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天海祐希インタビュー「凛とした身熟しに秘めた熱き情熱」

ゲキ×シネ『蒼の乱』

天海祐希インタビュー「凛とした身熟しに秘めた熱き情熱」

2014年春、東京と大阪で上演された劇団☆新感線『蒼の乱』は、伝説の武将・平将門の一生をモチーフに、若く奔放な若武者を愛し、魂を分け合う同志としてともに闘うひとりの女性(ヒロイン)の鮮烈な生を描いた、壮絶な歴史ファンタジー作品。今回、その『蒼の乱』がゲキ×シネ※として全国の映画館で上映される。
ヒロイン蒼真(そうま)を演じた女優・天海祐希が作品への思いを語った。

臨場感あふれる舞台を映像化

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「理想の女性上司」として6年連続1位に選ばれる天海祐希。頼もしいイメージからか、女性からの人気も高く、BUAISO読者にとっても気になる存在に違いない。その彼女が主演を務めた舞台『蒼の乱』が、今回映像作品としてスクリーンに登場する。
 天海にとって前作『薔薇とサムライ』から約4年ぶりとなった劇団☆新感線の舞台『蒼の乱』は、将門の乱を新解釈で描いた壮大な物語。将門小次郎役を新感線初参加の松山ケンイチが演じ、同劇団に3度目の出演となる早乙女太一や演劇界の重鎮・平幹二朗の参加なども話題となり、多くの人々が劇場に足を運んだ。
 ファンならずとも気になるこの舞台。新たな視点で構成された本作ゲキ×シネ『蒼の乱』は、舞台を観劇した人にも新鮮に映ることだろう。将門の妻・蒼真を演じた天海は、「見どころは全部です!」と自信たっぷりに話し始めた。
「とてもスケールの大きなお話しで、スピード感があり、息もつかせぬストーリー展開で、観終わった後にスカッとしていただける作品に仕上がっています。闘いの場面も多いので、男性は血湧き肉躍るのではないでしょうか」
 なんとも期待せずにはいられないこの作品。劇中で彼女はハードロックからバラードまでを歌い上げ、優雅な舞や華麗なアクションを魅せる。そして、凛々しき女性から、愛に揺れる心情までをも繊細に演じきっている。

個性豊かな演者たち

「スピード感のある殺陣も見どころの一つです。役者は満身創痍で演じていますが、それを微塵も感じさせないくらい、みんなステージの上で動き回ってくれています。特に激しい殺陣のシーンが多かった太一くん(早乙女太一)は、殺陣の直後にセリフを放つシーンで、呼吸を整えるのが大変だったようです。でも、稽古後半になると息が上がることもなく、凄いと感じました」と舞台裏のエピソードなども、気さくに明かしてくれる彼女。気取りがない口調や、一つ一つ言葉を選びながら丁寧に話す彼女の誠実さに、共演者やスタッフが魅了されるのも納得できると感じた。
 この作品では個性的な共演陣のことを外すことはできない。そちらも気になるところなので、稽古や舞台、本作の撮影など、共演者とのエピソードについて掘り下げて聞いてみた。
「先ほどの太一くんは、普段は無駄口をたたくことのない寡黙な人。でもやるときはやるよって感じが現れていて、常にチャレンジする姿勢が素敵でした。また、平幹二朗さんとご一緒できたのがとても嬉しかったですね。平さんは誰よりも気持ちが若くていらっしゃって、あれだけのキャリアと才能をお持ちなのにとても謙虚な方。公演中は劇場近くのスーパーマーケットで晩ごはんを買って楽屋入りされるなど、おちゃめな一面も拝見できました。そして、梶原善さんは、劇場でお会いしたり、舞台を拝見したりするのに、一緒にお芝居する機会がなかった方。今回やっと共演が実現しました。でも、舞台上ではラストに少し絡むだけだったのが残念でしたが、善ちゃん(梶原善)ならではの、あのしたたかな感じの演技がとても見事でした。松山ケンイチさんは、これが舞台2作目で、ご本人は経験不足だと言っていましたが、そういったケンちゃん(松山ケンイチ)だからこそできた将門だったと思います。初々しくて、真っ直ぐで、朴訥(ぼくとつ)としていて、純粋で……。いい意味で都会的じゃない魅力に溢れていました。洗練された太一くんの殺陣とはまた違う、勢いで押す力強い殺陣が松山将門の魅力でしたね」

天海祐希と蒼真を重ねて

 舞台の楽しさを凝縮したゲキ×シネの上映時間は2時間48分。これだけのスケールの舞台ともなると、出演者、スタッフともに相当な苦労があったに違いない。そこで、苦労した点について質問をぶつけてみると……。
「もちろん苦労した場面はたくさんありますが、それを言ってしまうと、『ここ苦労したんだよね~』って見られちゃう。それに、私たち役者は『なんでもできますよ』、『苦労なんてないですよ』って顔をして演じるのも仕事なので、この質問の答えは『ない!』ってことにしておいてください(笑)」と悪戯な微笑みを返してきた。それではと、今回一番楽しめたシーンを尋ねてみると、「私が演じたシーンなら、将門御前となって登場する場面は、演じていてとても楽しかったですね。“バサッ!”と敵陣幕を斬って登場するシーンや貧しき民を引き連れて歌うシーンとかね」と嬉しそうに語った。
 実はこのシーンの前後で、彼女の印象がガラリと変わったと感じた。それまでは、自分が経験した同じ過ちを小次郎に繰り返させないため、自らにタガをはめ、小次郎を必死に止める女性といった印象だった。しかし、行方知れずとなった小次郎に代わり、民を護るために将門御前となって立ち上がってからの蒼真は、まさに天海祐希のイメージそのものので、強くて頼れる女性として光り輝いていく。ぜひ、このシーンを劇場で確かめてほしい。

