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「道化師の覚悟」 浅野忠信

映画 『私の男』

「道化師の覚悟」 浅野忠信

ワインレッドの背景は、彼の色気に良く映える。カメラを向けると悪戯な笑みを浮かべる俳優・浅野忠信。
「無愛想より、笑っているほうが面白いでしょ」
昨年、役者生活25周年を迎え、グローバルに活躍の幅を広げ続ける彼が、「今の自分ならできる、という自信があった」と言う役柄が、理屈を超えた禁断の愛を濃厚かつ美哀に描いた衝撃作『私の男』の主人公・腐野淳悟。その理由とは――。
四半世紀の役者人生を経て、彼がようやく「出来上がった」と語る“完成形の浅野忠信”の魅力を味わいつくす。

人間味貯蓄

 原作は桜庭一樹の直木賞受賞作。憂いと影を帯びながらも、どこか優雅な男(腐野淳悟)と養女(花)は、互いに家族の愛に飢えて育ち、心に満たされないものを抱えた似た者同士。とあるきっかけで家族となり、ともに時間を重ねる中で、やがて2人は誰にも知られてはならない秘密の関係を育んでいく……。
「濃厚なストーリー性もさることながら、僕は何より淳悟という役柄に惹かれて出演を決めました。彼の抱える切なさや空虚感など、さまざまな感情を今の自分であれば表現できるという自信があったからです」
 その自信の根拠とは。
「俳優としても、一人の男としても、僕は20代、30代でいろいろな経験をさせていただきました。それを通過し40代に入った今、これまでの経験値の中で淳悟が生きている時間に当てはめられる部分が多少なりともあるように感じたんです。彼を通じて表現できることは自分の中にいっぱい溜めてあるなと。一人の男として重なる部分が多かったことで、演じきることができいるという自信が生まれました」

俺色に、染める。

無題 撮影現場では、カメラが回っていないときでも、常に淳悟でいるよう心掛けていたという。 このリアリティを彼は、自らの役作りの「原点」と言い表す。
「どんな役であっても、見ている人が我に返ることなく、ウワーッと作品の中に入っていくことができるリアリティを持っていたいんです。そのためには、台詞の言い方、仕草、そのひとつひとつに説得力がなければなりません。だから本作でも、淳悟の言葉の発し方、立ち居振る舞い方などをいろいろと想像しながら、何度も練習を重ねました。もし自分が観客だったなら、映画の中で淳悟をどんなふうに見たいのか、客観的に考えてみることも大事です。そんなふうにイマジネーションを働かせ、試行錯誤を繰り返した中から、『この言い方で、こういう仕草で』といったリアリティを選び取り、ひとつの人物像を創り上げていくんです。とはいえ、いざ撮影に入れば、相手役の方と向き合いながら演技をするわけで、そのやりとりの中からまらた別のキャラクターが生まれてくることもある。そうした変化を僕は常に受け入れるようにしています。リアリティのある役作りとは、ずっと変化し続けていくものだと思っていますから」
 それとともに、演じる際には役に自分色を加味することが浅野流。
「演じるうえで忘れてはならないことは、僕が演じているということ。だから『浅野忠信のままじゃん』と言われるくらい、僕らしさが出てこなければ意味がない。逆に言えば、僕に与えられた役なのだから、僕の好きなようにしてもかまわない!と思っています(笑)」


『私の男』

(c)2014「私の男」製作委員会

(c)2014「私の男」製作委員会

禁断の愛を描いた直木賞受賞のベストセラー小説が、運命のキャストにより待望の映画化

冬のオホーツク海、純白の流氷の上で起きた殺人事件。暗い北の海から逃げるように出ていく父と娘は、互いに深い喪失と、ふたりだけの濃厚な秘密をかかえていた……。

監督:熊切和嘉

原作:「私の男」(桜庭一樹/文春文庫刊)

出演:浅野忠信 二階堂ふみ 高良健吾 藤 竜也

6月14日(土)新宿ピカデリーほか全国公開

watashi-no-otoko.com

 

取材・文|松永理佐(編集部) 撮影|細谷 聡 ヘアメイク|TAKU(eight peace)

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