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田中哲司インタビュー「堕ちていく大学教師とオリーブの樹」

舞台『オレアナ』

田中哲司インタビュー「堕ちていく大学教師とオリーブの樹」

舞台をはじめ、映画、テレビなど200本を超える作品に出演し、コミカルからシリアスまで、幅広い役柄を演じてきた田中哲司。舞台では主役を務め、映画やテレビでは名脇役として多くのファンに支持されている。今回、田中が出演する舞台『オレアナ』は、共演の志田未来とともに緊迫のシーソーゲームを繰り広げる話題作。そんな舞台への意気込みについて聞いた。

彼女はそれを“セクハラ”と呼んだ。
大学教師と女子学生。
二人だけの研究室で、
本当は何が起こったのか?
「被害者か…、加害者か…。」
緊迫のシーソーゲーム。
全世界を話題の渦に巻き込んだ
密室のパワープレイ。

田中哲司 何ともセンセーショナルなキャッチコピーが踊るこの舞台『オレアナ』は、映画『郵便配達は二度ベルを鳴らす』など、現代の錯綜する人間関係を描かせれば、右に出る者がいないと言われる米演劇界の鬼才デイヴィッド・マメットの代表作。1992年に初演されるやいなや、アメリカ中を議論の渦に巻き込んだ衝撃作だ。日本でも1994年に上演され、セクシャル・ハラスメントの問題定義をはらんで話題となり、その年の「読売演劇大賞・優秀作品賞」を受賞した。1999年には長塚京三×永作博美の出演で再演されるなど、話題に事欠かない作品である。
 2015年秋、16年ぶりに日本で再演されるこの舞台に立つのは、田中哲司と志田未来の二人。役者としての経歴と実力を備えた二人が大学教師と女子学生を演じる。そのストーリーはこうだ。
 憧れの終身在職の権利に手が届くところまで来た大学教師のジョン(田中)は、安定した晩年の設計図、新居の契約のことで頭がいっぱいだ。その彼の研究室に一人の女子学生キャロル(志田)が現れ、試験にパスしなければならないと懇願する。ジョンはキャロルと会話を続けながらも、新居の契約のことで度々鳴る電話に出るなど半分上の空だ。しかし、紳士的にキャロルの相談に乗るような態度を取っているうち、その会話の優位性はいつしか女子学生の方に移っていく。そして、大学教師はセクシャル・ハラスメントで訴えられてしまう。約束された未来を掴み損ね堕ちていく大学教師・ジョン――。
 エリートが徐々に壊れていく様を演じることに定評のある田中にとって、まさにはまり役だと感じるのは私だけだろうか? 期待感溢れるこの舞台『オレアナ』を、田中はどのように捉え、大学教師・ジョンを演じるのだろうか。
「今回の舞台では、最初から最後まで志田さんと二人だけの芝居が続きます。二人とも舞台にずっと出っ放しで、台詞の分量もほぼ変わらない。役者にとっては負担が多い作品ですね。でも、僕は相手役に頼って行くタイプなので、初舞台を踏む志田さんにとっては頼りないかもしれません。しっかりしなきゃとは思っているんですけど。ジョンの役作りについては正直まだ何も考えていません。いつも舞台では、稽古に入ってから演出家の要望に合わせて役作りをします。まだ稽古前(インタビュー時)のこの『オレアナ』に関しても同様です。僕は普段から事前に役作りはしない方で、舞台だけでなく、映画でもドラマでも、求められた役にどうとでも対応できるような状態で常に臨んでいます」
 多くの監督や演出家と仕事をし、多彩な役柄を演じる田中にとって、ニュートラルな状態に身を置くことが、あの味のある演技につながっているようだ。いずれにしても、新たな翻訳で挑む今回の二人芝居。それも相手が志田未来とくれば、新たな田中版大学教師・ジョンが見られるに違いない。

作品全体を俯瞰で捉えて演じる

田中哲司 最近、作品に味わいや深みを与える「名脇役」に注目が集まっている。そんな存在の一人である田中にとって俳優としての拘りとは。
「脇役として主役を盛り上げるとか、脇を固めるといった意識をしたことはありません。どちらかと言うと、常に作品全体のことを考えて演技をする方です。例えば、映画などで15分出演する場合、その15分が作品全体の中でどういうテイストで、どんな意味をもつかを考えて演技に臨みます。常に作品全体を俯瞰で見て、作品を捉えるようにしています」
 役者として冷静な田中も、プライベートでは、最近スペインから輸入した樹齢100年を超すオリーブの樹にハマっているという。そんな彼からブアイソー読者に向け、心温まる言葉をプレゼントされた。
「俳優は特別な仕事ではなく、どちらかといえばビジネスマンに近い存在です。僕も昔はなんでもがむしゃらで、40代になってやっと自分の身体や生活を大切にするようになりました。全てを真面目に一生懸命にやりすぎると精神バランスを崩してしまうので、皆さんも抜けるところでは抜いて、心のバランスを保つようにしてください。いい意味でごまかせるところは、ごまかしつつという感じでしょうか(笑)」


田中哲司Story
昇進を目前に控え、安定した晩年の設計図で頭がいっぱいの若き大学教師[ジョン]。一人の女子学生[キャロル]が彼の研究室を訪れ、ジョンの授業についていけないとパニックに陥り、どうか単位を取らせて欲しい、と涙を浮かべて懇願する。彼女を慰めようと、紳士的な態度で相談に応じるジョン。しかし後日、キャロルがジョンを“ある理由”で大学当局に訴えたことにより、前途洋々だったはずの彼の未来は打ち壊されていく……。言葉を尽くせば尽くすほど深まるディスコミュニケーションの溝。彼女が彼を訴えた“理由”とは? 彼は彼女に“何を”したのか?

作:デイヴィッド・マメット
翻訳:小田島恒志
演出:栗山民也
出演:田中哲司・志田未来

●公演期間
[東京公演]2015年11月6日(金)~29日(日)パルコ劇場
[豊橋公演]2015年12月2日(水)穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール
[北九州公演]2015年12月5日(土)~6日(日)北九州芸術劇場・中劇場
[広島公演]2015年12月8日(火)アステールプラザ大ホール
[大阪公演]2015年12月12日(土)~13日(日)森ノ宮ピロティホール

●お問い合わせ:パルコ劇場
TEL 03-3477-5858 www.parco-play.com

Profile
田中哲司(たなか・てつし)
1966年2月18日生まれ、三重県出身。舞台・映画・TVドラマと多岐にわたり出演。近年のおもな映画出演作に『アウトレイジ ビヨンド』(12/北野武監督)、『そして父になる』(13/是枝裕和監督)、『愛の渦』(14/三浦大輔監督)、『ビリギャル』(15/土井裕泰監督)。ドラマ出演作に、NHK大河ドラマ『軍師官兵衛』(14)、『闇の伴奏者』(15・WOWOW)、『ゴーストライター』(15・CX)、『ヤメゴク〜ヤクザやめて頂きます〜』(15・TBS)などに出演。舞台では、『ザ・キャラクター』(09/野田秀樹演出)、『港町純情オセロ』(11/いのうえひでのり演出)、『ザ・キャラクター』(11/野田秀樹演出)、『浮標』(11・12/長塚圭史演出)、『断色』(13/いのうえひでのり演出)、『冒したもの』(13/長塚圭史演出)、『背信』(14/長塚圭史演出)、『RED』(15/小川絵梨子演出)など。

文|江崎充哉(編集部) 写真|福永晋吾

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