたライデンは、断腸の思いで敬愛する主君の首に刀を振り下ろした。それから一年後、主君を失った騎士達は刀を捨て、平民として働きながら密かに報復の準備を進めていた。ところが肝心の隊長ライデンは、酒場に入り浸り、ひたすら無為な日々をやり過ごしていた。はたして“最後の騎士たち”は、非業の死を遂げた主君の仇を討つことができるのか。難攻不落の要塞と化した悪徳大臣の城を舞台に、誇りを懸けた大決戦がついに始まる……。

監督:紀里谷和明
配給:KIRIYA PICTURES/ギャガ
©2015 Luka Productions.
11月14日、 TOHOシネマズ スカラ座他にて全国ロードショー
※本編115分/日本語字幕:戸田奈津子/PG-12

出演:クライヴ・オーウェン モーガン・フリーマン クリフ・カーティス アクセル・ヘニー ペイマン・モアディ アイェレット・ゾラー ショーレ・アグダシュルー 伊原剛志 アン・ソンギ

Profile
伊原剛志(いはら・つよし)
1963年、大阪府出身。『コータローまかりとおる!』(84)で映画デビュー。その後は映画、TV、舞台で幅広く活躍。主な映画出演作は『半落ち』(03)、『叫』(06)、『十三人の刺客』(10)、『愛と誠』(12)、『BRAVE HEARTS 海猿』(13)、『超高速!参勤交代』(14)、『相棒 −劇場版Ⅲ− 巨大密室!特命係 絶海の孤島へ』(14)、『ストレイヤーズ・クロニクル』(15)など。クリント・イーストウッド監督作品『硫黄島からの手紙』(06)ではバロン西を演じ、ブラジル映画『汚れた心』(11)ではプンタデルエステ国際映画祭主演男優賞を受賞した。

文|江崎充哉(編集部) 写真|福永晋吾 スタイリング|山本隆司 ヘアメイク|山邊裕之(ルィーダ)

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