劇団☆新感線の魅力

 役者から絶大な支持を得る劇団☆新感線。天海自身も本作品で3回目の舞台となる。この劇団の舞台に俳優たちが魅了される理由について、彼女はこう分析してみせた。
「とにかく、演出のいのうえひでのりさんや作家の中島まことさんの、出演者への愛情が半端ないんです(笑)。役者一人ひとりの魅力を引き出すのがとてもお上手で、それは客席から見ていても感じとれるほど。だから、新感線の舞台を見ていると、どの役者さんもとても愛おしく思えてしまう。やはり観る側ではなく、一緒に演じる側に行きたいと感じさせる、劇団員それぞれの人間力の高さが、この劇団の魅力だと感じます。もしかしたら、私の新しい魅力を引き出してくれるじゃないか……。という期待感が常にあります。昨年の舞台や今回の映画を見てくれた人が、『以前の天海とは違った魅力を発見した』と思っていただけたら嬉しいです」と明るい表情をみせ、「この『蒼の乱』で得た宝物を私自身が感じとれるのは、きっと何年か先になるかと思いますが、いつの日か私の芝居に現れることを、今から楽しみにしています」と目を輝かせてみせた。

女優・天海祐希として

 作品ごとに見せる表情が、多彩な女優・天海祐希。特に主演を務めることが多い彼女は、テレビや映画、舞台により、役作りの違いなどがあるのだろうか。
「作品に取り組む際には、しっかりと準備をして、一つの役を作り上げていきます。作品に臨む姿勢に違いはありませんが、ドラマ、映画、舞台で、役作りにかけられる時間が少しずつ違っています。スピード感があるのがテレビの連続ドラマ、もう少し長いスパンで撮影を続けていく映画、一つの作品を、何度も繰り返し演じることができる舞台。一つの作品に関していえば、もちろん舞台の方がスペシャリストになりますね。ドラマや映画は、毎回演じるシーンが違うので、瞬発力や持続力が大切です。ただ、一つの役に向き合う気持ちは変わりませんし、その瞬間に生まれる何かを感じ取りたいという新鮮さを忘れてはいけないと思っています」
 それでは、常に作品に向き合うために、役者として普段から準備しておくこと、心がけるべきこととは?
「舞台をはじめ映画、ドラマなど、いろいろな作品を見たり、本を読んだり、自分の心、感情を動かす経験を毎日しておいた方がいいですね。また、好みとは異なる作品を敢えて見ることも、その理由を確認するのに有効です。なので、テレビの連続ドラマの第1話はすべて録画して、必ず見るようにしています。また、他の人が評価しているものも見るように務めています。舞台などでご一緒した役者さんの作品を見に行くのも、自分が知らなかったジャンルに出合えたり、面白いって思える脚本家や演出家を知るいい機会になりますね」


ゲキ×シネ『蒼の乱』

ゲキ×シネ 『蒼の乱』

Story
男は名を捨てた ──国を守るために。女は剣を取った──男の魂を救うために。国を追われ孤独に生きながらも、優しく強い海のような女─蒼真(天海祐希)。不器用ながらも、真っ直ぐに生きる風のような男─将門小次郎(松山ケンイチ)。二人は出会い、やがて結ばれる。だが、迫り来る戦火が二人の運命を大きく揺り動かす!

作:中島かずき
演出:いのうえひでのり
出演:天海祐希、松山ケンイチ、早乙女太一、梶原 善、
森奈みはる、粟根まこと、高田聖子、橋本じゅん、平幹二朗ほか
映像製作:イーオシバイ
配給:ヴィレッヂ ティ・ジョイ
著作:ヴィレッヂ・劇団☆新感線
www.aonoran.com

Profile
天海祐希(あまみ・ゆうき)
宝塚歌劇団を退団後、1996年から女優として本格的に活動を開始。性別、年代を問わず幅広い層から人気があり、CM、ドラマ、映画、舞台へ活躍の場を広げている。代表作は、『女王の教室』『Around40~注文の多いオンナたち~』『BOSS』『緊急取調室』『お家さん』などがある。

ゲキ×シネとは

※舞台のエッセンスを、十数台のカメラで完全収録。最新のデジタル映像技術を駆使した編集、ハリウッドでのリ・レコーディングを経て磨きをかけ、映画館で体感する新感覚の映像エンターテインメント。

文|江崎充哉(編集部) 写真|花村謙太郎 スタイリング|えなみ眞理子 ヘアメイク|林 智子

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