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愛されるため、此処にいる~『旅立ちの島唄~十五の春~』大竹しのぶ

愛されるため、此処にいる~『旅立ちの島唄~十五の春~』大竹しのぶ

がんばれ、ヨッシー

吉田監督作品への出演2作目となる本作の撮影を“ヨッシー応援隊”の一員として挑んだと、大竹は振り返る。
「2007年に映画『キトキト!』でご一緒して以来、『次に映画を作るときは呼んでくださいね』とお願いしていたんです。吉田監督は年齢的に若いですが、優しい雰囲気の芯ある映画を作り上げる才能豊かな監督。今回の撮影は、ヨッシーの一生懸命な映画作りを応援するかのようにまとまったチームとともに、ゆったりとした時間の流れる美しい沖縄の景色に囲まれながらの心躍る日々でした」
 映画『旅立ちの島唄』は、沖縄 南大東島での実話をもとに、吉田監督自身が現地取材を重ね脚本から作り上げた作品。監督は母親役に大竹の顔を思い浮かべながら脚本を描いたという。様々な事情を抱え、娘を置いて島を離れた母親役を彼女はどのような心持ちで演じたのだろうか。
「複雑な大人の事情を、多感な15歳の娘の目から捉えた本作は、単純に温かな家族の抽象とは言えないと思います。私自身、撮影に入る前に劇中では描かれていない深い部分のストーリーも含め、監督や共演者と話し合いを重ねてから撮影に挑みました。これは実際に演じてみて思ったことですが、単純ではないストーリーの中にこそ、面白さや味わいがあるのではないでしょうか」
 中でも、母娘の愛を感じるお気に入りのシーンがあると大竹は教えてくれた。
「クライマックスの卒業コンサートに向け、娘の髪を結い、着物を着せるシーンが好きです。セリフはないのですが、さまざまな確執を越え、母が娘に精一杯の愛を贈るいいシーンだと思います」

ロッカーときどき民宿のおばちゃん!?

  大竹自身も2人の子供をもつ母として、親子関係について次のように語る。
「娘とは好きな音楽や映画の話をしたり、娘の友達も交えて夜中に女子トークをしたり。友達のような面もある一方で、同じ芸能界にいる先輩としてアドバイスをすることや、早朝からの仕事で大変そうだなと思うときには、おにぎりやサンドイッチを作って送り出すこともあります。それは息子の場合も同じで、息子の学生時代の友達が遊びに来れば一緒に花火をして盛り上がったり、時には“民宿のおばちゃん”状態で料理を振る舞ったり。けれど、いけないと思うことをしたときには、息子にも友達にも本気で叱ります(後から『あのときは怖かった』と言われたこともあるくらい)。そういうふうに、いろいろな面を見せ合うことで、親子の関係性はより深いものになっていくのではないでしょうか」
 また子供たちと過ごす時間は、心安まるリラックスタイムでもあると、大竹は優しい母の笑みを覗かせる。
「私も娘も大の音楽好き。中でも最近は娘の影響からファンキーなロックにハマっています。先日も、舞台公演直後のヘトヘトなときに『お母さんなら行けるよ』と誘われ、娘とその友達と一緒にロックコンサートに行ってはじけてきました。若い子たちから受ける刺激が私のパワーの源になっているのかもしれません。ほかにも、例えば家で一緒にグラミー賞のテレビ中継を見たり、互いが最近聞いたCDの話をしたり。どんなものでもいいと思いますが、ひとつのものに対し感動を共有するのはとても素敵なこと。家族と過ごす温かな時間こそ、私の至福のときです」 

ただひとつ続いているもの

映画、舞台、ドラマなど多方面で活躍し、自らの可能性にアクティブに挑み続ける大竹だが、プライベートでは「ヘタレ癖」が悩みなのだと打ち明ける。
「体を動かすことが好きなので、これまでにパドルボーディングや、忌野清志郎さんに誘われたロードバイクなど、さまざまスポーツに挑戦してきました。しかし、いずれも続かないことが悩みの種(笑)。近く、ドラマで共演した若手俳優さんと一緒に登山に行く約束をしているのだけれど……。今度は続くように頑張りたいものです。唯一続いているのは、お芝居だけかもしれませんね」
そう語る彼女のはにかみが、芝居への熱い恋心を物語っている。

 大竹といえば、各界に広い交友を誇ることで知られる。また長年、ファンからも慕われ続ける彼女に“愛されテク”を聞いてみた。
「えー、わからない(笑)。けれど、これまで人の巡り合わせを大事にして生きてきました。運よく好きな役者の仕事を続けてこられたことも、家族や仲間、ファンの皆さんをはじめ、人や機に恵まれていたことが大きかったと感謝していますし、それが次なる励みにもなります」
この「人との繋がり」を、大竹は本作の舞台となった沖縄 大東島で改めて、温かく感じたと続ける。
「現代では、人同士の繋がりがだんだん希薄になっているため、善意で他人に近づくことすら悪意があると誤解されてしまう場合があります。例えば、最近日本に来た知り合いは、重そうにたくさんの荷物を運ぶおばあさんを手伝ってあげようと、『持ちましょうか』と言ってその荷物に触れようとしただけで叫び声をあげられてしまったそうです。これには本人もかなりショックを受けていました。今回の映画に登場する島は、他人の子供の面倒を見るのが当たり前という環境でした。こうした繋がりこそ、本来、人間のあるべき姿であり、守り伝えるべき精神のような気がします」

ワタシ時間で生きていこう

 近年は慌ただしいスケジュールが続き、落ち着いた自分の時間をもつ余裕がなかったという大竹。今後の目標は「自分のための時間作り」だそうだ。
「時間は意識しないとなかなか作れないものでしょう。これからは少しずつ、意識的に自分のための時間を作り、好きなライブに行ったり、スポーツをしたり、やりたかったことにいろいろとチャレンジしてみたいと思います」
今度は続きそうなのだろうか……。
「どうだろう、わからない。思えば毎年、同じようなことを言っている気がします(笑)」

時を重ねるごとに輝きを増す大竹の愛笑。彼女が多くの人から愛され続ける秘訣は、飾らない、自然体な生き方にこそあるのかもしれない。


『旅立ちの島唄~十五の春~』

出演:三吉彩花/大竹しのぶ/小林薫 ほか 監督・脚本:吉田康弘 配給:ビターズ・エンド
シネスイッチ銀座にて公開中。ほか全国順次ロードショー

Story

絶海の孤島とよばれる沖縄 南大東島には高校がないため、この島に生まれ、高校に入学する子供たちは皆、15歳で旅立っていかなければならない宿命にある、島で暮らす少女・優奈は民 謡グループ“ボロジノ娘”のリーダー。3人兄弟の末っ子で、兄と姉は高校入学時と同時に那覇へ旅立ち、現在はサトウキビ農家を営む島人の父親と2人暮ら し。本島生まれの母親は、姉の高校進学時に島を出たきり戻ってきていない。めったに母親に逢えない寂しさ、父親を1人で島に残して出ていくことへの不安、 淡い恋心、バスや電車といった未知の世界への好奇心、そして将来への不安。さまざまな思いを込めて優奈は島唄を唄いきり、島から旅立ちのときを迎える ――。

文|松永理佐(編集部) 撮影|川隅知明 スタイリスト|山本ちえ ヘアメイク|新井克英(e.a.t…)

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